王子のお迎え
今回は、エピソードの前振りと、お話の広がりを作るための回ですね。お真理面白くないかもしれませんが、お話が分からなくなると切ないので読んでくださいね。申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
レガルの酒場は、最近昼のランチが人気である。
勿論作っているのは、メルティアである。
本日は、鳥肉の香草焼き、野菜のコンソメスープ、グリーンサラダ、ライ麦パンで店は、満席である。
「メルちゃんのおかげで、大繁盛だ。それに、金貨も預かってるけど、自分で貯めていても良いんだよ。」レガルは、すまなさそうに話す。
「お小遣いは、貰ってるから、レガルが使っていいよ。」振り向いて微笑む。
厨房に立つメルティアは、ショートパンツにストライプ柄のシャツを着て、薄いグリーンのエプロンを付けている。歳の差があるレガルでも、鼻の下が伸びるのであった。
ランチタイムも終盤、数人の貴族が入ってきた。
「ここに、聖女がいると聞いてきたのだが、出してもらおうか⁉︎」
慌ててレガルが対応する。
「はい、おりますが彼女は、ギルドの管轄下ですので、先にギルドに許可を取って下さらないと困ります。」
「うるさい、陛下がお呼びだ、早く出せ。」連れて行こうとしているのだ。
「それは、困りましたな。」
奥の部屋から、ランスが出てくる。
貴族は、驚く。ランスは、最近まで王国の主席魔剣士だったため、面識が有るのだ。
「ランス殿、陛下の勅命である。了解していただきたい。」
「ギルドマスターに、先に許可をとるのが筋でしょう。」
後ろから、同行していた第一王子が、前に出てくる。
「分かりました。日を改めてギルドに、許可を取ることにしよう。だが、先に話しだけでもしたいのだが、それすらダメなのか?」
ランスが厨房に視線を向ける。
「メルちゃん、手が空いてたら、来てくれるかな?」
「はーい。」
騒ぎを知らないメルティアは、厨房から出てきて、貴族達を見るとレガルの後ろに隠れる。
「な、何ですか?」
銀色の綺麗な髪をポニーテイルにまとめた、大きな青い瞳の少女はおどおどしながらもゆっくり貴族の座るテーブル、ランスの隣に隠れるように近づいてきた。
「うん、噂通り可愛らしい方ですね。この度はシドライトとの国境戦での活躍を聞きまして、正式に当王国の聖女としてお迎えに上がった次第です。」
第一王子は静かに用件を伝える。
「えっ私はそんな大それた役目は果たせないと思います。それに私は出自もわからない、卑しい立場の人間ですので、謹んでお断りしたいと・・・」
「困りましたね、陛下はもとより、我が軍の兵士たちからの強い希望があるのですが。」
「私は普通に平民として、冒険者をして世界を旅するのが夢ですので・・・」
「残念ながら、その願いは叶わないと思います。これから、世界は大きな戦乱の時代に入ります。今は当王国もシドライトと小競り合いをしておりますが、今勢力を急拡大しているアンブロシア聖教国が、間もなく宣戦布告してくる可能性が高いのです。戦争に巻き込まれずに旅をするなどあり得ないでしょう。」
「私は、冒険者として協力することはあっても、国の傘下に入ることは希望しません。」
「そうですか、できれば私の婚約者として行く行くはこの国の王妃となっていただきたかったのですが。」
「そんな、今日あったばかりの方と婚約なんてあり得ません。」
「ふふっ、なるほど権力に全く興味はないみたいですね。ますます気に入りました。それに、とても可愛らしくも美しい。もうすでに私の気持ちはあなたに奪われているのに・・・」
第一王子は長身、金髪のブロンドでグリーンの瞳が印象的なイケメンさんである。しかも悪人ではなさそうである。
「そんなこと言われましても・・・私は記憶喪失で、自分がどんな人間かすら知らないというのに・・・」恥ずかしそうにうつむいた。
「わかりました、貴方の出自、なくした記憶に関連する事項を調査させていただきましょう。わかりましたら、お教えします。」
「今日のところは、これでお開きにしましょう。相談はまた後日に」ランスの門切りで、貴族はやむを得ず帰っていった。
「ふぅ・・・」メルティアはため息をつく。
午後はギルドが呼び出してくれた、賢者ナームとの面会が準備されていた。
賢者ナームはS級冒険者にして、全属性の魔法を使える稀有な魔導士であり、ランスの恋人でもあるのだ。ランスとともにギルドに出向くと、すでにナームは応接室で待機していた。
「ランス!久しぶり。ランスはその子に乗り換えるつもりで呼び出したわけ?」
「冗談いうな、俺だって歳の差くらいは考えるさ。」
ナームは年齢22歳、ピンク色の巻き毛の長髪で、大きな目と綺麗な赤い瞳の女性である。歳よりも若作りのやや幼さの残る顔立ちは何とも可愛らしいのだ。着用している魔法着も体の線を出しており女性を強調しながらも、ピンク色でかわいく統一されている。
「はじめまして、ナームさん。お邪魔じゃなければいろいろ教えてくださいね。」
「うん、かわいい弟子ができるのは、こちらもうれしいことだからね。早速だけど、ステータスをスキャンさせてもらいますね。」
「・・・・・こ、これ嘘じゃないよね・・・。この子、現時点で私よりも魔力量あるみたいだよ。それに、確かに聖女だけど、全属性の魔法をAランク以上の適正で使えるわ。化け物ね・・・ま、鍛えがいはあるわね。」
「私がいま使える魔法が、全て特殊な究極魔法なので、使用頻度の高い魔法を教えていただきたいんです。」
「う~ん、化け物らしい贅沢な希望ですね。では明日からビシビシ教えますからね。」
「よろしくお願いいたします。」
密度の濃い一日であった。
乱筆乱分失礼いたしました。ご意見などありましたらよろしくお願いいたします。