20話 真実
ここは……ドルマン王国? ひな壇にいるのはお父さん?
「よく聞け! 今ドルマン王国は最大の危機が訪れている。海からは魚人達が押し寄せ、森からはゴブリンの群れ、上空からはワイバーンの襲撃ときた。このままではこの国は壊滅する!」
一度言葉を切ると、父さんは周りの兵士を見渡す。これは以前見た夢と同じだ。
「今こそ我ら兵士が立ち上がる時が来た。この国を守るのは我らしかいない。必ずこの危機を乗り越えてみせる! 俺に続け!」
演説が終わり兵士達の活気は最高潮。各々の武器を上空に掲げる。
広間は大量の兵士達で満員だ。お母さんが人の間を抜けてお父さんの元に駆け寄る。
「あなた、無茶だけはしないでね。私は医療班として怪我人の手当てをしているから、何かあったらすぐに来て」
「ああ、分かった。そう心配するな、こんな戦いすぐに終わらせてやる!」
お父さんは自信に満ちた顔で頷く。そして前回と同じように砂嵐で視界が悪くなる……
* * *
「どういうことだ⁉︎ どうして妻が!」
視界が定まり、辺りを見渡すと、お母さんが倒れているのが目に入った。胸元に鋭い矢が刺さってそこから血が流れている。これは見た事のない夢だ。
「怪我人の手当をされていたのですが、死角から矢が飛んできて奥様を貫きました。たった一発で即死です」
兵士の1人がお父さんにオドオドしながら事情を話している。
「許せねぇ……誰であろうとこんな事をする奴は許せねえ‼︎」
お父さんはゆっくりと立ち上がると、恐ろしい形相で魔物の群れに向かって行く。そこでまたあの砂嵐が訪れた。
* * *
「おい、聞こえているだろ? 俺にありったけの力を貸せ!」
[分かっているさ。随分と追い詰められているな]
この声はお父さんと逆境? 魔物の大軍相手にたった1人でお父さんが向かっていく。
「消えろ魔物ども! “エターナルフレーム”!」
お父さんの唱えた魔法により、上空を飛んでいたワイバーン達が次々と焼かれていく。
「燃え尽きろ!」
上空で爆発が起こり、空が赤く染まる。
「降り注げ! “サンダーボルト”!」
さっきの爆発で出来た積乱雲から稲妻が発生して魔物達を貫く。すごい力だ! そこでまた砂嵐が視界を遮った。
* * *
「ハウロス騎士団長、もうやめて下さい!」
「団長! もう敵は殲滅しました!」
兵士達が慌てふためく声が聞こえてくる。辺りを見渡すとそこは戦場の中心だった。数多くの兵士の死体とそれ以上に多い魔物の死体が転がっていて地面が見えない。敵は全滅したのにお父さんは取り憑かれたようにナイフを振り下ろしている。
「お父さん!」
必死に呼びかけてみたが聞こえていないようだ。そうだここは夢の中、ボクの声は聞こえない……
「師匠! やめて下さい! もう戦いは終わりました」
アリシア師匠によく似た少女が父さんの元に駆け寄る。ダメだ! 行っちゃダメだ!
「うるさい! こいつが……こいつらが俺の妻を殺したんだ! 許せねぇ! 邪魔をするな!」
お父さんは真っ赤に染まった剣を少女に向けて切り掛かる。間一髪、致命傷は避けられたようだが、右肩から血が噴き出した。
「お父さんやめてよ!」
喉がガラガラになるまで叫び続けたが、届かない……確かこの後は……
「許せハウロス」
予想通り父さんの胸に鋭い矢が直撃した。そのまま崩れるように倒れる。反射的に飛んできた方を確認すると、やっぱりドルマン王がいた。その手には弓矢が握られていた……
* * *
「ドルマン国王陛下……」
片目だけ薄く開いてお父さんが王様を見上げる。
「お主に1つ白状しなければいけない事がある」
王様は何故か苦しそうな顔で見下ろす。
「お主が持つスキル逆境。それは追い詰められれば追い詰められるほど力が増す。特に恨み、殺意、絶望感で精神的に追い詰められた場合その真の力を発揮する」
王様は意味ありげに言葉を切ると続きを話す。
「例えば大切な者が死んだり……とかじゃな」
「「じゃあまさか⁉︎」」
ボクとお父さんの声が重なる。
「そうだ、お主の妻を殺すように命じたのはこのワシじゃ、お前の力の限界を引き出すためにやった」
王様の信じられない発言に体の底から怒りが湧いてくる!
「ふざけるな!」
さっきまで朦朧としていたお父さんの目が大きく見開く。
「ふざけてはいない。もしこのままの体制で魔物の軍勢と戦っていても、いずれ劣勢となり負けるだろう。そしてこの国は滅びる。多くの国民を守る為には必要な犠牲だと判断したのじゃ」
「だからと言ってあんまりだ!」
「ワシはこの国の国王じゃ、何万人もの国民の命と1人の犠牲…… どちらか選べと言われたら後者を選ぶしかない……」
「………」
[どうやらこれまでのようだなハウロス]
(そんな事、分かっている。だがこのまま終わるつもりはない)
また逆境とお父さんの会話が直接頭に響く。お父さんは胸に矢を刺されたまま王様に剣を向けた。
「………この何10年もの間……貴方のために働きこの国を守って来ました。それなのにこんな結末……陛下……武器を構えて下さい」
王様は悲しみに満ちた顔でお父さんを見る。
(逆境……頼みがある。俺の息子に力を託してほしい。俺もこのまま終わるつもりはない!)
[あぁ、分かった]
王様も剣を抜いて構える。
「許せ、ハウロス」
王様はたった一撃でお父さんの首を跳ねた。赤く染まった血が大地に染みていく……
* * *
「どうだ? これで分かったか?」
ゆっくりと夢から覚めて現実に戻ってきた。今見たのが真実なら……
「………わかったよ」
俺はゆっくりとハウロスの元に向かった。
「ダメだよルーク!」
リリーが俺の手を掴んで止める。
「惑わされるな少年!」
「ルーク! 目を覚ますんだ!」
ドットさんとアリシア師匠も必死に止めようとする。うるさいな……
「黙れ、”プラントバインド”」
俺は魔法によって現れたツタで全員を拘束した。
「ルーク……」
「はっはっはっ、流石、俺の息子だな。いや違うか、逆境か?」
「ああ、そうさ。やっとこの日が来た。早くあのクソ国王をぶっ殺そうぜ?」
「やっぱりお前に逆境を託して正解だったようだな。奴の居場所は分かっているのか?」
「もちろん、この水晶玉を使えば国王がいる王室に飛んでいける」
「それは便利だな、早速行くとしようか」
ハウロスは俺が取り出した水晶玉を興味深そうに見る。
「ダメ、ルーク!」
「行かないでルーク!」
「おい! 少年! 待て!」
3人の必死な叫びえが戦場に響く。水晶玉に触れると体が浮いたような感覚に襲われて、俺とハウロスの体は白い光に包まれた。
「お前達はそこで見ていな」
地面に幾何学模様が現れて強い光を放つ。移動の準備は整った。
ボクは水晶玉から手を離した……
そして、お父さんの手を振り払った……
ご覧いただきありがとうございました。次が最終話です。




