2話 スキルと魔法の違い
「どうしたのその怪我? すぐに直してあげるね」
あたしが怪我をした男の子に魔法をかけようとすると……
「大丈夫だよリリーお姉ちゃん! これくらい自分で治すよ!」
男の子は遠慮がちに笑みを浮かべて走り去ってしまった。
(はぁ……まただ……)
あたしの住むエルフの村は小さくて質素な造りをしている。ちゃんとした学校は無いしお医者さんもいない。だからこの村で唯一回復魔法が使えるあたしはみんなから頼りにされていた。
でも最近、みんなあたしの回復魔法をやんわりと断る。どうしてなの?
「ほらみて、またヤブ医者が余計な事をしていたわ」
「まったく、大人しくしていてほしいものね。彼女が誰かの傷を治すと、他の子の怪我が酷くなるって噂よ。この前だって……」
ひそひそとおばさま達の話し声が聞こえてくる。
(ヤブ医者? それってあたしのこと?)
この長い耳は遠くの声も聞こえるけど、聞きたくないことも聞こえる。不便だなぁ……でもあの少年を助けたい! だって困っている人を助けるのがあたしの夢だから!
そうと決まったら早速森に言って薬草を集めよう! 本当は子どもだけで行っちゃダメだけど少しくらいならいいよね?
* * *
「あの、エルフってなんですか?」
ボクは生い茂る木々をかき分けながらアリシア師匠に聞いてみた。
「そういう名前の種族だよ。耳が長くて美形が多いのが特徴だね。狩をするのが得意で、森の近くに集落を作って活動している。暗い洞窟とかを好んで住んでいるダークエルフという種族もいて……」
アリシア師匠がエルフについて詳しく説明していると……
「とにかく、今回のターゲットは大猪。それを討伐するのがオレたちの仕事さ」
ドットさんがボクの肩に止まって話をまとめる。
昨日、王様からエルフの村で大猪の目撃があったから調査をするようにと言われた。ボクにとってはこれが初任務。ちょっと緊張するなぁ……
「ルークはまだ慣れていないと思うから、私の近くで見ていればいいよ。でもその猪は”猪突猛進”と言うスキルを使うから気をつけてね」
アリシア師匠はしゃがんでボクの目線に合わせると、真剣な表情で忠告する。
「はい、気をつけます。あの……スキルと魔法は何が違うのですか?」
スキルという新しい単語に疑問が湧いてくる。早速聞いてみるとアリシア師匠は腕を組んで少し考えた後、自信なさげに答えた。
「そう言われると難しいなぁ……スキルは個性みたいなものかな?
「個性?」
頭上に?マークが現れた。それに気づいたのかドットさんがアリシア師匠と代わって説明を続ける。
「足が速い、力が強いみたいな感じといえば分かりやすいか? 魔法みたいに勉強して身に付けたと言うよりは、初めから持っていた能力だな。ゾンビの異常なまでの回復力や、狼男が月を見て化けるのが有名なスキルだぜ。ちなみにスキルは魔法とは違うから当然、魔力は消費しない。分かったか?」
「はい……何となく」
スキル、魔法、どれも難しいけど奥深い。ドットさんの話を頭の中で整理していると……
「誰か! 助けてーーーー!!」
突然森の奥から少女の悲鳴が聞こえてきた。
「師匠!」
「分かってる。行くよ!」
ボク達は道なき道を突き進み、森の奥に向かった。
* * *
(おかしいな……見つからないよ〜)
怪我をした少年のために薬草を探しているのだけど見つからない。それに……
(なんだか森の様子が変な気がする。早く村に戻ったほうがいいかな?)
いつもなら小鳥の囀りが聞こえてくるはずなのに、今日は何も聞こえない。それにさっきから誰かに見られている気がする。やっぱり何かがおかしい!
すぐ近くにある草むらがカサカサと揺れ動く。反射的に振り向くと……
(えっ? 嘘でしょ!)
そこには、あたしの身長を遥かに超える大猪が立っていた……
* * *
低い唸り声を響かせながら猪が様子を見てくる。その目はに殺意を感じた。
(やばい! 早く逃げないと!)
そう頭では分かっているのに足がすくんで動かない……大きな猪がジリジリと距離を詰めてくる。血の気の混じった獣臭が鼻につく。今の私にできる事はただ1つ……
「誰か! 助けてーーーー!!」
あたしはお腹に力を込めて全力で助けを呼んだ。自分の声が森に反響する。こんな朝早くの森の中、誰も来てくれるはずがない。そう諦めかけていた時だった、
「師匠!」
「分かっている。行くよ!」
森の木々をかき分けて腰に剣を差した女性と同い年くらいの男の子、そして1羽の鳥? があたしの前に現れた。
ご覧いただきありがとうございました。
魔法とスキルの違いについてそれっぽく説明してみましたが、完全に独断と偏見で書いたのであっている保証はありません(笑) もっと分かりやすい定義があったらコメントで教えて下さいm(_ _)m
続きが読みたい、面白い! と思った方はブックマーク、高評価していだだけると泣いて喜びます(笑)
それでは3話でお待ちしています。タイトルは「エルフ=美形」です。