馬車の中で
話しがなかなか進みません。どうしましょう?
誤字、脱字がありましたら報告していただけると幸いです。
「暇です。」
「暇ね〜。」
私達は、ローカー商会の馬車に乗って揺られていた。
と言っても似たような景色が続いていて退屈していた。
「何か聞きたいことはありますか?」
ローケンが暇つぶしにと聞いてくる。
「そうね…強い人間について教えてくれる?」
「強い人間、ですか…分かりました。」
ローケンは少し考えた後話し出す。
「強い人間と言いますと、Sランク冒険者の方たちですね。彼らは、個人で国と戦えるという噂があるほどの人ですから。」
「個人で国を…ね。」
「何せ人間のSランク冒険者の方は世界に5人しかいませんから。」
「世界に5人…」
サフィーが驚いてる。かわいい。
「ビーノお姉様、また変なこと考えてませんか?」
「変じゃないわよ?ただ、驚いてるサフィーもかわいいな〜って思っただけよ。」
私達は、またローケンの事を無視してイチャつく。
「ハァ」
ローケンが呆れている。
「話しを続けますね。冒険者以外だと剣聖様ですね。」
「剣聖…」
私は、目を細める。
「剣について学ぶ時は、そいつに聞けばいいのね。」
「ビーノお姉様?」
「何かしら?」
「ピリピリしてますよ、怖いです。」
おっと、いけないサフィーを怖がらせてしまったわね。
私はサフィーを抱きついて、
「ごめんなさい、剣聖と聞いて気になったの。」
「お姉様は剣を使いますしね。」
「あー、後にしてもらえます?」
隙きあらばイチャつく私達に呆れているようだ。
「他には、北の魔女や唄の王、天弓ですかね。」
「北の魔女って?」
「この大陸の北端に住むと言う魔女です。何でも魔女が住む近くは、いつも吹雪いているようです。」
「それだけ?」
あまりにもざっくりした説明に驚愕する。
「はい。というかこの御三方は噂すら少ない謎多き方達なので。」
「なるほどね、唄の王と天弓についても聞かせて。」
「唄の王は、吟遊詩人です。しかし、歌いながらドラゴンを倒した、という噂があり、強者として有名です。他には数十人の上位冒険者を歌いながら無傷で圧倒したという噂もありますね。」
歌いながらドラゴン倒す、ドラゴンに出会ったことはないけど、凄いことなのは分かる。
「天弓は、名前の通り弓使いです。噂では、三本の矢を同時に放ちその全てを、空高く飛ぶドラゴンの目に当てたという噂があります。他は、投げられた豆に矢を当てて破壊したとかですね。」
弓は使った事ないからわかんないけど凄いことなのは分かる。
というか、情報が少ないからそれしか言えない。
「ありがとう、ちなみに貴方が会った中で一番強いのは誰?」
「私が、ですか?やはり剣聖様ですね。」
「剣聖ね。」
「まぁ、剣を振っているところは見たことありませんが。」
さすがに戦っているところは知らないか、
「じゃあ次は、この近くの国について聞きたいのだけれど。」
「国ですか。分かりました。」
すると、ローケンは地図を持ち出し、
「これが、この周辺の国を表した地図です。」
「地図って高いんじゃないの?」
「ええ、これは初代会長が使っていた古い地図ですが、国境はほとんど同じなので大丈夫でしょう。」
初代のお古なのね、というか国境が“ほとんど”変わってないって事は、
「戦争でもあったの?」
「ええ、ここを見て下さい。」
ローケンが指差した先には、小国家群だ。
「ここは頻繁に国境が変わるので地図を更新するのが大変で、最新の地図を持っているのは王族くらいです。」
確かに小国が多い地域なんて戦争が多そうね。
「元は『大帝国』と呼ばれた国があったのですが、内乱でバラバラになり、各地の貴族が勝手に独立した結果、小国家群が出来上がりました。」
「盛者必衰の理、というやつね。」
「はい?」
「何でもないわ、続けて。」
私は話しをそらす。
「では、今いる国が『アリノア王国』という国です。内陸国で全体的に平坦な地形の国です。また、豊かな大地が多く、大量の農作物が育てられる事から周辺国に大量の食料品を輸出しています。」
農業で成功した国なのね、アリノア王国は。
「次は、アリノア王国の東にある『イベリル帝国』ですね。この国は魔法と軍事が盛んな国で今は東に領土を広げようとしている国ですね。また、ミスリル鉱山が多くあることから、周辺国にミスリルを輸出しています。」
軍事大国なのね、東に領土を拡大しているか。東は戦争に巻き込まれそうだし行くのはやめよ。
「次は南の『シューミア公国』です。この国は『大帝国』が作った国で、水産業に力を入れています。海に面しているため、貿易が盛んに行われています。この国にはよく行きますが、魚が美味しい国ですよ。」
魚を食べるなら南っと。
「こんな感じですね。」
「あれ、北は?」
「ああ、北はとても高い山脈があり、ほとんど交流がないのですよ。」
なるほどね、確かに高い山があると交流は少そうね。
「ありがとう、国についてはこのくらいで大丈夫よ。」
これくらい知っておけばしばらくは大丈夫そうね。
「じゃあ次は、魔神教について聞きたいの。」
すると、ローケンから笑顔が消えた。
「どこで知ったのですか?」
「え?」
これは、怒っているのかしら?もしかして、
「魔神教と何かあったの?」
「ええ、まぁ。」
「無理には聞かないわ、貴方が話したいと思った時でいいわ。」
「ありがとうございます。」
ローケンの前で魔神教の話しはしない方がいいわね。
それから、馬車の中にはしばらく暗い空気が漂っていた。
 




