19話 ドルマン王国VS魔物の軍勢
日が登り、優しい光がドルマン王国を照らす。空は雲一つない快晴でこれから国の存続をかけた戦いが始まるとは思えない。
「いよいよだね」
「うん」
ボクとリリーは軽く言葉を交わし、戦いの時が来るのを静かに待った。
広場には全兵士が集まり、アリシア師匠が演壇に登って見渡す。普段はあまり見せない緊張した面持ちだ。
「みんなよく聞いてほしい! 今ドルマン王国には最大の危機が訪れている。元ハウロス騎士団長が魔物の軍勢を引き連れてここに向かっている。このままではこの国は壊滅する!」
堂々と語るアリシア師匠の姿は、夢で見たお父さんの演説姿と重なって見える。
「今こそ我ら兵士が立ち上がる時が来た。この国を守れるのは我々しかいない。必ずこの危機を乗り越えてみせる! 私に続け!」
演説が終わり兵士たちの活気は最高潮。各々が武器を上空に掲げる。ボクらは兵士たちの間を抜ってアリシア師匠の元に向かった。
「師匠!」
演説を終えたアリシア師匠が演壇から降りてくる。
「ルーク! もう体は大丈夫?」
「はい! ばっちりです! あの、作戦があります。これを見てください」
ボクは昨日、書き上げたメモ用紙の束を取り出して1枚渡した。
「何これ? 変わった模様だね」
リリーが紙を覗いて不思議そうに見る
「こいつは魔法陣だな」
ドットさんがリリーの肩に止まって一緒に眺める。
「あの、魔法と魔法陣の違いはなんですか?」
リリーが疑問を口にするとドットさんが『良い質問だ!』っと言いたげな表情で説明を始める。
「いいか、魔法はな、呪文を唱える事で発動する。逆に魔法陣は特殊な模様や文字を組み合わせる事で発動する。まぁ、どっちも似たようなもんだ。魔法を発動させるまでのプロセスが違うだけさ」
「じゃあどうして大量に魔法陣を作ったの? 呪文の方が楽そうな気がするけど?」
今度はボクの方を見てリリーが質問する。
「簡単な事だよ、例えばファイヤーボールを100発出したかったら100回も呪文を言わないといけない。でも魔法陣なら予め作っておいて一度発動させるだけで済む。こっちの方が早いでしょ?」
ボクの説明にリリーが納得したようで頷く。
「さぁ、みんな! 準備はいいかい?」
アリシア師匠がボク達を見渡す。いよいよ最後の戦いが始まる。負けは許されない。もし破れたら第二の故郷まで失う事になる。それだけは絶対に嫌だ!
ボクは紙の束を握りしめて弓を携えた兵士の元に向かった。
* * *
鉛色の雲が空を覆い尽くして辺りは薄暗くなった。獣臭を乗せた生暖かい風が吹き抜ける。
今ボク達がいるのはドルマン王国を囲うように建てられた分厚い城壁の上。
見上げるほど大きな城壁は外部からの侵攻を食い止め、逆にボクたちは高さの有利を利用して上から弓を放つ事が出来る。
「魔物の軍勢が近づいてきたぞ!」
高台にいた偵察隊が声を張り上げる。
目を細めて見ると、海からは魚人達が押し寄せ、森からはゴブリンの群れ、上空からはワイバーンの襲撃と来た。夢の中で見たあの戦いと同じだ。でも、負けるわけにはいかない!
「慌てるな! 全員持ち場に着け! 一斉に矢を放つんだ!」
アリシア師匠の命令を受けて兵士達が一斉に矢を構える
「今だ! 放てぇーっ!」
同時に放たれた大量の矢が雨のように魔物達に降り注ぐ。その一つ一つの矢の先には魔法陣が書かれたメモ用紙が縛りつけてある。
「命中確認! しかし魔物の軍勢は止まりません!」
アリシア師匠は偵察隊の報告に動じる事なく次の指示を出す。
「心配は要らない。ルーク!」
「はい! 魔法陣展開、”ファイヤーボール”!」
矢の先端に付けられた魔法陣を描いた紙が赤く光る。城壁から戦場まで少し距離はあるけれど肉眼で確認できた。
地面に突き刺さった矢から煙が上がり火を吹いた。火は木の矢を燃料に激しく燃え上がり魔物に襲い掛かる。
「すごいルーク!」
リリーが目を見開いて驚く。
「やるじゃねーか少年!」
ドットさんも感心した様子でボクの周りを飛び回る。
「今度はオレの番だな、少年、最強の魔法を見せてやるよ! 降り注げ、”サンダーボルト”!」
雷鳴と共に真っ黒な空が渦を巻いて、その中心から光の矢が大地に降り注ぐ。あまりの眩しさに目が眩む。ようやく光が収まって戦場を確認すると、魔物は一掃されていた。
「まっこんなもんだろ」
ドットさんは得意げに胸を張り、兵士達が歓声を上げる
「あれ? みなさん! 上空に誰かが飛んでいます!」
リリーが城壁から身を乗り出して叫ぶ。急いで駆け寄って確認すると、空に翼を広げたお父さんがいるのが見えた。何やら魔法を唱えようとしている。
「やめてお父さん!」
必死に叫んだけど、ボクの声は夢の中みたいに届かない。そして……
「”エターナルフレーム・ノバ”!」
隕石のような火の塊が王国に降り注ぐ。これはまずい!
「全員退避!」
アリシ師匠が指示を出すが、巨大な火の塊が城壁を粉砕する音にかき消される。
炎は建物に広がり、ドルマン王国は一瞬で火の海に包まれた。それはまるで故郷で見たあの忌々しい景色と同じだった。
* * *
「報告します! 先ほどの攻撃で城壁の半分が壊滅、さらに開いた穴から魔物の増援が侵入してきました!」
偵察隊の兵士がアリシア師匠の元に駆け寄り状況を簡潔に話す。
「全兵士に告ぐ! 直ちに侵入してきた魔物を殲滅し、決して陛下が居られる王室には近づけるな!」
兵士達は各々武器を構えて魔物の討伐に向かう。
「私達はハウロス元騎士団長の元に向かうよ!」
アリシア師匠がそう提案するが……
「待て待てアリシア、お前がここを離れたら誰が指示を出すんだ? ハウロスの事は俺達に任せな!」
ドットさんが羽を広げて止める。
「でも、大元を止めないとこの戦いは終わらないでしょ!」
「じゃあ兵士達は見放すのか?」
2人が言い合いを始めて険悪な空気になりかけた時だった……
「おかしいな、随分と様子が変わっちまったな」
この状況化に似合わない呑気な声が聞こえて来た。まさか……⁉︎
「どうしてここに?」
慌てて城壁の下を覗くと、ニックさんがボク達を見上げて手を振っていた。
* * *
「よっ、ルーク。何かよく分からないけどピンチみたいだな」
「どうしてここに?」
「銭湯で会ったとき今度ドルマン王国へ遊びに行くって言っただろ? それにしても何かヤバそうだな。加勢するぜ!」
「ありがとうございます! ニックさん!」
「いいって事よ! あそこに飛んでいるのがボスってとこか? ここは俺に任せてお前達はあのヤバそうなやつに集中しな!」
ニックさんは両手に剣を構えると次々と魔物を倒し始めた。
「ここは彼に任せて私たちはハウロス元騎士団長のところに行くよ!」
「「はい!」」
ボクとリリーは声を合わせて頷き、アリシア師匠とドットさんの後を追いかけた。街の事も心配だけどニックさんがいるからきっと大丈夫。今はお父さんを止めることに集中しよう!
ボク達は城壁を降りて城門をくぐり、戦場を駆け抜けた。
「随分と早かったな」
なんとか呼吸を整えて上空を見上げると、ゆっくりとお父さんが降りて来た。
「ハウロス師匠もうやめてください!」
隣にいたアリシア師匠が一歩前に出て叫ぶ。
「お父さん……どうしてこんな事をするの?」
「お前は何も知らないみたいだ……だったら教えてやるよ。”スリープ・ザ・ドロップ”」
お父さんが何か呪文を唱えた瞬間、どうしようもないほどの睡魔に襲われて視界がなくなった。
ご覧いただきありがとうございました!
魔法と魔法陣、似てるようで少し違うんですよね〜 とは言っても実際にみたことがないので全て妄想ですけどね(笑)
続きが読みたい、面白い! と思った方はブックマーク、高評価していだだけると泣いて喜びます(笑)
それでは20話でお待ちしています。21時10分に投稿予定です。タイトルは「最終決戦」です!




