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17話 息子VS父親

「師匠……あれは何ですか?」


 背筋がゾッとして悪寒が走る。地面から生えてきた手は掴むものを探すように動き回る。


「みんな、構えて!」


 アリシア師匠の指示に従い、全員が臨戦体制にはいる。あの不気味な手は木を掴んで這い上がり、地面から胴体が現れた。


 身体はボロボロ……とくに首の怪我が生々しい。鎧も至る所が壊れている。でも背中に羽織る紫色のマントは綺麗なままだった。


「師匠、あのマントは……」


 あまり思い出したくないけど、あの紫のマントは夢の中で見たお父さんが羽織っていた物と同じだ。という事は……


「ハウロス師匠……ですか?」


 アリシア師匠が剣を構えたまま尋ねると、ゾンビは不気味な笑みを浮かべて口を開く。


「ああ……そうさ、師匠の顔を忘れたのか?」


 ゾンビは呆れた様子で頷く。やっぱりあのゾンビはボクのお父さんだ……


「おい! 何かしてくるぞ!」


 ゾンビと成り果てたお父さんは上空を睨みつけると、耳を裂くような悲鳴を上げた。それに合わせて不気味な黒いオーラが飛び散る。


「皆さん! あれを見て下さい!」


 リリーが指し示した所には、一体の猪がいた。そこに黒いオーラが降り注いで猪を包み込む。その瞬間、豹変したように暴れ出した。それはまるで凶暴化した魔物のように……




* * *


「あの……凶暴化の原因って……」


 ボクが恐る恐る口にすると、ドットさんが確信したように頷く。


「どうやら元凶はこのゾンビみたいだな! こいつから漏れ出す見るからにヤバそうなオーラが魔物たちを凶暴化させていやがる!」


「それってつまりボクのお父さんがこれまでの騒動の原因って事ですよね?」


 ボクがそう尋ねると、アリシア師匠が戸惑いながら「そうなるね……」っと答えた。


「少年、来るぞ! 構えろ!」


 ドットさんが警告すると同時にゾンビに成り果てたお父さんがボクの目の前に迫ってきた。銀色に輝く剣が振り下ろされる。


「うっ……‼︎」


 反射的にナイフで受け止めたけど、耐えきれずに吹き飛ばされる。


「いっ、痛ったーー!」


 後ろの木に激突して全身に激痛が走る。でも休んでいる暇はない! 


「ルーク、危ない!」


 リリーの声に起こされて目を開くと、お父さんが剣を大きくかざすのが見えた。


「そうはさせない!」


 間一髪、アリシア師匠が間に入って受け止めた。


「少しは……腕を上げたかアリシア?」


「ハウロス師匠……目を覚ましてください!」


 ジリジリと火花が散る。今のうちに一度距離を取らなければ!


「おいアリシア、こいつは死人だ。目を覚ましたらダメだろ? どいてな、火葬してやるよ!」


 ドットさんは口を大きく開いて「”ファイヤーボール”!」と叫んだ。


「無駄だ、”エターナルフレーム”」


 ドットさんが唱えた火の玉はお父さんが操る炎の波に飲まれてドットさんを襲う。


「あちぃー焦げる焦げる!」


「ドットさん、落ち着いて! “ウォーターボール”」


 ボクはすぐに水の魔法を唱えて水溜りを作った。ドットさんはそこにダイブして羽をばたつかせる。


「少年、どうするんだ? このままだと全滅するぜ!」


「……作戦があります。リリー、ボクの体力を50%師匠に送って!」


「50%? そんなことをしたらルークの体が危険だよ!」


「大丈夫、ボクの事を信じて!」


 リリーは一瞬、戸惑う素振りを見せたけど、ボクの訴えに仕方なく頷く。


「分かった……スキル”治癒分配(ちゆぶんぱい)”!」


 リリーがスキルを発動した瞬間、体が半分に引きちぎられたような感覚に襲われた。


「…………っ‼︎」


 あまりの痛さに思わず地面に膝がつく。でも体力が減って逆境が発動した。体の底から力がみなぎってくる!


「すごい! ルーク、こんなにも力が湧いてきたのは初めてだよ!」


 師匠の今の体力は150%。スキル”無傷絶大(むしょうぜつだい)”は体力が多ければ多いほど力が発揮される。これならいける!


「邪魔する奴らは燃え尽きろ! “エターナルフレーム”!」

 

 お父さんが魔法を唱え、灼熱の炎が押し寄せてくる。でも怖くはない。


「”ウォーターボール”!」


 ボクは右手に意識を集中させて水の魔法を唱えた。


「少年、そんな初級魔法じゃ奴の攻撃は止められないぜ!」


 ドットさんの警告が聞こえてきたけど問題ない。初級魔法だろうが逆境のおかげで威力は桁違いに上がっている! 灼熱の炎はボクのウォーターボールと相殺された。


「師匠!」


「任せて! “一刀粉砕”」


 師匠が渾身の一撃を振り下ろすが……


「その技を教えたのは誰か覚えているか? “一刀粉砕”!」


 お父さんも師匠と同じ技を繰り出して2つの剣がぶつかり合う。


「くっ……強い……」


 少し、また少しと師匠が押されていく。


「リリー、ボクの体力を限界ギリギリまで師匠に送るんだ!」


「分かった……行くよルーク! スキル”治癒分配”!」


 とても辛そうにリリーがスキルを発動した瞬間、頭にノイズが走る。目眩もして気分は最悪。そのまま立っていられず地面に倒れ込んだ。でも不思議なことに痛みが感じない。これはいい誤算だったな……


「ルーク、後は私に任せて!」


 今度はアリシア師匠か少しずつ押し返していく。


「もう終わりです。ハウロス師匠……安らかに眠ってください」


 お父さんの持つ剣にヒビが入って砕ける。


「”一刀()粉砕”!」


 そのまま、お父さんの身体は真っ二つに切断されて動かなくなった。




* * *


「これで終わりですか?」


 地面に這いつくばったまま、顔を上げて確認してみるが……


「いや、まだ終わっていないぜ」


「残念ながらそうみたいだね」


 ドットさんとアリシア師匠は厳しい顔つきで首を振る。それもそのはず……


「あのクソ国王を殺さない限り俺は成仏する気はない!」


 お父さんの傷がみるみる回復していく。しかも背中から翼が生えてさっきよりも凶暴に見える。嘘でしょ?


[よう、また随分とピンチだな、どうするんだ?]


 満身創痍で絶体絶命、本気でここで死ぬかもしれないと感じたとき、また逆境が話しかけてきた。


(なんだよ……どうして来たんだよ?)


[決まっているじゃないか、お前が追い詰められているからさ]


(まぁ、確かに体はボロボロだけど……)


[よく分かってるじゃないか、ただそれ以上に()()()()()()()で追い詰められた場合、逆境は本当の力を発揮する。覚えておきな]


(恨み、殺意、絶望感……)


 故郷を魔物に襲われて恨みと殺意を感じた時や、レッドドラゴンに追い詰められて絶望感を感じた時、自分でもコントロールできないほどの力が湧いてきた。


[どうする? 今なら目の前の奴を倒せるだけの力を貸すぜ]


 逆境の提案を受けたら、間違いなくボクは暴れ出す。でも何もしなかったらきっとみんなやられる。選択肢は1つしかない。もしリリーやアリシア師匠に迷惑がかかるなら自分で自分の命を絶てばいい。このナイフを使って……


 覚悟を決めて逆境の提案を受けようとした時だった….


「明日の夜明けにドルマン王国を襲撃する。これは宣戦布告だ。もし逃げたら国民を皆殺しにする。そうクソ国王に伝えろ」


 お父さんがそう言い残すと背中に生えた翼を広げて飛び立って行く。どうやら命拾いしたようだ。




* * *


「ルーク! しっかりして!」


 リリーが今にも泣き出しそうな顔でボクの身体を揺らす。


「早くこれを飲んで」


 アリシア師匠が例の緑色の液体を取り出してボクの口に近づける。


「ちょっ、ま、待ってください…..…リリーからもらった回復薬を……」


「早く飲んで!」


 声が掠れて上手く喋れない。アリシア師匠がボクの口に薬の入ったビンを押しつける。結局またあの苦い薬を飲まされた……


「うぅ……不味い……」


 ドロっとした液体が喉を通っていく。薬草の嫌〜な苦さが広がる。


「味が分かるなら大丈夫そうだな。お前ら、しっかりこの水晶玉に捕まれ!」


 ドットさんはボクの懐から水晶玉を取り出して魔力をこめる。全員が手をかざすのを確認すると、眩い光に包まれて体が軽くなった。

ご覧いただきありがとうございました。


ついに全ての元凶が現れました! 続きが読みたい、面白い! と思った方はブックマーク、高評価していだだけると泣いて喜びます(笑)


それでは18話でお待ちしています。19時10分に投稿予定です。タイトルは「嵐の前の静けさ」です!

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前作の作品です。仮想の世界を舞台に、データーの世界に閉じ込められるお話です。無事にプレイヤーは元の世界に帰れるのか? そもそも誰がこんなゲームを作ったのか? 各章は30分ほどでサクッと読めます。イラスト&表紙付きです♪ 仮想からの脱出ゲーム
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