魔力封じのブローチ
聖女様にひどい仕打ちをしてしまったシェスターが今度は、彼女のために魔封アイテムを作ってプレゼントするお話です。
目下メルティアの問題は、魔力量が多すぎて、コントロールするのにもかなりの力を費やしてしまう現状がある。
一番必要なものは、魔力を無駄にしないように魔力をコントロールする魔封アイテムが必要であると言うことだ。
あとは、攻撃の際の攻撃力強化の付与と、守備魔法結界構成と結界に反撃効果を付与する事だ。
とはいえ、あまりにも難しい宿題だ。
少し、考え込む。
メルティア以上の力を持たない自分が何かの手伝いができるとするなら、メルティアが使う魔法を効率化する事である。
現状では、メルティアは、自分から溢れ出る魔力を、自分の魔力で相殺する形で、常に魔力を使い続けているのだ。
そこで、メルティアから溢れ出る魔力を、別の魔法構成を触媒にして、攻撃魔法や、魔法防御結界のエネルギーとして使う事ができれば、メルティアは、自分の溢れ出る魔力に振り回される事もなく、自分の守りを強化し、攻撃力も上乗せできる事になる。
つまり、この魔法構成をこのブローチに、組み込む事が出来れば、メルティアがブローチを身につけてくれるだけで、目的は達成できるのだ。
シェスターは、部屋に篭った。
まずは、溢れ出る魔力を、このブローチに集積し続けるための魔法構成の付与である。
シェスターが、天才賢者として二つ名を得た理由は、ここにある。シェスターは、自分の構成した魔法陣から、新しい魔法を創作できるほど、魔法構成の解読・構築に、優れた能力を有しているのだ。
つぎは、その蓄積した魔力を、有効に守備結界の展開、攻撃力の追加付与に回すための魔法構成を構築しなければならない。
かなり骨が折れそうなのである。これからが、シェスターの本領発揮なのである。
こんどは、メルティアが我慢できない。何日も一人でいられないのは、周知のことである。
シェスターは、知っていても目的を果たすために集中している。邪魔もできない。
仕方なくメルティアは、シェスターの部屋の前で何日も何日も中の物音を聞いては安心して、毎日シェスターのために、泣きながら歌を歌い続けた。
そして、待つ事4週間経過した頃。シェスターの部屋のドアが開く・・・
「メル・・・ずっと前でまっててくれたの?ありがとうね。」
シェスターは、疲れ果てた表情でメルティアを見つめる。
「あの歌・・・魔唱だよね。僕に魔力を送る為に歌い続けてくれたの?メル・・・君は凄いね。ずっと聞こえてたよ。あーぁ、こんなに痩せちゃって・・・ばかだなぁ・・・」
静かにメルティアを抱きしめる。
メルティアは、真っ青な瞳に涙を溜めてシェスターに抱きついて離さない。
「ただいま、今戻ったよ。はい、プレゼントだよ。」
ピンクダイヤモンドをあしらったピンクゴールドのブローチを渡した。
「?・・・こっ、これって、すごいんだけど・・・こんな緻密な魔法構成をこんな小さいアイテムに刻むことできるんだ・・・それも、こんな高い効率の構成、魔道プラントでもないと達成しえないよ・・・」
「付けてみて⁉︎きっと役に立つと思うから・・・」
「・・・うれしい・・・でも、こんなに長くシェスと逢えないんなら、いらなかったのに・・・」
「あははは、メルは厳しいなぁ。でも、これでメルは楽になるはずだから常に身に着けててね。」
「わかった・・・早く一緒に寝よう。」
ふたりは、メルティアの部屋に入っていった。2日間でてこなかった。
間もなく、ガーゴイルの大群と3体のドラゴンゾンビがアルメリアの王都を襲撃してきた。魔王からの襲撃であった。
メルティアとシェスターは迎撃にでた。
その活躍は圧巻で、ガーゴイルの大群は、シェスターの活躍で殲滅され、ドラゴンゾンビは、メルティアの聖属性魔法であっさり浄化されてしまった。
呆気ない幕切れであつた。魔王がその後に降臨したが、メルティアと会話しただけで返って行くと言う珍事も起こった。
メルティア曰く、不可侵を条件にお互い不問としたとのことだった。
そして、旅立ちの日はやってくる。次の目的地は、特になくただまた困っている町や国を廻り、出会う人達を笑顔にする事を楽しみに旅立ったのだ。
「あっさりと、王城の退去を許してくれたね。」
「まぁあれだけの魔物退治をさせられて、拉致までされたら、こっちとしても黙ってられないからね。それより、そのブローチの使い心地はどう?」
「うん、おかげで普通に呼吸も出来るようになったし、助かってる。」
「ああ?呼吸も出来なかったの?」
「あっ・・・うん・・・魔力抑えるのにどうしてもそれ用に呼吸を整えるんだけど、溢れてくるから整えきれなくて、タイミング悪いときは呼吸を止めて合わせるんだよ。」
「なんで、もっと早く言ってくれないんだよ。僕が魔封構成作るの得意なのしってるでしょう?」
「ごめん、シェス心配すると思ったから・・・」
「また、いじめないとだめかな・・・」
「あああ、それはなしでお願いします。これ以上は死んじゃいます。」
次に通る町もかなりひどい情勢の町である。オルナスとはかなり違った状況で、治安が非常に悪いのだった。貧しい理由も、領主の搾取によるものであり、根本的に違うのだ。しかも、マフィア自体野放しにされているとは言いようで、領主と結託しているという救いがたい状況になっていたのだ。
ま、よろしく。