ファザコン
今回はお父さんとの、愛を語る回です。こんなに愛される父親になれることはあるのだろうか?
攻して来たエールドベルグ軍は、メルティアとシェスターによって壊滅させられた。
今回は、アンブロシア軍側陣営においても寝耳に水の話なのである。しかも、勝手に停戦宣言までしてしまっているのだ。
メルティアにとっては、それら全てがどうでも良い事だったのかも知れない。
メルティアの行動は、非常に情動的で本当は、ただ母国を守りたい、父親の役に立ちたい、でも今後、戦争は仕掛けられたくない、したくない。という単純な発想しか無いのだが、それをたった一人で成し得てしまう力を持っているのだ。
とは言っても、流石に説明する必要があるのだ。後日に皇帝アンゼルに面会を依頼をしたのだ。程なく面会は、認められた。
翌日メルティアは、早々に玉座の間に立っていた。
「状況を報告させて頂きます。まずは、勝手ながらエールドベルグ軍は、メルティア様と私で殲滅致しました。その後は、エールドベルグへ出向き、不戦協定とアンブロシア領変換、賠償金の拠出を確約させて参りました。猊下が納得するしないに関わらず、実行して参りました。」
アンブロシア側の首脳達は、困惑の色を隠せない。
教皇アンゼルは、何も言わずにメルティアを見つめる。
「お父様・・・お会いしたかったです。お元気そうで何よりです。エールドベルグは、お父様にお会いするついでに、露払いをしておきました。」
周囲の罵詈雑言も、全く意に介さず、玉座のアンゼルに歩み寄って行く。
銀白のサラサラの長い髪、少し潤んだ真っ青な瞳がただアンゼルを愛おしそうに見つめるのだ。
メルティアは、いつもより子供っぽい、白くふわふわのドレスを着て、玉座の前で立ち止まる。
「お父様・・・大好きです。愛しています。・・・お父様に触れてもいいですか?」
アンゼルは、何も言わずに右手を前に差し出す。
メルティアは、アンゼルの手の甲にキスをすると、静かに右手に頬擦りをする。
「私は、お父様の言う事は聞きません。でも、お父様を煩わせる物は、勝手に排除します。」さすがに呆れた様に、メルティアの涙の溢れている瞳を見つめる。
「お願いです。また、私を愛してくれませんか?お父様に愛されたいんです。だめですか?」アンゼルは、力一杯メルティアを抱きしめた。
「ダメだ、お前は許さない・・・」
アンゼルがどれだけメルティアを愛していたか、周囲の者達は知っているのだ。メルティアの居なくなったあとのアンゼルは、自暴自棄になっているかの様に、投げやりな態度になっていたのを誰もが知っていた。
「シェスター!メルティアを頼んだぞ‼︎・・・それと・・・子供が出来たらすぐに顔を見せに来い。」
「はっ!お任せ下さい。」
シェスターは、膝を突き平伏する。
「報告大義であった!」謁見は終了した。
メルティアは、周囲の計らいもあり、教皇の寝室にいた。久しぶりに、二人だけでゆっくりと会話をするためである。
メルティアは、純白のふわふわのドレスに淡い薄桃色のレースのベールを被った姿でアンゼルの膝に縋りつき顔を上げアンゼルの漆黒の瞳を見つめる。
メルティアの恐い程整った容姿、吸い込まれそうな青い瞳、小さいがプクッとして果実の様に瑞々しい唇は、あの冷徹な筈のアンゼルの心すらこじ開ける。
彼女の容姿は、母親に似て優しくも美しいが、加えて目尻には凛とした鋭さを、口元にはあざとさすら感じさせる天使の様な可愛らしさを備えている。更に覚醒後、その計り知れない魔力を抑え込む苦痛は、彼女に妖艶さすら与えていた。
「セリス、私は魔道の強化ばかりにかまけて今までちゃんとお前の顔を見てこなかったのだな。こんな綺麗に咲いてくれていたのに。」そっとメルティアの頬に手を当て、周囲の髪を梳く。
「お父様・・・私は幸せです。お父様とは、考えも立場も全てが違います。でも、私はお父様が大好きです。邪魔をしても、怒らせても、離れていても、私はお父様の傍にいます。」
アンゼルは、メルティアを膝の上に座らせると、抱きしめる。
「お前は、もう自由だ。私はもうお前を縛らない。この国に、もう他国を征服するだけの力はない。お前の思う通りになったのだ。私がいなくなった後は、お前の自由にするといい。」
「私には、そんな欲は無いつもりで居ました。でも今回のエールドベルグの侵攻を耳にして居ても立っても居られませんでした。そして、お父様が心配で、、、先に動いてしまいました。ごめんなさい。」
「そう、お前は母国思いだったが、この父にまで執着していたとは、思わなかったよ。」アンゼルは、メルティアの頭を撫でながら笑う。
初めて見る安らかな笑いだった。
「でも、アンブロシアがこれだけ人材不足になっているとは思いませんでした。」
「ふふふっお前があれだけ抵抗するとは思わなかったからな。目ぼしい者は皆お前に屠られてしまったよ。」
「もしよろしければ、カルセドとアルフィンを側付きにしてはいかがですか?」
「お前の私兵じゃないか?」
「ご存じの通り、お父様が私のために選りすぐったお二人です。腕は確かですよ。」
「お前を側近にするか?」
「そんなに、毎日喧嘩したいですか?」
そのほのぼのとした会話は、新しいアンブロシアの将来を明るいものにしていくかのようである。
かつての力を失った教皇と、強大な力を持つが幼い娘は、変化を受け入れ共に歩んで行く決心を固めていた。
しゃーす!




