18話 嵐の前の静けさ
「戻ってきたようだな」
ようやく眩しい光が収まって目を開くと、そこは王室だった。2回目だけどこの移動は全然慣れない。
「陛下! 大変な事になりました!」
アリシア師匠が説明しようとするが、王様がそれを手で制して懐から水晶玉を取り出す。
「分かっておる。この水晶玉を通じて状況は見させてもらった。アリシアとドットは今すぐに国民を避難させてくれ」
「分かりました」
アリシア師匠とドットさんは王様に一礼して部屋を出ようとする。
「待ってくださいアリシア師匠! ボクも連れていって下さい」
慌てて後を追いかけようとしたけど、足がふらついて転びそうになる。
「ルークはまだ休んでいた方がいいよ。リリーちゃん、任せてもいいかな?」
「はい、もちろんです!」
結局ボクはリリーに支えてもらいながら自分の部屋に連れていかれた。
* * *
「アリシア兵長、国民の避難は順調に進んでおります。夜明けまでには問題なく完了するでしょう」
屈強な兵士が私の前に膝まづいて状況を簡潔に述べる。
「ご苦労、では兵士をそこに派遣し、守りを固めてほしい。指揮はお前に任せる。頼めるか?」
「お任せ下さい!」
兵士は頼もしい返事を返すと早速、避難場所の方に向かっていく。
「とりあえず、国民の避難は大丈夫そうだな」
「そうだね、あとは陛下を安全な場所にお連れしよう!」
ドットと今後の事を軽く相談していると……
「その必要はない」
背後から低く威厳のある声がした。振り返ると、陛下がいつも以上に険しい顔で立っていた。
「ワシの勤めは国民を守こと。ワシが逃げたら奴は民を皆殺しにすると言った。ならば最後まで戦おう」
強い決意のこもった言葉が、一気に場の緊張感を高める。
「ですが危険です! 国民の避難は無事に終わりました! 陛下もお隠れください! 陛下に何かあってはこの国はお終いです!」
なんとか説得しようと試みるが、陛下は首を横に振る。
「アリシア、こりゃ、何を言っても無駄だな」
ドットが諦めた様子で羽を落とす。
「分かりました……では最善を尽くし必ず勝利する姿をお見せします!」
明日、必ずハウロス師匠と蹴りをつける、師匠を止める責任は弟子である私にある!
「うむ、頼もしくなったのぅ」
私とドットは王様に一礼して、逃げ遅れた人がいないか、避難の手伝いに向かった。
* * *
「これで最後かな?」
日は沈み、部屋の中は薄暗くなってきた。ベッドの周りにはペンで書き殴ったメモ用紙が散乱している。
「ルーク、入るよ?」
「うん、ちょっと待ってね」
ボクは散らかったメモ用紙を集めてから「いいよ」と声をかけた。ゆっくりと扉が開いてリリーが部屋に入ってくる。
「体は大丈夫?」
「うん、だいぶ良くなったよ」
正直、まだ体の節々がズキズキ痛むけど、大丈夫なふりをしてみた。でもボクの演技はすぐに見破られてしまう……
「うそつき、本当はまだ辛いでしょ?」
リリーはボクの隣に座ると、少し怒った顔で見つめる。
「本当は治癒分配だってルークが凄く痛そうだから嫌なんだ……辛い時は辛いって言ってね」
白くて小さな手でリリーがボクの手をギュッと握る。思わず鼓動が早まり頬が赤くなる。
「その……心配かけてごめん」
できる事ならこれ以上リリーを心配させたくない。でもこれまでの騒動はボクのお父さんの問題。だから息子としてボクが全部蹴りをつける!
またリリーを不安にさせるだけだから、密かに心の中で決意するが……
「ルーク、1人で全部抱え込んじゃダメだよ。あたしもそばに居るから忘れないで」
どうやら顔に出ていたようで簡単に見抜かれてしまった。
「ごめん……」
思いかえしてみれば、最初に出会ったのはエルフの村の道中だ。あの時は猪に追いかけられて大変だった。
その後の旅でも辛い事はあったけど、リリーはいつもボクの側にいてくれた。本当に感謝してもしきれない。
「リリー、今更こんな事を言うのも恥ずかしいけどさ……いつも側にいてくれてありがとう! これからもよろしくね」
ボクが感謝の言葉を伝えると……
「も、もちろん! あたしの方こそよろしくね」
今度はリリーが顔を赤く染めて部屋を出て行ってしまった。
* * *
『いつも側にいてくれてありがとう。これからもよろしくね』さっきルークが言った言葉が何度も頭の中に繰り返されて頬が赤くなる。軽い足取りで自分の部屋に向かっていると……
「お〜い、リリーちゃん! ルークの様子はどうだった?」
アリシアさんがあたしに気づいて手を振る。その肩にはいつも通りドットさんが止まっていた。
「まだ少し痛そうでしが、だいぶ良くなってきたと思います」
「そっか……無茶していたからね」
アリシアさんも不安げな顔で俯く。
「ところで嬢ちゃん、顔がニヤついていたけど何か良いことがあったのか?」
暗い雰囲気になりかけた所で、突然ドットさんがあたしの肩に飛び乗って話しかけてきた。えっまさか見られていたの?
「なっ何でもないですよ!」
慌てて平然を装おうとしたけど、アリシアさんとドットさんは何かを察した顔で頷き合う。
「では、失礼します」
あたしは駆け足でその場を離れた。
「ドット、何があっても2人を守ろうね」
「あったりまえだ!」
アリシアさんとドットさんがあたしの事を話している気がする。気になって振り返ってみたけど、もう2人はその場にいなかった。
ご覧いただきありがとうございました!
ついに最終決戦が始まります。続きが読みたい、面白い! と思った方はブックマーク、高評価していだだけると泣いて喜びます(笑)
それでは19話でお待ちしています。20時10分に投稿予定です。タイトルは「ドルマン王国VS魔物の軍勢」です!




