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交通事故にあった私、蜂になる  作者: カイン・フォーター
古代神殿と遥かなる旅の始まり
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甘えん坊メリーちゃん

一ヶ月後

季節は、秋のはじめ…いや、もうすぐ中頃といった所だろうか?

最近は、メリーちゃんも落ち着いて、ヤダヤダと泣き叫ぶこともなくなった。

しかし、


「サフィーお姉ちゃん、抱っこして。」

「はい。メリーちゃんもすっかり甘えん坊になったわね。」


一ヶ月経っても、メリーちゃんは別れたくないと言っている。

冬に出発とは言うが、そんな時期に出発すれば凍えてしまう。

だから、春出発に変えようかなとも考えている。


「おはようサフィー、メリーちゃん。」

「おはようございます、姉様。」

「おはようビーノお姉ちゃん。」


朝起きて、素振りと筋トレを済ませシャワーを浴びて戻ってくると、サフィーとメリーちゃんが待っている。

いつもの光景だ。

一ヶ月の間、メリーちゃんはずっとこっちで寝泊まりしていた。

それが許された理由は、例のいざこざが原因だろう。

未だに刺客が送られてくるらしく、メリーちゃんを守るために、私達の元に置いているのだ。

ちょっとや、そっとの実力者では、私達の目を掻い潜って、メリーちゃんに害をなす事は出来ない。

侯爵邸で守るよりも、こっちで守った方が安全なのだ。


「ビーノお姉ちゃん…まだちょっと汗臭いよ?」

「ぐふっ!?」

「純粋故の残酷な言葉…」


メリーちゃんからの精神攻撃をもろに食らってしまった。

子供の純粋さは恐ろしい…


「あれ?お姉ちゃん、あの人は?」

「ん?」


人?何処にも居ないけど…


「あれのことじゃないですか?」

「あー、案山子ね。ん?」

「「案山子!?」」


メリーちゃんが見つけた案山子は、日本でよく見るヘノヘノモヘジの案山子だった。

どうして、あの案山子がこんな所に…


「おや?あの案山子に興味がありますか?」


噂をすればなんとやら、ローケンがやって来た。


「ええ。誰が広めたかはわかるから、どうしてここにあるかだけ教えて。」


ヘノヘノモヘジは日本語だから、広めたのは勇者のはず。

わざわざ聞くまでもない。


「あれは、売り物が壊れていたので、今朝持って帰ってきたんですよ。後で処分する予定です。」

「壊れていた?誰かが壊したの?」

「その可能性が高いでしょうが、なにせいつ折れたか分からないので…」


なるほど、現行犯なら捕まえられるけど、誰も見てないんじゃ、監視カメラがないこの世界ではどうしょうもない。

こういった被害は、死活問題なんじゃないかな?


「しっかり見張りをつけていても、こういった被害は起こるんですよ。まったく、困ったものです。」

「被害が続くと、商売にならないものね。頑張ってとしか言えないわ。」


何かしらの原因で商品が売れなくなるのは、かなり厳しいものなのね。

万引きが店に与える被害というのがよく分かる。

だから、『万引きダメ、ゼッタイ!!』って、言われるんだろうね。


「メリーちゃん、朝ごはんは食べた?」

「まだだよ?」

「じゃあ、一緒に食べましょう。」


毒見はサフィーがいれば十分だけど、一応私も一緒に食べたほうが安全だ。

それに、食卓は大勢で囲んだほうが美味しく感じるからね。

二人で食べるより、三人で食べたほうが美味しいはず。


「ビーノお姉ちゃん、あーんして。」

「あらら、まだそんなに甘えたいの?」

「いいじゃないですか。きっと、今は人に甘えたい時期なんですよ。」


…メリーちゃんが甘えん坊になったのって、サフィーのせい?

いや、サフィーも甘えん坊だから、私のせいでもあるのか…

結局、私があーんで食べさせてあげた。

…途中、サフィーが『私もしてほしい』という視線を向けてきたけど、見なかったことにした。


















「メリーちゃん、まだ私達と居たい?」

「うん…」


メリーちゃんは、目に見えて落ち込んでいる。


「そっかー。じゃあ、もう少し一緒に居よっか?」

「うん!!」


一緒に居ると言ってあげれば、表情をぱーっと明るくして喜んでいる。

十五年も会えないという条件は、メリーちゃんには重すぎた。

大人になるまで会えないというのは、私でもかなり厳しい。

まだ、七歳のメリーちゃんには、耐え難いものだろう。


「メリーちゃんは、私達にいつまで一緒にいてほしい?」

「ずーっと一緒に居てほしい!!」

「ずっとは難しいかな〜」


それなら、メリーちゃんを旅に連れて行くくらいはしないといけない。

そして、これから向かう先は、紛争の絶えない『大帝国』跡の、少国家群。

そんな所に、メリーちゃんを連れては行けない。


「ビーノお姉ちゃん…困ってるの?」

「まあ…困ってるね。」

「私のせい…?」

「…」


メリーちゃんが、心配そうに聞いてきた。

自分のせいで、周りの人に迷惑がかかるのは、子供ながらにわかっているんだろう。

でも、


「メリーちゃんは悪くないわよ。これからについて、ちょっと考え事をしてただけよ。」

「ほんとに?」

「ホントだよ。だから、心配しないで。」


メリーちゃんを悲しませる訳にはいかない。

それなら、ちょっとくらいは嘘をついてもいいだろう。


「そうだ!サフィーとリン姉を呼んで、四人で街の外に遊びに行かない?」

「え?いいの!?」

「私が守ってあげるから大丈夫だよ。」


メリーちゃんが、街の外に出る機会は滅多にない。

それこそ、片手で数えられるくらいしか外に出てないだろう。

それなら、私達が外に連れて行ってあげよう。


「それじゃあ、サフィーとリン姉を呼びに行きましょうか。」

「うん!行く!!」


私は、嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねるメリーちゃんと手を繋いで、二人の居る部屋に向かう。


「お外に行くのは久しぶり?」

「うん!だって、この前ビーノお姉ちゃんと出合った時が初めてだったもん!!」

「そうなんだ…じゃあ、私が楽しい場所に連れて行ってあげるね。楽しみにしててね?」

「うん!すっごく楽しみ!!」


私は、一気に元気になったメリーちゃんと一緒に、二人を呼びに行った。



















「ゴワゴワ〜」

「これが無いと、わる〜い人に捕まっちゃうから、ちゃんと着ててね?」

「あと、絶対私達の誰かと手を繋いでおいてね?迷子になったら大変だよ?」


メリーちゃんには、ローケンに用意してもらったフード付きの外套を着せている。

着心地は良くないけど、姿を隠すにはこれが一番いいからね。

それに、私達の外套と生地が同じだから、お揃いの物を着ている。


「ビーノお姉ちゃん、私早くお外に行きたい。」

「わかってるよ。しっかりフードを被って、顔が見えないようにしてね?」

「うん!」


フード付きの外套を選んだ理由は2つ。

一つは、少しでも刺客の目をそらすため。

もう一つは、ヘリスに見つからないようにするため。

この外出は、ヘリスになにも言っていない。

つまり、お忍びで遊びに出ているのだ。

バレたらまずい。

だから、フード付きの外套を着て、その2つから見つからないようにしてるのだ。

そして、しばらく歩いた頃。


「ビーノお姉ちゃん…私疲れた。」

「そう?じゃあ、抱っこして連れて行ってあげるね。」


私は、メリーちゃんを抱きかかえて、リン姉を先に行かせてから歩き出す。

万が一、刺客に襲撃された時に備えて、前を守れるようにしているのだ。


「姉様、後をつけてきている奴がいますが…」

「街を出てもついてくるようなら、そこで始末するわよ。」

「悪い人をやっつけるの?」

「違うよ。メリーちゃんを守るために、悪い人に近付くなって言うんだよ。」


やることは、脅して情報を引き出した後に殺すだけだから、メリーちゃんの言っている事は間違ってない。

でも、それをそのまま伝えるのは、教育上よろしくない。

だから、あえて優しく教えているのだ。


「ねえ、ビーノお姉ちゃん。どうして悪い人は私を狙うの?」

「それはね、メリーちゃんを人質にして、ヘリスを…お父さんを倒そうとしてるからだよ。」

「人質?」

「そう。言うこと聞かないと、メリーちゃんに酷いことするぞ、ってことよ。だから、そうならないために私達がメリーちゃんを守ってるのよ。」


メリーちゃんには難しい話だろうけど、知っておいた方がいい事だ。


「私、悪い人に捕まったらどうなるの?」

「う〜ん…痛くて、怖くて、もう嫌だってなるような、酷いことをされるのよ。」

「ひぃ…」

「だから、外に出るときは私達から離れないでね?」

「うん!私、お姉ちゃん達から絶対離れない!!」


まあ、今は私が抱っこしてるから、誘拐しょうがないけどね。

それからしばらく歩いた後、私達は最後の門まで来ていた。


「どうしますか?絶対メリーちゃんバレますよね?」

「う〜ん…何処かに隠す?」

「きっと、その中身も検問されると思いますけど?」


そうか…

箱の中に隠れて脱出!…なんて、ラノベでよくある展開は無いらしい。

私の顔を立ててもらう…いや、私がメリーちゃんを守ってる事は知れ渡ってるから、そんな中で小さい子を連れてきたら、真っ先に疑われる。


「私が『武装』で隠れながら外に連れて行こうか?」

「それだ!!」


リン姉の『武装』の特性で突破する。

かなり荒業だけど、それが一番いい。

私は、リン姉にメリーちゃんを預ける。

すると、リン姉は『武装』を発動して気配を消す。


「じゃあ、よろしくね。」

「任せて。メリーちゃん、ジャンプするから、口をしっかり閉じて、舌を噛まないように気を付けてね?」

「うん!わかった!!」


メリーちゃんが口を閉じると、リン姉は思いっきりジャンプした。

ジャンプ一回で飛び越えられるほど、この壁は低くないけど、リン姉壁につま先を引っ掛けて登っている。

『武装』の補正があるとは言え、一体どういう脚力してるんだろうか?

…私が言えたことじゃないけど。


「じゃあ、私達も行こっか。」

「そうですね。今は列も無さそうですし、早めに行ってしまいましょう。」


リン姉とメリーちゃんが不正に抜け出す中、私達は普通に正規ルートで街を出た。




「ビーノお姉ちゃーん!!」


二人が居るであろう場所に行くと、メリーちゃんが走ってきた。

その時、


「っ!?危い!!」


壁の上から殺気を感じて、私は最速でメリーちゃんを守りに入る。

そして、結界を張ると、メリーちゃんの頭がある直線上に、一本のナイフが突き刺さった。


「リン姉!!」

「わかってる!!」


リン姉は、私以上の速度を出して壁を登り、あっという間に刺客どの距離を詰める。

そして、胸ぐらを掴んで、こっちへ放り投げてきた。


「あー…サフィー。」

「はーい」


刺客が地面に激突する前に、サフィーが光の縄で拘束する。

というか、空中に固定する。


「これでいいですか?」

「ええ。それじゃあ、メリーちゃんを任せるわ。私はあいつから事情を聞いてくる。」


私は、メリーちゃんをサフィーに預けて、刺客へと近づく。


「どう?標的を殺そうとしたら失敗して、危うく死にかけた気分は。」

「最悪だよ。毒を飲んで死のうと思ったら、いつの間にか毒がなくなってるし。」

「拘束された時の衝撃で取れたんじゃないの?」


なんとも運の悪い奴だ。

でも、返答次第では殺さない、って選択肢もありだけど。


「正直に答えて、この仕事を辞めるなら逃してあげてもいいよ?」

「そうなのか?じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおう。」


そして、刺客はびっくりするほどペラペラ喋ってくれた。

雇い主、主犯、標的、協力者の実力。

何から何まで話してくれたおかげで、いい情報を沢山得られた。


「ありがとう。妹に拘束を解くように言うから、ちょっと待ってて。」


私は、刺客から離れて、サフィーの方へ向かう。


「拘束を解いてあげて、もうあいつから聞き出すことはない。」

「いいのですか?」

「念の為、結界は張ったままにしておいて。あいつことは、放置でいいわ。」


私がそう言うと、サフィーは首を傾げながら、拘束を解いた。


「自由だぁーーーー!!!!」


…凄い叫び声が聞こえたけど気にしない。

そして、私が呼び止める間もなく刺客は走っていった。


「大丈夫ですかね?」

「まあ、放置でいいでしょ?」

「あの程度なら、容易く返り討ちに出来るからね。私が最速でシメるわ。」


この様子なら、気にする必要もなさそうね。

さてと、


「じゃあ、日帰りの冒険を始めましょうか。」


私がそう言うと、メリーちゃんは目を輝かせて、ぴょんぴょん跳ねていた。



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