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サフィーは甘えん坊

「お前、後始末はどうする気だ?」

「ゲスノ子爵は、魔族の置土産にたまたま引っかかって、爆死しました。」

「…そうか。」

どうして呆れたような顔をするんだヘリス。

別にあり得ない話じゃないだろ。

ヘリスは、抗議の視線を送る私を無視して、シトリン姉様の方を向いた。

「どうやら、ちゃんと救出出来たようだな。」

「ええ。シトリン姉様、私達五姉妹の三女で、私とサフィーの姉なの。」

シトリン姉様は前に出て、

「シトリンです、よろしくおねがいします。」

凄くお上品な挨拶だった。

「礼儀作法がばっちりだな…何処かの狂人姉妹とは、大違いだ。」

「あぁ?」

「なんですって?」

「ヘリス・コリラットだ。一応、この二人には恩がある、何かあったら俺を頼ってくれ、力になる。」

ヘリスは、私達に睨まれる事に慣れたのか、華麗にスルーされた。

一応ってなんだよ、一応って。

家族の命を救ってやったのに、一応ってなんだよ。

「そうか…妹が何かご迷惑をお掛けしていませんでしたか?」

「迷惑か…娘が良くない方向に毒されてな、その、妹が欲しいって。」

「それは!誠に申し訳ございませんでした!この礼儀を欠片も弁えていない愚妹に変わって謝罪させて貰えませんか!?」

え、ええ…

いやいや、そこまでする?

ヘリスも困ってるじゃん。

「シトリン姉様、こういうのは、フレンドリーな方が…」

「お黙り!!宿へ行ったらお話があります、サフィー、貴女もですよ?」

「えぇー!」

サフィーは、露骨に嫌そうな顔をして逃げようとする。

しかし、

「ずいぶんビーノに甘やかされて生きてきたみたいだけど、私が来たからにはそうは行きませんよ?」

「チッ!お姉様こいつ今すぐ追放しません?きっと私達の愛を邪魔する気ですよ?」

いや、普通に礼儀を弁えてほしいだけだと思うけど…

「これまでは、ずーっとサフィーを甘やかして来たからね、たまには厳しくしたほうがいいかしら?」

「嫌です!!」

サフィーが、急に大声を出した。

「絶対嫌です!!もっとお姉様と一緒に居たいんです!!」

「別に、離れ離れになる訳じゃ無いんだから、それくらいで怒らないでよ。」

「嫌です!!」

それからも、サフィーは嫌だ嫌だと喚き散らし、何度もシトリン姉様が怒鳴っていたけれど、正直効果なし。

私が抱き締めても、嫌だ嫌だと喚いて言う事を聞かないサフィー。

まぁ、サフィーもまだ子供だしね。

ちょうどヤダヤダ期に入る頃だから、年齢相応なのかもね。

結局、厳しくしない事を約束したら、サフィーは静かになった。

ずーっと、抱き着いて来てるけど。











「サフィー、落ち着いた?」

「ふん!」

宿に帰ってきた私は、サフィーのご機嫌を治すのに必死になっていた。

「私が悪かったから、意地悪してごめんね?」

「ふん!」

ちなみに、サフィーは私に抱きしめられて、顔を私の胸に埋めてる。

落ち込んだ時、機嫌が悪い時にこの体勢になる。

私のニオイを嗅いで、落ち着いてるらしい。

「焦げ臭くない?」

「臭い」

「グフッ!?」

サフィーに、直球で臭いと言われて、結構傷付いた。

「…ごめんなさい」

「ん〜!!サフィー!!」

私は、サフィーの頭をワシャワシャする。

凄い嫌そうだけど、やめようとすると、もっとしてと、私の腕を突付いてくる。

やっぱりサフィーはかわいい!

「ビーノ、そろそろやめなさい。貴女がそんなだから、サフィーが我儘に為るのよ。」

シトリン姉様が、私の腕を掴んで止めてくる。

「じゃあ、ずっとサフィーをこのまま放置しろと?」

私は、軽く威圧を込めて質問する。

すると、

「どうして貴女は、そんな極端な考えしかできないの?」

シトリン姉様も威圧を込めて反論してきた。

それから、お互い口を開くことなく睨み合い続ける。

すると、重たい空気に耐えられなかったのか、サフィーが抱き着いて来る。

「大丈夫よサフィー。貴女は悪くないからね。」

サフィーは、それで落ち着いたらしいが、シトリン姉様は不満があったらしい。

「サフィー、いつまでビーノの後ろに隠れてるつもりなの?」

「いや、」

「姉様!」

私が大声を出して睨みつける。

防音の魔法はかけてある。

夜中でも、どんちゃん騒ぎ出来るのだ!…そんな雰囲気じゃないけど。

「ビーノ、今私はサフィーと話してるの、貴女は黙りなさい。」

「チッ、良いでしょう。しかし、サフィーが私を頼ってきたら、すぐにサフィーの味方をしますね?」

「私は、それをやめろと言ったはずですが?」

まずいわね…せっかく助けたのに、こんなすぐに喧嘩して、これじゃ女王候補だった頃とほとんど変わらないじゃない。

「シトリン姉様、貴女の言いたい事はよく分かります。確かに私達は礼儀がなってません。でも、それを理由に私達の中に溝ができるような事はしたくないです。」

「私の、礼儀を教えるというのは間違っていると?」

「そうではありません、教え方がいけないのです。一方的で高圧的。それでは相手が不快になるだけです。」

シトリン姉様は、少し考えている。

自分の行いがどうだったかを、振り返っているんだろう。

「ハァ…そうね、貴女の言う通りだわ。私の言い方が悪かったわね。」

「それに付け加えるなら、まだしっかり見てもいないのに、不仮定な情報だけで判断したのも、良くありませんね。」

良かった、何とか和解出来そう。

「シトリン姉様、私も礼儀については、思うところがありました。しかし、自分に甘えて、改善してきませんでした。」

「じゃあ、今度からは私が指摘するようにするわ。だから気を付けなさい。」

「はい」

何とか、再開早々に喧嘩別れなんて、最悪の事態は回避出来た。

…サフィーが納得してくれるといいけど。

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