母の願い
前回の続きです。
「それで、話したい事というのは?」
「それは、私達はどうすればいいのかです。」
「聞きたいことの間違いじゃないの?」
「いえ、私が話したい事はこれからです。」
私が話したい事、それは、
「お母様、やっぱり死ぬつもりなんですね。」
「「「「は?」」」」
「なるほどね、知ってたのね。」
お母様はやっぱりそのつもりだったらしい。
「理由はなんとなくわかります、でも“姉妹”のために、教えてもらえませんか?」
「貴女は本当に賢いわね。いいわ、全員のために教えてあげる。」
お母様は、一度目を閉じて数秒おいた後、
「私はね、女王戦の仕組みが嫌いだったの。だって、姉妹で殺し合わないといけないなんておかしいでしょ?だから、貴女達全員に女王になって欲しかった。」
やっぱりお母様はこの仕組みが、女王戦が嫌いだったらしい。
「でも、血の掟には逆らえない。だから、貴女達に女王戦について教えてしまったあの時、猛烈に後悔したわ。いっそ死んでしまおうかとも考えた。」
さすがにそこまでは考えていなかった。
「私が死ねば、女王戦を見守る者がいなくなる。そうなれば、貴女達に女王戦をさせなくても済む、最初から私は、女王戦の前に死ぬつもりだった。」
「でも、人間達が攻めてきた。」
「そうよ、都合良く人間達が攻めてきた。実は嬉しかった。人間に殺された、そうなれば貴女達の怒りの矛先は人間に向く。」
私は、理解できたけど、姉妹は分からなかったらしい。
「私が自殺したら、誰が悪いことになる?」
「私達が悪いことになりなす。この話を聞いていなければ。」
「そうよ、きっと貴女達の間で、あいつが悪い、こいつが悪い、なんてことになる。そうなれば、結局貴女達に殺し合いをさせることになるかもしれない。」
「きっと、そうなるでしょうね。」
「えぇ。でも人間に殺されたら?私を殺した人間が悪い、そう思うでしょう。そうすれば、貴女達に殺し合いをさせなくても済む。そう考えたの。」
「そんな…」
みんな絶句している。当然だ、今までお母様にいいところを見せるために頑張ってきたのに、今更、そんなこと望んでない、なんて言われれば、なんのために頑張ってきたんだという事になる。
「だから、貴女達は逃げなさい。そして、好きなように生きなさい、これが、私が一番望んでいることよ。」
部屋が静かになる。私も、空気を読んで静かにしている。
「…です。」
妹が何か呟く。
「どうしたの?」
「嫌です!私は逃げません!」
これには、全員驚く。
いつも弱気なこの子が、一番最初にお母様の願いを否定したんだ。
お母様の願いを否定する。
強気な長女や私でも躊躇い、言えない事だ。
それなのに、一番弱気なこの子が、最初に言う。
だから、みんな驚いていた。
「貴女は、大好きな姉を殺してでも、私と一緒にいたい?」
「それは…」
「私が生きている以上、必ず殺し合わないといけない。私も、どんなに嫌でも、最後の一人になるまで殺し合わせないといけない。」
お母様は、「だから、」と一呼吸置いて、
「貴女達は逃げなさい。」
「分かり、ました。」
私からは、妹の顔は見えない。でも、泣いていることは分かる。
そんな妹を見てか、お母様が妹を抱きしめる。
すると、妹は声を出して泣き出してしまった。
「まだ死んでもいないのに、そんな泣き方しないでちょうだい。」
しかし、そんなことを言ったところで今の妹が泣き止むことはないだろう。
「お母様、私達は外でその子を待っているので。その、泣き止んだら行くようにと、言っておいてもらえますか?。」
「もちろんよ、言っておくわ。」
そうして、私達は出ていく。
「お前は、最初からわかっていたのか?」
「全部ではないけれど、ほとんど知っていました。」
「そうか…」
すると、長女が私の胸倉をつかみ、
「何故教えてくれなかったんだ!?」
その言葉に、私の中で何が切れる音がした。
「教えていたら、お前は信じたのか?」
「何?」
私は、敬語を使わずに言った。
「どうせ信じないでしょ?だってお前は私のことが嫌いなんだから。」
「…」
姉は何も言わない、言えない。自然と胸ぐらをつかむ手が緩む。
「何も知らないくせに、知ろうともしなかったくせに、まるで、自分は悪く無いような態度を取るな!!」
私は、姉を怒鳴りつける。
「なら、どうして“あれ”にすら教えていないんだ?」
「それは…」
「お前らは、“仲が良い”のに、なぜ“あれ”に教えなかったんだ?」
姉の口調が段々と私を責めるようなものになる。
「言えるわけないでしょう。」
「は?」
「“私達”のせいで、お母様が死のうとしてるなんて、言えるわけないでしょう!!」
私達が仲良くしていたせいで、お母様は死ぬことを決意した。そんなこと言えるわけがない。
「お前と、“あれ”のせいでお母様は死ぬつもりになったのか?」
「そうよ、お母様にとどめを刺したのは、私よ。」
すると、緩んでいた手がまたきつくなり、今度は、壁に押し当てられ、
「お前と、“あれ”が、お母様を殺したのか!!」
そう言う姉は、私に殺気を叩きつける。
しかし、私はそれが気にならない程の怒りを感じていた。
「“あれ”なんて呼び方をするな。」
「何?」
「あの子を、“あれ”なんて呼び方をするな!」
私は、妹を“あれ”呼ばわりするコイツが許せなかった。
主人公と長女の仲がどんどん悪くなって行きます。




