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6話 リリーが仲間になった

「魔物討伐を祝って〜乾杯‼︎」


 賑やかな掛け声と共に宴会が始まった。テーブルの上には森で採れたフルーツや香ばしい香りのする焼きたての鹿肉が並んでいる。みんなとても楽しそうだ。


 アリシア師匠やドットさんはエルフの住民に囲まれて感謝されている。ボクはそれを少し離れた位置にある椅子に座って眺めていた。


「ルークさん、食べないのですか? 森で取れたフルーツはとても美味しいですよ!」


 ぽつんと1人でいたことを心配に思ったのか、リリーさんがボクの元にやって来た。


「はい、食欲がないので……」


「そうですか………あの、隣に座ってもいいですか?」


「はい、大丈夫ですよ」


 それからしばらく沈黙が続いた。何か話さないといけないのに話題が思いつかない……


「今日はありがとうございました。ルークさんのおかけでこの村は救われました。本当にありがとうございます!」


 リリーさんは澄んだ瞳でボクの顔を真っ直ぐ見つめて微笑んだ。思わずドキッとしてしまう。


「ボクは何も……ほとんどアリシア師匠とドットさんのおかげです」


「そんなことありません、森で魔物に襲われた時、手を差し伸べてくれたのはルークさんです! あたしにとっての恩人です!」


「………」


 それからまたしばらく沈黙が続いた。風に吹かれた木々の音が鮮明に聞こえてくる。


「あの……こんな事を聞くのも変ですが、何かお悩みがあるのですか?」


 リリーさんはどこか遠慮がちな声で尋ねた。


「悩みですか……う〜ん……自分自身のことで1つあります」


 それからボクはこれまで感じた逆境について話し始めた。こんな事を聞かされても迷惑かと思ったけど、リリーさんは黙って聞いてくれた。


「自分の中にいるもう1人の誰かが勝手に体を乗っ取って暴れ出す。それが怖いです。大切な人まで傷つけてしまう気がして……」


 そう、ボクは逆境が怖くてしょうがない。自分じゃない誰かが他の誰かに酷いことをしないか心配でしょうがない。一体どうしたら……


「なるほど……でもそれは優しい証拠ですね!」


 今まで黙って聞いていたリリーさんが、パッと明るい笑みを浮かべる。


「優しい? ボクがですか?」


 意外な言葉に思わず聞き返してしまった。


「はい、誰かを傷つけたくないと本気で思える方は本当に優しい人だと思います」


 リリーさんは一度呼吸を整えると続きを話し始める。


「だからもうそんなに落ち込まないで下さい。もしルークさんが暴れ出しても今度はあたしが助ける番です!」

 

 今度は真剣な表情でボクの目を見つめる。そこまで言われたらいつまでも落ち込んでいるのは恥ずかしい。


「分かりました、ありがとうございます。リリーさん」


 それから、たわいもない会話が続き穏やかな時間が流れる。時折り吹く夜風が心地よい。正直まだ逆境の事は怖い。でも、リリーさんと話せて心が軽くなったような気がした。




翌朝


「それでは私達はこれで、また何かあったら遠慮なく言ってください」


 翌日、ボク達はドルマン王国に戻る事にした。エルフの住民が見送るために集まる。その中にリリーさんの姿もあった。


「あの! 待ってください!」


 リリーさんが住民たちの間をかき分けてボク達の元に走ってきた。軽く息を整えてアリシア師匠を見上げる。  


「アリシアさん、あたしも……あたしも! 一緒に旅に連れて行って下さい!」


「えっ? 私たちの旅に?」


「おいおい、嬢ちゃん急にどうしたんだい?」


 アリシア師匠とドットさんが困惑した様子で顔を見合わせる。


「わたしの夢は困っている人を助けること。アリシアさん達と旅をすれば何かヒントが得られそうな気がするんです! だから連れて行って下さい!」


 リリーさんが深く頭を下げる。どうやら本気のようだ。


「リリーちゃん、私たちの旅は楽じゃないよ。命の補償はできないし、どんな危険があるかも分からない。それでも来る?」


 普段は優しいアリシア師匠だけど、今はとても厳しい表情をしていた。


「はい、行かせて下さい!」


 それでもリリーさんは一歩も引かない。しばらく沈黙が続く。でも先に口を開いたのはアリシア師匠だった。


「分かった。じゃあ一緒に行こう! 私たちのスキルは相性が良さそうだからね」


 そう語るアリシア師匠の顔はいつもの優しそうな表情に戻っていた。


「リリーお姉ちゃん!」


 今度はエルフの男の子が村の人々をかき分けてリリーさんに抱きつく。


「もう怪我は大丈夫?」


「うん、ごめんねリリーお姉ちゃん、いつも回復魔法を避けてきて」


「ううん……いいの気にしないで。あたしの方こそ自分のスキルを正しく理解していなかったのが悪いのよ。それじゃあ行くね」


 男の子は名残惜しそうだったけど、すぐに涙を拭いて頷いた。


「リリーさん、よかったのですか?」


「はい、覚悟はできています。あと、あたしの事はリリーと呼んでください」


 そう言ってボクに小さな右手を差し出す。


「分かりました。じゃあルークと呼んでください。リリー」


 ボクたちは握手を交わし。試しに名前を呼んでみた。まだ慣れないせいか少し恥ずかしい。


「なになに2人とも? ずいぶん仲良さげだね!」


「なんでもありません」


「何だよ少年、教えろよ!」


「秘密です」

 

 アリシア師匠とドットさんが肘と口ばしでボクの肩を突いてくる。エルフの村の人々も微笑ましい顔で見てくる。ちょっと恥ずかしかったけど、ボクとリリーは顔を見合わせて笑い合った。

ご覧いただきありがとうございました! リリーが参戦! これからはルーク、リリー、アリシア、ドットの4人で旅をして行きます。


続きが読みたい、面白い! と思った方はブックマーク、高評価していだだけると泣いて喜びます(笑)


それでは7話でお待ちしています。タイトルは「ようこそドルマン王国へ」です!

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前作の作品です。仮想の世界を舞台に、データーの世界に閉じ込められるお話です。無事にプレイヤーは元の世界に帰れるのか? そもそも誰がこんなゲームを作ったのか? 各章は30分ほどでサクッと読めます。イラスト&表紙付きです♪ 仮想からの脱出ゲーム
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