表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦聖女は楽園を探し求める。  作者: バナナード
10/59

教皇として父親として

いよいよ、聖女の秘密に迫ります。そして考え方の違いから、想像を超える親子喧嘩・折檻が始まるという回になっています。ご閲覧お願いいたします。

その日から、メルティアは戻る事はなかった。四方捜索が行われるが、目撃証言もなく、アンブロシアの関与は疑われるものの、他の勢力の介入もしきれない。


 誘拐した当事者からの接触を待つ以外に、方法が無いのが実情であった。


 そんな中、側近の3人だけは動き出す事を決めたのだ。


 シェスター・アルフィン・カルセドの3人は、アンブロシアに向かった。





 メルティアは、アンブロシア聖教国はアルセンシア城の最上階に軟禁されていた。


 ここは、過去にメルティアが皇女として生活していた場所である。


 「セリス。気は、変わらないのか?私に従うなら、ある程度の自由と其方の必要とする人材の安全は保証しよう。」


 「お父様!もう既に大切な者達に遺恨を残してしまいました。後戻りは出来ません。」


 「なぜ、そんな事をお前が気にする必要があるのだ。確かに其方は、私にとって優秀な血統を維持する為の道具で有る事も事実だが、本当はお前と家族で有る事を望んでいる事に偽りは無いつもりだ。」


 「私は、多くの優秀な魔法適性、多様性、体質、特殊スキルから容姿に至るまで選りすぐり生まれてきました。私を生みだす為にどれだけの存在や心を握り礫して来たか・・・。こんな事をしなければ、私の母だって生きていたかもしれないのに・・・もう、こんな事やめませんか?」


 この国では、以前から優秀な遺伝子を持つ者たちが、遺伝子の強化の為だけに、愛の無い交配を繰り返したり、優秀な遺伝子を集める為に生命を奪うことは、当たり前に行われていた。


 そんな忌わしい卵子や精子を確保・凍結保存し、人工受精を行う。


 そんな悪魔の様な所業が、王侯貴族から平民を問わず行われて来たのだ。


 実際メルティアは教皇とある公爵令嬢との間に生まれた。


 母は、現状で最も優秀な遺伝子を持つとされた美しい女性であった。


 教皇も彼女を愛していたが、妊娠の極初期に突然変異を誘発するための魔道操作が行われ、結果としてメルティアは、母の生命と引き換えに生まれてくる事になったのだ。


 「私も其方も、そんなアンブロシアの歴史の体現者なのだ、逃げられないのだよ。だからこそ親心として、其方の傍には遺伝子の優れた者だけを集めたのだ。其方が誰を選んでも許してやれる様に優秀な人間だけを揃えたのだ。・・・結果として、お前に反乱を起こされ、こちらには甚大な被害が出てしまったがな。」


 「せめて、この力で世界を支配するなんて、酷い事はやめてください。今度こそ、私達が呪われた存在になってしまいます。」


 「やはり、其方は私の力にはなってくれないのだな・・・お前は、私の最高傑作だ。娘としてずっと一緒に居てほしかったのだが・・・」


 「なら、なぜ私の言う事を聴いてくれないの?」


 「私すら、アンブロシアの歴史の継承者でしかないということだ。アンブロシアは強くなければならない。そして、いつか世界の頂点に立つのだ。それが先人の意志であり、この国の誇りでもある。今其方の言う事を聴く事は、この国自体を否定する事だ。」


 「私だって本当は、お父様が大好きです。仰ることは、理解したいです。でも、今お父様がやろうとしていることは、他の国を害してまで必要な事とは到底思えません。静かに暮らすだけじゃダメなんですか?これから変わって行ったらダメなんですか?」

メルティアは、泣きながら懇願する。


 「理解できないようだな・・・たった今から、其方は実験材料だ。私は、もう其方に会う事はない。」


 教皇は、一度だけ振り返る。


 その頬には、光るなにかがつたっていた。


 「お父様ぁ‼︎」


 メルティアはたくさんの想いを込めて叫ぶ。


 そして地下の実験室に連れていかれた。






 メルティアが連れて来られたのは、巨大な魔法陣が幾重にも配置された空間である。


 服は脱がされ一糸纏わぬ姿で、魔法陣の中央に固定される。


 「何これ!お願いはなして!」


 「申し訳ありません。もはや姫様としては扱えませんので、お許しください。」


 「お願い、お父様と話しをさせて。」


 「貴方は、もう実験体でしか無いのです。」

冷たい声で答えが返ってくる。


 「では、実質魔力量の測定から、始めて下さい。」


 魔法陣が光だし、メルティアの魔力は、物凄い勢いで吸い出されていく。


 「あぁっ!うっくっくうぅ・・・あっ」

身体中震わせて、悶え苦しむ。


 「す、凄い魔力量だ!空に出来るのか?他の実験室の魔力貯留槽も連結しろ!」


 そして、貯留槽を5つ満たして漸くメルティアの魔力は、空になった。


 「あっあぁ・・・うぅん・・・あっ」


 全身痙攣させて涙ながらに、自分が映し出されたモニターを見つめる。


 「では、次は自然回復を確認します。」


 このままの状態で放置され、5日ほどで全回復する結果となった。


 「脅威的な回復力だ、大きな町の生活に必要なエネルギーを余裕でまかなえる程の魔力量だ・・・」


 「では、次は注意して下さい。間違うと生命に関わります。魔力負荷開始します。」


 魔法陣が凄い勢いで発光して行く。


 「あっあああああっ・・・いや!やめて!助けて・・・」


 激しく苦しみ出す。それは、延々と続いていく。2日後に限界を迎える。


 メルティアの身体は、それ自体が発光してまるでエネルギーそのものになったかの様な状態である。


 3日後、口からは吐血、血の涙を流して、ただただ耐えていた。


 「あっあぁ・・・お願いもう無理です。やめてぇ・・・」息も絶え絶えで訴える。


 「汗腺からも、出血し始めたら中止して下さい。」


 地獄は、続いていくのだった。

よろしければご意見・応援などお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ