Happy Birthday
「誕生日?」
「そう。いつなのか教えてほしいと思って」
思いがけないレオヴァルトさんの言葉に、私は内心首をかしげた。そんなこと、どうして知りたいなんて思ったんだろう。
「書類には三月五日って書くことになってるよ」
「書類には?」
「えっとね、孤児院に預けられた日? らしくって、私は覚えてないんだけど、その日にしようねってことになってて」
私の返事を聞いたレオヴァルトさんが、なぜか酸っぱそうな顔をした。どうしたんだろう、一緒に食べているのはいつものおいしい串焼き肉なのに。
そういえば、今年の三月五日は『レオヴァルトさんともっと一緒にいたいのに』と悩んでいた。まさか結婚することになるだなんて思ってもいなかったのだ……しみじみ串焼き肉を噛みしめていると、急にレオヴァルトさんが真面目な顔つきで深刻そうな声を出した。
「――リナリア、何が食べたい?」
「なんで? 串焼き肉食べてるよ?」
「もっとたくさん、色々買おう。露店の端から端まで見回って、目についたものを片端から買い集めて」
「どうしたの? だって今日はレオヴァルトさんの外套見に行くんじゃなかったの?」
「それも行きたいけど、後回し」
レオヴァルトさんが腕を伸ばして、親指で私の口のはしについたタレを拭う。それから目を細めて、とろけそうなくらい甘く甘く微笑んだ。
「遅くなったけど、お祝いをしよう。美味しいものをたくさん食べて、最後にケーキを食べるんだ」
「お、お祝いするようなこと?」
本当のお誕生日はわからないのに。私はレオヴァルトさんの甘いまなざしに、どぎまぎと声を上ずらせた。レオヴァルトさんはとても幸せそうに笑みを深めて。
「もちろんだよ。だって僕は、リナリアがこうして存在してくれることを、神様と世界中すべてに心から感謝しているんだ」
親指をぺろりとなめて意気揚々と露店に向かうレオヴァルトさんに手を引かれ、私はとまどいながらついて行く。片手にサクサクの揚げ菓子を持って、もう片方の手にフレッシュジュースを持って、「あーん」と言われて開いた口にはカステラ焼きが与えられた。まるでふたりだけのお祭りみたいで、私は急に訪れたぜいたくな一日にびっくりして、ほっぺたがまっかに染まる。
「いいのかな」ともらした声は興奮に弾んで、レオヴァルトさんがはしゃいだように笑う。
「これからずっと、毎年こうやって祝おう」という彼の言葉に、私は笑って「うん!」と返事をした。
とても短いけれど、いっぱいのお祝いの気持ちを込めて!








