意気消沈
「メリーちゃんは、何食べたい?」
「サフィーお姉ちゃんが食べてるの!」
「蜂蜜トーストのことかな?ですって変態姉様、早く作ってください。」
「はい…」
こんにちは、ルビーノです。
今はやらかして、妹のサフィーアに怒られている最中です。
反省しています。でも、サフィーは許してくれません。
…サフィーの方が、普段変態なのに。
「お姉様、何か言いました?」
「いえ、何でもないです。」
サフィーのこういうときの勘は、無駄に鋭いから、侮れない…侮れません。
…
「ああああああああああああああああああ!!」
全員がぎょっとして、こっちをみる。
「この喋り方気持ち悪い!!」
「お姉様!」
「黙れ!!」
何の拷問だよ!!頭おかしくなるよ!
私は、その後も散々喚き散らし、迷惑をかけまくった。
「二人とも、そろそろ仲直りしたらどうですか?もうすぐ街ですよ?」
「「…」」
私は、何を言っても顔を合わせようとしない二人に、苦労を強いられています。
申し遅れました、ローケンです。
私は今、何とかビーノ様とサフィー様の仲を修復しようと必死になっています。
ちなみに、二人が喧嘩した理由は、
『お姉様に反省の色が見えないから、厳しくしている。』
というのが、サフィー様の言い分。
『私は、十分反省した。それなのに、サフィーが許してくれないから。』
ビーノ様…貴女は仮にも姉でしょう?それでいいんですか?
しかし、それを言うと殺されそうなので、言えない。
ビーノ様は、平気で人を殺せる方です。下手に口を滑らせれば、確実に殺られます。
「ビーノ様、こういう時こそ姉らしい姿を妹に見せるものですよ?」
「サフィーが謝ってくれたら、私も謝るわ。」
子供ですか貴女は!
これまで、お二人と旅をして、カチンとくる事は沢山ありました。
しかし、ここまで面倒なのは初めてですよ…
…ガッスさんに任せるのはどうでしょう?
空気の読めない事を言って、二人にボコボコにされたら、少しは仲も良くなるんじゃないでしょうか?
取り敢えず最後ガッスさんに相談してみましょう。
「…という訳で、ガッスさん、よろしくお願いします。」
「…最近、俺の扱いが酷い気がするのは、気のせいか?」
「ん〜?睡眠不足とかじゃないですか?夜の見張りとかで、疲れたんでしょう。」
「んなわけねーだろ!」
やっぱり駄目でしたか…
「ビーノ様!ガッスさんがサフィー様のことバカにしてますよ?」
「おい、何してくれてんだ!?俺を殺す気か!?」
「大丈夫ですよ、ビーノ様はちゃんと手加減出来ますし、いざという時は、サフィー様が治してくれますよ。」
これなら安心でしょう。だから、気にせず逝ってください。残っていれば、骨くらいは拾いますよ?残っていれば。
「サフィー嬢のことでブチ切れたビーノ嬢は、赤い目の悪魔だぞ!?魑魅魍魎の類だ!!」
「誰が魑魅魍魎の類だって?」
「「あ…」」
ガッスさん、お疲れさまです…
「待て待て待て!はやまるな!俺はサフィー嬢の悪口何て言ってない!」
「知ってるよ。でも、私が悪魔とか、魑魅魍魎の類ってのは、どういうことかしら?」
ビーノ様、凄く優しい(殺意の籠もった)笑顔(目は笑ってない)をしている。
相当、ご立腹らしい。
「私が悪魔ってのはまぁ、一億歩譲っていいとして、魑魅魍魎の類ってのはどういうことかしら?」
「いや…それは…」
「ん?魑魅魍魎の類ってのは、蜂になった私へのあてつけかしら?」
そう言えば、ビーノ様は元人間の転生者。
自分が化け物だと言われのは、やっぱり嫌なのでしょうか?
「貴方にわかるかしら?若くして、事故で未練の多い一生を終えて、気付いたら芋虫だった私の気持ちが…」
「それは…」
「魔物だから、そんな理由で巣を追われ、母親を殺された私の気持ちが…貴方にわかるの?」
「…」
ビーノ様…生まれてまだ一年半程度なのに、そんなに過酷な人生を…
「泣きたくなるのを抑えて、妹の手前、強い姉を装って耐えてきた私の気持ちが、妹の為に、妹が傷つかないよう、妹の分まで傷ついてきた私の気持ちが貴方にわかる?」
「ビーノ様…軽率でした。」
私は、素直に謝った。ビーノ様は、私が想像する何倍も傷付いていて、苦労している。
それでも、大切な妹の為に堪えて、強くて優しい姉を演じている。
「私には、貴方達が感じてきた苦労を知ることは出来ない。でも、考えてはいる。行ってはいけない事、言わないほうがいい事、誤魔化して別の話題に変えたほうがいい事。」
「…」
「ちゃんと考えてるんだよ。普段は上から目線な言い方をすることが多いけど、礼儀はちゃんと弁えてるよ。」
ビーノ様が上から目線なのは、サフィー様のためだろう。サフィー様は人見知りで積極的に物を言えない。
それでは、舐められてしまう。
舐められ、足元を見られていいことはない。
だから、ビーノ様が高圧的な態度を取ることで、サフィー様を守っているのだ。
手が出るのが早いのも、そのためだろう。
「…いや、やっぱりいい。忘れて。」
ビーノ様はそれだけ言うと、馬車の中に戻っていった。
なんとも言えない空気が漂う。
「サフィー嬢に任せるしかねえな。」
賛成だ。
あの状態の人になにか言えるのは、その人と親しい関係の人だけだ。
ビーノ様の場合は、サフィー様だろう。
「サフィー様、頑張ってください。」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、心配しないで。」
お姉様は、強いんじゃなくて、強がっていただけでした。
それも、私のために。
「お姉様、もういいですよ?私も怒りすぎました。ごめんな「いいわよ。」え?」
「もういいわ、少し一人にして。」
「お姉様…」
失敗しました。
お姉様にしっかりしてほしくて、厳しくしていましたが、お姉様は落ち込んでしまいました。
私は、お姉様に抱きつきます。
「相談してほしい何て言いません。ただ、しばらくこのままでいて下さい。」
「…いいわよ。」
後は、お姉様が立ち直るまで側にいるだけですね。
…お姉様、いい匂いがします。
すると、お姉様が私から距離を取り始めました。
私が距離を詰めると、お姉様は距離を離します。
私がお姉様の耳元で臭いを嗅げば、かなり距離を離します。
それを何度か繰り返すと、お姉様は、距離を取らなくなりました。
楽しんで…はいなさそうですね。
もう少しだけ、抱きついて居ましょう。
それで駄目なら、距離を置いて、一人にしてあげましょう。
早く元気になってくれると嬉しいのですが…




