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スタンダードの翌日

「朝早くに呼び出してすまない。」

「いえいえ、私もサフィーから逃げる「ゴホン!」…どうせ暇なんで。」

サフィーは、まだ怒っているらしい。

昨夜は、昼のサフィーへの悪口のせいで、一晩中説教されていた。

…本当に説教だよ?やましい事はしてないよ?

「そうか…それよりも、魔族を追い払ってくれてありがとう。」

ハーウェイは、深々と頭を下げてくる。

「お礼ならサフィーに言って、魔族は、サフィーのイカレっぷりにビビって逃げたから。」

「お姉様、もう一度私と一夜を明かしたいんですか?」

「いや、だって事実だし…」

サフィーにそういうのは、通用しないらしい。

殺意の笑みじゃなくて、純粋にこっちを睨んできてる。

…お酒飲ませたらマシになるかな?

「お姉様、また懲りずに悪い事考えてません?」

「いいえ、そんなこと無いけど?」

うん、信じてないね。

しばらく一緒に居ると、癖とかで分かるのかな?

それか、本当に心が読めるのか…

「それで、こんな早朝に呼び出した理由は?」

ハーウェイが、困った顔をしていたので、話を無理矢理戻す。

「ああ、それは、オークションが今夜行われる事になった。」

すると、さっきまで私を睨んでいたサフィーが真剣な表情を、ハーウェイに向ける。

「昨日の今日ですよ?本当ですか?」

「ああ、本当だ。」

そうか、なら決行も今夜か…

「ヘリスにも、伝えておく。カバーストーリーは覚えてる?」

「侯爵様と協力して、盗賊がおそった事にするんですよね?」

「ええ」

相手が貴族だった場合に備えて、カバーストーリーを用意しておく。

まず、私がターゲットを殺して、お姉様を解放する。

その後、ヘリスが盗賊に襲われたように偽装する。

そして、ギルドの内通者が盗賊に襲われた事を報告し、ギルドと侯爵でその盗賊を討伐した後、頭目は処刑。

というカバーストーリーだ。

処刑する盗賊の目星は付いている。

昨日のスタンダードを生き残っている事も確認済み。

準備は整った、後は夜になるのを待つだけ。

「あと、ギルドカードをくれ。ランクアップしておく。」

「分かったわ、日没までに貰いに来るわ。」

「分かった。」

日没前に受け取りに行くのは、サフィーを落ち着かせるためだ。

サフィーと喧嘩した状態で、お姉様に迎えに行くのは、なんか嫌だ。

そのために、まずはサフィーと仲直りしないといけないのだ。

私達は、ギルドを出るとすぐに宿に戻った。









「共鳴」

宿に帰ってきた私は、サフィーに共鳴を掛ける。

共鳴で、思考が繋がった事で、サフィーは私がやろうとしている事を理解したらしい。

不満が流れ込んでくる。

「私と仲直りしたいからって、それはどうなんですか?」

「確かに、これに頼るのは良くないわね。じゃあ、やめとく?」

まぁ、答えは既に分かってるけど。

サフィーの口から直接聞きたい。

すると、サフィーが私に近付いてきて、

「むぐ!?」

唇を重ねてきた。

「確かに、サフィーの口から直接聞きたいとは思ったよ?それは、直接(物理的)なのよ。」

「でも、私の答えは分かったですよね?」

「ええ、もちろん。」

私が、防音の魔法を掛けると、サフィーが襲い掛かってきた。

共鳴で強化された体力をフル活用して。










「サフィー、日没前よ?準備して。」

サフィーは、すぐに起き上がって準備を始める。

あまり疲れてないらしい。

共鳴は、心技体全てを共有する。

つまり、同じ力を双方に持たせる事が出来る。

私の、人外の体力で、あまり疲れてないんだろう。

もちろん、無事仲直り出来ました。

「お姉様、今度からは普通に話し合いましょうね?」

「…はい」

何よ、あんなに嬉しそうにしてたのに…

「何か?」

「いえ、何も。」

危ない危ない、また喧嘩になるところだった。

喧嘩か…

「ねえサフィー。」

「はい?」

「私達が本気で喧嘩したらどうなると思う?」

少し、気になってしまった。

「私の予想は、私が耐えられなくて、サフィーに謝りに行くだと思うんだけど…」

自分でも、理解出来てるくらい、私はサフィーに甘い。

甘いから、喧嘩したとき空気が嫌で、すぐに謝ると思う。

私が素直に認めたら、サフィーもきっと許してくれるだろう。

「私は、なかなか仲直り出来ないと思いますよ?」

へぇ、サフィーはそう思うんだ?

「理由としては、私達って自分の負けをなかなか認めないじゃないですか?」

「確かにね。」

「本気で喧嘩するって事は、お互い非が無いと思ってるはずなので、負けず嫌いな私達だと、なかなか認めないと思いますよ?」

なるほどね〜。

確かに、負けず嫌いな性格の私達なら、すぐには仲直り出来ないか…

「他の人が仲介してくれれば、すぐに仲直り出来るかも知れないですけど。」

「なら、尚更速くお姉様を助けないとね!」

…なんかサフィーが頬を膨らませてる。

「どうしたの?」

「お姉様、私のことも大切にしてくださいね?」

「はあ?」

この子は何を言ってるのかしら?…あ!

誤解したのか、サフィーが涙目になってる。

「違うのよ、サフィー!貴女の事が嫌いって訳じゃ無いの!!」

「それは分かってますけど…」

「私が言いたかったのは、この世にサフィーより大切な人はいないって事よ。」

「…本当ですか?」

サフィーが、メンヘラの面倒くさい彼女みたいになってる。

「共鳴使う?」

「…いえ、大丈夫ですよ。お姉様は、きっと本当のこと言ってるのでしょう。」

よかった、メンヘラの面倒くさい彼女みたいって考えが、バレるところだった。

「お姉様、私は分かってますよ?面倒くさいって思いましたよね?」

「…なんでバレたの?」

すると、サフィーは胸を張って、

「お姉様は、面倒くさい時は、いつも口がピクピクしてるので!…なんですか!その引いたみたいな顔は!?」

「実際引いてるからね…」

そんなところまで見てるなんて…もはやストーカーじゃない。

私は、かわいい声で怒るサフィーをなだめながら、ギルドに向かった。


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