11話 夢か……
「よう、俺が遊んでやるよ」
俺は手のひらをワイバーンに向けて魔力を込めた。右手が冷んやりと冷たくなる。
「ファイヤーボール!」
「バカ、何やってるんだ少年! あいつに火は無駄だぜ!」
鳥が喚いているが、俺は警告を無視して魔法を放った。
レッドドラゴンもどうせ火がくると油断したのだろう……全く避ける気がない。俺の手の平から出現した氷の玉がレッドドラゴンに直撃した。
「バカな奴だな、ファイヤーボールと言って火が出るとは限らないだろ?」
俺はスキだらけのレッドドラゴンにナイフを突き刺した。面白いくらい深くめり込んで血が噴きだす。すごくいい気分だ!
オレはナイフに力を込めて滅多刺しにした。
「少年! もういい、十分だ!」
「ルーク、落ち着いて! レッドドラゴンはもうやっつけたんだから!」
外野が何やら喚いているけど関係ない。
「お前達は黙って見ていろ!」
俺はアリシア達を一喝してナイフをドラゴンに振り下ろした。
「リリーちゃん、私の体力をありったけルークに送って! 体力が元に戻れば逆境も収まるはず!」
「分かりました!」
リリーが俺に治癒分配を行おうとする。ボクはそれを手で制した。
「いつまでも好き勝手するな……”スリープ・ザ・ドロップ”」
視界が揺れ動いてボヤける。
「テメェー、自分に魔法を……」
そのままボクらは地面に吸い込まれるように深い眠りに落ちた。
* * *
「ここは……えっ、どうして?」
転々と立ち並ぶ質素な家……周りを覆い隠す生い茂った木々……間違いない、ここはボクの故郷だ! でもどうして?
「ごめんね、ルーク、すぐに戻るからそれまでお留守番ね」
突然、優しそうな女性がボクの頭を撫でる。銀髪の長い髪がとても綺麗だ。なんだかとても懐かしくて暖かい。
「ルーク、これをお前に託す」
今度は背の高い男性が懐からナイフを取り出してボクに渡す。もしかしてこの人達がボクの……
[そう、お前の両親さ]
突然逆境が会話に入ってきた。懐かしくて心地よい気持ちが台無しだ。
「どうしてお前が出てくるんだ?」
[決まってるだろ、これは俺がお前に見せている夢だ]
「夢?」
そうだ思い出した! 逆境を止めるために自分にスリープ魔法をかけたんだった。
「父さんと母さんは今からドルマン王国に行く。そんな顔するな、男だろ? 必ず戻ってくる」
「ルーク、少しの間寂しい思いをさせるけど我慢してね」
お父さんとお母さんはボクに手を振ると、村を出て行く。呼び止めようとしたけど声が出ない。その代わりに砂嵐が視界を遮って何も見えなくなる……
* * *
「ほら、見てみろよ!」
逆境に呼ばれて周りを確認すると、そこはドルマン王国の広場だった。お父さんがひな壇に立って兵士を見下ろしている。紫色のマントが風に靡く。
「よく聞け! 今ドルマン王国には最大の危機が訪れている。海からは魚人達が押し寄せ、森からはゴブリンの群れ、上空からはワイバーンの襲撃ときた。このままではこの国は壊滅する!」
一度言葉を切ると、お父さんは周りの兵士を見渡す。
「今こそ我ら兵士が立ち上がる時だ。この国を守れるのは我々しかいない。必ずこの危機を乗り越えてみせる! 俺に続け!」
演説が終わり兵士達の活気は最高潮。各々が武器を上空に掲げる。
広場は大勢の兵士でいっぱいだ。お母さんが人の間を抜けてお父さんの元に駆け寄る。
「あなた、無茶だけはしないでね。私は医療班として怪我人の手当てをしているから、何かあったらすぐに来て」
「ああ、分かった」
何やら2人が話しているけど、目の前に砂嵐が走り視界がぼやける。最後に耳に残ったのは兵士たちの生き生きとした掛け声だった。
* * *
[見てみな、あそこにお前の親父がいるぜ]
逆境の声が耳元で聞こえて視界が定まる。そこは完全に戦場の中心だった。
数多くの兵士の死体とそれ以上に魔物の死体が転がっていて地面が見えない。その中に1人、紫色のマントを羽織った人物がナイフを持って暴れていた。あれは……お父さんだ!
「ハウロス騎士団長、もうやめて下さい!」
「団長! もう敵は殲滅しました!」
兵士達が必死に止めようとしている。
「お父さん!」
ボクも必死に呼びかけてみたが聞こえていないようだ。
[無駄だ、ここは夢の中。おまえの声は聞こえない]
「そんな……」
お父さんはまるで……何かに取り憑かれたかのように敵味方関係なく暴れていた。その光景が逆境に囚われた自分と重なる。早く止めないと!
「師匠! やめて下さい! もう戦いは終わりました」
暴れ狂うお父さんの元に、アリシア師匠とよく似た少女が駆け寄る。
「うるさい! こいつが……こいつらが俺の妻を殺したんだ! 許せねぇ! 邪魔をするな!」
お父さんは真っ赤に染まったナイフを少女に向けて切り掛かる。間一髪、致命傷は避けられたようだが、少女の右肩から血が噴き出す。
「お父さんやめてよ!」
声がガラガラになるまで呼び続けたが届かない。それでも必死に叫び続けていると……
「許せハウロス」
突然、お父さんの胸に鋭い矢が直撃した。そのまま崩れるように倒れる。
「えっ? 嘘でしょ?」
反射的に矢が飛んできた方を確認すると、そこにはドルマン王がいた。その手には弓矢が握られていた……
* * *
「お父さん!」
自分の叫び声に起こされて辺りを見渡すと、そこは知らない家の中? だった。沈みかけた太陽の光りが窓の隙間から入り込む。
「脅かすなよ、うなされていたけど変な夢でも見たのか?」
ドットさんがボクの前に飛び降りてきた。
「そうみたいですね」
本当に嫌な夢だった。まさか王様がお父さんを殺すなんて……ただの夢だといいけど……
「ルーク、気分はどう?」
アリシア師匠がボクの頭を優しく撫でながら聞いてきた。いつもは恥ずかしくて嫌だけど、今はすごく安心する。それと……夢の中に出てきた少女はアリシア師匠だよね?
「まだ頭がボーっとしますが大丈夫です。あの……レッドドラゴンを倒した後はどうなったのですか?」
「あの後は村の人々が助けに来てくれたんだよ。ここは村長さんの家なんだけど、自由に使っていいみたいだから安心して」
アリシア師匠はボクを安心させるためか笑顔を見せる。
「ルーク、あたしの体力を少し分けようか?」
リリーがボクの手を握ってスキルを発動させようとする。体力を抜かれるのは想像以上に苦痛を感じる。あんな苦しみをさせたくない。ボクはリリーの手を優しく解いて首を振った。
「ご気分はいかがですか?」
ギシギシと音を立てて扉が開き、村長さんがボクの様子を見に来た。
「もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」
「ご無事で何よりです。よろしければ、是非、自慢の温泉に浸かっていって下さい。戦いの疲れが取れると思います」
「本当ですか⁉︎ わーい、やったぁー!」
リリーは嬉しそうにはしゃいでいるけど、ドットさんは見るからに嫌そうな顔をしている、
「ドットさんは入らないのですか?」
「オレは遠慮しておく」
ドットさんはそう言うと、ボクらに背を向けて毛繕いを始めてしまった。
夢の中でドルマン王がルークのお父さんを殺していましたが、実際はどうだったのか? なぜ殺したのか? 真相は今後明かされて行くのでご期待下さい
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それでは12話でお待ちしています。20時10分頃に投稿予定です。タイトルは「女子風呂、男子風呂」です!




