侯爵家と再会…のはずが
昼食中
「サフィーお姉ちゃーん!!」
「メリーちゃん!?」
楽しくお昼ごはんを食べていると、突然メリーちゃんが押し掛けてきた。
見ると、後ろにはヘリスと、その使用人達もいる。
侯爵様が、わざわざ来るなんて、余程のことだと思うんだけど…
「どうしたの?メリーちゃん。」
「サフィーお姉ちゃんと一緒に、お昼ごはんを食べたかったの!!」
「そうなんだ〜。じゃあ、一緒に食べましょう。」
すると、使用人が出てきて、いくつものバケットを持ってくる。
貴族のピクニックって、こんな感じなんだろうな〜
そして、中から美味しそうなサンドイッチが出てきた。
「サフィーお姉ちゃんも食べる?」
「じゃあ、一つもらおうかな?」
サフィーがサンドイッチに手を伸ばし時、私は嫌な予感がした。
しかし、そのままサフィーは、サンドイッチを食べる。
そして、
「…」
「どうしたの?」
「メリーちゃん、このサンドイッチは、私がいいって言うまで、食べちゃ駄目だからね?」
「うん」
そして、サフィーは私の方へやって来た。
「姉様。あのサンドイッチには、毒が盛られてます。」
「なるほどね。私の嫌な予感は当たってたのか…」
ヘリスが毒を盛るとは思えない。
なら、外部の人間か…
「取り敢えず、蜂蜜をあげるから、それで別のパンを食べさせてあげて。」
「わかりました。」
私は、サフィーに蜂蜜を渡すと、ヘリスの元へ向かう。
そこには、ヘリスの奥さんもいた。
「あのサンドイッチに、毒が盛られていたらしいの。心当たりは?」
「なっ!?それは本当なのか!?」
「ええ、サフィーが食べて確認してる。それで、心当たりは?」
ヘリスは、少し考えたあと、
「例の子爵を覚えているか?」
「ゲスノ子爵?」
「そいつだ。それの息子が、子爵を殺したのは私だとほざいているんだ。」
「親子そろって救えないわね。」
ゲスの子供はバカか…あの家計は終わってるな。
そのうち、大失敗をして処刑されそう。
「そいつが、刺客を送ってきたと?」
「可能性としてはな。」
「親子二代で邪魔してくるとは…私が粛清してこようか?」
「いや、大丈夫だ。この話は、どうもきな臭い。」
まだ裏があるのかよ…
やっぱり、権力の世界は魑魅魍魎だね。
「どうも、あのバカがそんなことを言うとは思えないんだ。」
「どういうこと?」
「あいつは、周りから言われないと、行動出来ないタイプだ。自分で考えて、こんなことをするとは思えない。」
「…第三者の、要は他の貴族の介入があると?」
「ああ」
なるほどね。
あのバカは、他のゲスやクズに利用されてるだけか…
となると、殺してもトカゲの尻尾切りになるだけ、本体に影響はない。
「候補としては?」
「王族派の中堅辺りだろう。命令を出したのは大貴族かも知れないが、細かいことはやっていないだろう。」
「自分に被害が来ないように、うまくやってるのね。…はぁ、せっかくの再会なのに、嫌な雰囲気になったわね。」
二、三ヶ月ぶりの再会なのに、また貴族の面倒事に巻き込まれた。
これだから、人間の権力者は嫌なんだよ。
「そうだな。すまない、こんな事になってしまって。」
「いいわよ。それよりも、まずは自分と家族を守る事を優先して。」
「ありがとう、家族には毒耐性を付与する魔導具をもたせるようにしておく。」
「それがいいわね。実行犯探しは、そっちでやっておいて、私は覗き魔を拷も…潰してくるから。」
ヘリスや、周りの人が引きつった顔をしている事は、気にしないでおく。
私は、覗き魔がまだ同じ場所に居ることを確認すると、その場所に向かった。
「あれが、この街の英雄か…毒が効かないのは厄介だな。」
俺は、望遠鏡で侯爵の動向を監視していた。
そして、少し目を離した隙きに、侯爵と話していた女がいない事に気付いた。
「あいつは…何処に行った?」
宿の近くを探してみるが見当たらない。
少し離れたところにも見当たらない。
本当に何処にいった?
「死角にでも入ったか?」
「ええ、その可能性が高いわね。」
「だろうな、ここから見えないということは、そうだろ…は?」
俺は、聞こえるはずのない声が聞こえたことに驚き、振り返る。
そこには、さっきまで侯爵と話していた女がいた。
確か、『焔の戦乙女』とか言ったはず。
「私に八つ裂きにされるか、丸焼きにされるか、どっちがいい?」
「選択肢はそれだけなのか?」
俺は、腰からナイフを抜くと、女の首に…
「馬鹿な…」
この攻撃は、数々の猛者を屠ってきた技だ。
にもかかわらず、やすやすと止められた。
英雄と言われるだけはある。
「知ってる?舌を噛んでも死ねないのよ?」
「だからどうした?」
なら、毒を飲めば…
「毒を飲んでも、お前が毒で死ぬより前に、私が妹の元に連れて行って、解毒するから意味ないよ?」
「…俺に、どうしてほしい?」
すると、女はニヤリと笑って、
「大人しくついてきて、私の質問にちゃんと答えてくれるなら、別に貴方に用事はないよ。」
「ほしいのは情報だけか…」
「まあ、貴方の身柄をどうするかは、ヘリスに任せるけど。」
それは…結局捕まるんじゃ?
なら、
「うん?」
「なっ!?」
不意打ちをしたつもりだった。
しかし、またもや回避されてしまった。
なんなんだこいつは…
「それだけ暴れれば、十分でしょ?」
「何を、ぐふっ!?」
女の右腕がブレたと思ったら、俺の鳩尾にとんでもない衝撃が走った。
鳩尾を殴られた。
それを自覚した直後、俺の意識は闇に落ちた。
「そいつが、ビーノの言ってた覗き魔?」
「そうだよリン姉。まだ気絶してるけど、拘束はしてあるし、奥歯にある毒薬も取っておいた。」
「どうしてこいつは、すぐに自害しなかったの?」
「私のブラフが効いたんだよ。自害は対策済みだってね。」
偶然だっけど、あいつは私の実力を過大評価してくれた。
あいつは自分の力に自信があったらしい。
しかし、それをいともたやすく抑え、余裕の表情をしている私を見て、相当な実力者だと錯覚したらしい。
それに、この街で英雄と呼ばれていることから、その称号も奴を錯覚させる要因になっていただろう。
「こいつの敗因は、疑い過ぎ。疑心暗鬼は身を滅ぼすわね。」
「時には信じることも重要そうね。」
「それで、こいつはどうするんだ?」
ヘリスが、覗き魔の処遇を聞いてきた。
「私も聞きたいことがあるから、色々と尋問したあと、貴方にあげるわ。生かすも殺すも好きにして。」
「そうか。私も聞きたいことがあるから、廃人にはしないでくれよ?」
「どうでしょうね?こいつがなかなか口を割らなかったら、ほぼ廃人の状態になってるかもね。」
忠誠心の強いやつは、なかなか口を割らない。
程よく絶望させる必要がある。
それって、結構難しい。
「取り敢えず、こいつが起きないことには、話が進まないから、先に昼食にしましょう。」
「そうだな。その前に、私達の用意した昼食にどこまで毒が含まれているか、確認だな。」
そして、持ってきていたバケットを全て開いて中身の確認を始めた。
私とリン姉も協力してあげる。
そのほうが早く終わるからね。
「どうやら、毒が入っているのは、あのバケットだけのようだな。」
「どうして全部のバケットに入れなかったのかしら?」
「絶対に、そのバケットのサンドイッチを食べさせられる自信があったんじゃない?」
適当に言ってみたけど、あのバケットが最初に渡されたことを考えると、あり得ない話じゃない。
だって…
「そうでしょ?そこの使用人さん?」
「…」
私は、顔を真っ青にしている使用人に、声をかける。
使用人は、ビクビクしながら、首を縦に振った。
「刺客として、ヘリスに近付いたわけじゃないでしょ?」
「はい…」
私は、使用人に耳元で、囁くように語りかける。
使用人は、生まれたての子鹿もびっくりなほど、小刻みに震えている。
「お金か…人質か…それとも脅された?」
「お、お金です…」
「そう。じゃあ、ヘリスに許しを請うてみたら?」
こうやって、優しく語りかけてあげれば、相手は脅されてると勘違いして、言うことを聞いてくれる。
…今、これも脅しだって言ったやつ、人肉って豚肉みたいな味がするらしいよ?
私が豚の丸焼き作るから、一緒に食べない?
「こ、侯爵様…わ、私は「もういい」え?」
「もういいと言ったのだ。…ビーノ。」
「はいはい」
私は、ヘリスの動きで、何をしてほしいか察した。
そして、
「首と胴が離れるのと、丸焼きになるの、どっちがいい?」
「ひっ!」
「じゃあ、簡単な首切りでいくね?」
「ま、待ってください!!」
使用人は、青かった顔を白くして、後ずさる。
そして、逃げ出そうとするが、私から逃げられるはずがない。
私は、使用人に足を引っ掛ける。
「きゃっ!?」
そのせいで、使用人は倒れてしまう。
そして、起き上がる前に、背中を踏み付けて動けないようにする。
「さてと、反逆罪として、断首刑に処すとしますか。」
「やめて…」
「最期に言い遺すことは?」
「嫌だ…」
「そう、じゃあさようなら。」
「ーーーッ!!」
使用人は、声にならない悲鳴をあげる。
そして、私の持つ大剣が首に振り下ろされ…なかった。
「え?」
剣は、使用人の首のすぐ横に振り下ろされた。
「反逆者は粛清した。ねえヘリス、本当にこれでいいんだよね?」
「ああ、汚れ役をやらせてすまないな。」
「いいよ。私は、胸張って純真潔白を言えるようなやつじゃないからね。」
手に掛けた人間の数なんて覚えてない。
馬車旅の途中でも、何度か盗賊を皆殺しにしてる。
多分、平気で百は超えてる。
私は、死後地獄に落ちるような奴だ、これくらいの汚れ役、大した事はない。
「え?え?」
「粛清は終わったよ。よかったね、ヘリスが優しい主人で。」
私は、それだけ言うと、サフィー達の方へ向かった。
貴族の面倒事に頭を突っ込むと、この国で生きづらくなるから、後のことはヘリスに任せよう。
「捕まえた!!」
「メリーちゃん!もしかして、甘える方法をサフィーから教わったの?」
「うん!!」
「やっぱりね。とっても可愛いわよ。」
私がメリーちゃんの頭を撫でてあげると、珍しくサフィーが殺意を向けてこなかった。
むしろ、親指を立てて、グッドサインを送っていた。
ほんと、珍しいこともあるものね。
その後、余計なこと考えたことがサフィーにバレて、しっかりお説教されました。




