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リン姉のお酒と大道芸

「どうしたのですか?『焔の戦乙女』さん?」

「サフィー、今すぐ訂正するなら許すわよ?」

「わー、こわーい。ごめんなさーい。」

取り敢えず、サフィーは謝る気がない事は分かった。

私は、この恥ずかしい現実から逃げようと、出されたお酒を飲み干す。

今いる場所は、前に酔いつぶれるまで飲んでたバーだ。

お酒の良さをリン姉に知ってもらおうという建前で、私が飲むために来た。

リン姉は、初めて飲むお酒を、恐る恐る飲んでいる。

サフィーよりちびちび飲んでるかも。

「あらら〜?リン姉様、もしかしてお酒が怖いですか?」

「そんなわけないでしょ?」

「じゃあもっとぐいっと行きましょうよ!」

サフィーは、アルコールが回って、よく喋るようになってる。

「ビーノ姉様、また勝負します?」

「しない」

酔いつぶれたら、リン姉に迷惑がかかる。

それに、また叱られそうだから、あんまり飲まない方がいい。

「お姉さんは、助けられたみたいですね?」

「ええ、何とか助けられたわ。」

ここの店主には、リン姉が奴隷にされてた事を話してる、だから、知っていて当然だ。

ん?

「リン姉様、私と勝負しません?姉様が勝ったら私を好きなようにしてもいいですよ?」

今度は、リン姉に絡み始めたサフィー。

「好きなように?」

「ええ、どんなことでもいいですよ?」

私なら、絶対飛びつく内容で勝負を持ちかけるサフィー。

リン姉は、サフィーをそういう目で見てないから、受けるとは思わないけど…

「いいわよ。」

「本当!?」

「ただし、私が勝ったら“お勉強”に付き合ってね?」

“お勉強”…礼儀作法とかのことかな?

リン姉ずっと気にしてるから、ちょうどいい機会だったのかも。

「これは…絶対負けられませんね!」

そんなに勉強いやなんだ…

そして、出されたお酒を二人は一気に飲んだ。











「リン姉様、弱くないですか?」

「そうね、もう潰れて寝てるし…」

私が背負っているのは、数杯飲んだだけで潰れてしまった、リン姉だった。

こんなにも早くリン姉が酔いつぶれるとは思わなかった。



『リン姉様…大丈夫ですか?』

『にゃんろこれちし〜』

うん、全く大丈夫じゃないね。

『ビーノ姉様どうしましょう、リン姉様が…』

『取り敢えず連れて帰りましょう。』

『やだ〜まらかへらない〜』

これは、引っ張ってでも連れて帰るべきね。

私が、リン姉を抱き上げようとすると、

『はにゃせ〜!』

『痛っ!?』

暴れたリン姉の裏拳が、私の顔に直撃し、私はよろけてしまう。

それが不味かった。

『しまった!?』

なおも暴れるリン姉を、よろけた体勢では支えきれず、リン姉もろとも倒れてしまう。

『姉様!!』

サフィーが、支えようと走って来るが、時既に遅し。

『ぐはっ!?』

『いった〜い』

倒れた私の腹部に、リン姉の全体重がのしかかり、胃の内容物が逆流しそうになる。

『バカサフィー、まだ私は負けてないぞ!』

『今はそれどころじゃ無いでしょう!!』

酔っ払って、おかしくなったリン姉は、サフィーに第2ラウンドを申し込むが、私がそれどころじゃ無かったので、当然拒否される。

『サフィー、その酔っ払いを抑えて…』

地味に、鳩尾にエルボーを食らっていたので、痛みですぐに立ち直れなかった私は、サフィーにリン姉を抑えるように頼む。

『フン!サフィーの貧弱筋力で、私を止められると思うなよ!!』

完全後衛のヒーラーであるサフィーの筋力では、リン姉を抑える事が出来ず、すぐに押し返されるサフィー。

『落ち着けリン姉!!』

なんとか回復した私がリン姉を抑える。

『ビーノか…筋力は凄まじいけど、今の私のほうが強い!!』

『はあ!?』

なんと、全力で抑える筈なのに、リン姉の方が力が強かったのだ。

『させませんよ!リン姉様!!』

すぐにサフィーが応援に駆けつける。

それで、なんとか抑える事に成功したものの、疲れて眠るまでのあいだ、何度も蹴られ殴られた。

途中、何度も店主が応援に来ようとしたけど、私を超える力を発揮したリン姉に蹴られでもしたら、重傷どころじゃなさそうなので、断っておいた。



「警察…見回りの衛兵が、二人一組でいる理由が分かったわ。」

「本来、力が強い筈のビーノ姉様以上の力を出してましたからね…一人で酔っ払いの相手をするのは無理ってことですね。」

サフィーに治療してもらったので、今はどこも痛くないけど、戦闘をした時みたいに全身が痛かった。

「取り敢えず、今回の教訓はリン姉に酒を飲ませるのはヤバイって事ね。」

「ですね、私次から我慢比べに、絶対リン姉様を誘いません。」

「それがいいわね。」

酔っ払いの面倒を見るのって、めちゃくちゃ面倒くさくて、疲れるし痛いものだって分かった。

こういう酔っ払いの対応をしてる警察官には、頭が上がらない。

…こっちじゃ衛兵だけど。

取り敢えず、リン姉が魔法を使い出す前に、宿に帰って寝かせないと。

「酔っ払いって、ほんっと何仕出かすか分からないわね。」

「ですね、これからは私も飲む量を考えるようにします。」

人の振り見て我が振り直せ、昔の人はよく言ったものだ。

まさにその通り。

酒を飲んで、良くない事の典型例を、自分の姉から学ぶのはなんだか嫌だけど、私がこれをしてサフィーに白い目で見られるよりかはマシだ。

ん?

「何でしょうね?あの人集り。」

「絶対碌な事じゃ無いわ。」

「でも、そう言われると逆に見たくなりますよね?」

「そうね」

押すなって言われたら押したくなる理論。

私達は、好奇心で人集りの方へ向かった。










「あれは?」

私が目にしたのは、子供のサルのような魔物を操る女性だった。

「猿まわしだったかな?」

「なんですかそれ?」

なんですか…う〜ん、

「猿に芸を仕込んで人に見せる、一種の大道芸的な?」

「へえー、猿に芸を仕込むって、大変そうですね?馬鹿ですから。」

そうやって、すぐに毒を吐く。

リン姉みたいに、サフィーに色々勉強させた方がいいのかな?

でも、前のヤダヤダを見てると、なかなか言う事聞いてくれなさそう。

「サフィー、あそこの箱にこれを入れてきて。」

私は、取り出した金貨をサフィーにわたす。

これで、あの人も少しは儲かるでしょ。

すると、サフィーが金貨を指で弾いて、箱に入れる。

そして、私に向かってドヤ顔。

「凄いけど、お金で遊ばないの。」

「むぅ〜…」

「フフ、そんなにかわいい顔しても駄目よ。」

サフィーが怒って何か言おうとした時、

「泥棒ー!!」

芸をしている方から声が聞こえた。

見ると、箱が無い。

「ハァ…サフィー、リン姉をよろしく。」

「はいはい」

いや、仮にも姉なんだから、そんな嫌そうな顔しないでよ。

リン姉泣くよ?

私は、取り敢えず見なかった事にして、ひったくり?を追いかける。

あんな分かりやすい箱をもった奴だ、すぐに見つかった。

「はいはい、今すぐその箱を返すなら、衛兵に突き出したりしないけど?」

「チッ、分かったよ!」

妙に潔いい…

「受け取れ!!」

すると、ひったくり犯は、箱の中身をぶち撒けた。

普通なら、地面に落ちていくつかネコババされるだろうが、そうはさせない。

「な!?」

強い風が吹き、硬貨を一箇所に集める。

私は、ひったくり犯から箱をぶん取り、集まっている場所の下に置く。

そして、風魔法を解消すれば箱に全ての硬貨が落ちてくる。

「残念だったわね。罰として、そこで大人しくしてなさい。」

すると、光の鎖がひったくり犯を拘束する。

サフィーだ。

最初から、逃がす気なんて微塵もない。

私が箱を回収した後、拘束するようにサフィーに言ってある。

目撃者多数だ、駆けつけた衛兵の御用になるだろう。

「光の鎖…もしかして、噂の『光槍の聖女』と『焔の戦乙女』さん?」

「そうだけど…その二つ名恥ずかしいからやめて。」

「いい名前だと思うんですが?」

嫌なものは嫌なのだ。

ほら、周りで噂されてる。

「『光槍の聖女』さん、俺とお茶でも飲まないか?」

「んだと?」

烈火の如き怒りが湧き上がってきた。


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