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交通事故にあった私、蜂になる  作者: カイン・フォーター
古代神殿と遥かなる旅の始まり
124/142

交易都市のギルドにて

冒険者ギルド


「ん?おい!あれ見ろよ!!」

「どうし…あっ!?」

「帰ってきたのか…」


フードをとったのがいけなかったのか、あっという間に気付かれた。

そして、尊敬や畏怖の念があちこちから向けられる。

尊敬は主に私に、畏怖はサフィーに。

まあ、サフィーがやった事を考えると妥当か…


「はぁ…うるさい奴等ですね。」

「やめなさいサフィー。余計なことは、言わないようにしなさいよ?」

「わかってますよ。これでも、私達はこの街の英雄なんですから。理想の英雄像を演じる事くらい、私にだって出来ますよ。」


サフィーは、不満そうに言い返してきた。

サフィーだって馬鹿じゃないし、前世では天才と言われるような頭脳の持ち主だった。

当然、私には遠く及ばないけどね?


「あとで、沢山かまってあげるから怒らないでね?」

「はいはい。姉様はいつもそうやって私を釣ろうとしますよね?」

「…記憶が戻ってから、ずいぶんと生意気になったわね。」

「私は、対等な立場で、姉様と愛し合いたいんです。自分の意見は、はっきり言いますよ?」


自分の意見をはっきり?


「それは、他人にも?」

「…ずるいですよ?」

「ごめんごめん。ちょっと意地悪したかっただけなの。許して?」

「いいですよ?でも、その分たっぷりかまってくださいね?」

「いいよ。いつもみたいに甘えに来なさい。」


イチャついている間に、受付まで来ていた。

私は、気持ちを切り替えて前を向く。


「ようこそ冒険者ギルドへ。早速で申し訳ありませんが、ギルド長が会いたいと言っておりまして…」

「ハーウェイが?別にいいけど?」

「ありがとうございます。では、案内させていただきます。」


私達は、受付嬢に連れられて、ハーウェイの部屋に向かう。

ここを通るのも久しぶりね。

私は、なんだか新鮮な気持ちになりながら、通路を見渡す。

すると、見慣れない絵が飾られていた。


「これは?」

「ああ、その絵ですか?ビーノ様の魔族との戦いを聞いた画家が、様々な人の話を聞きながら描かれた絵です。」

「つまり、私の絵なのね…」


その絵には、顔こそあまり描かれていないが、大量の魔物と、それを引き連れる魔族に立ち向かう私が描かれていた。

なんと言うか…この画家はいったい誰から話を聞いたのやら…

何度も言うが、私は一人で魔物と魔族を相手したわけじゃないからね?


「ご不満ですか?」

「ええ。私は、一人で魔物と魔族を相手したわけじゃないの。私が戦ったのは魔族だけだよ。…多少の魔物は蹴散らしてるかもだけど…」

「そうだったのですか?私はてっきりビーノ様が一人で倒したものだと…」

「私は、そんな化け物みたいな力は持ってないよ。」


不味いな、勘違いがどんどん広まってる。

このままだと、私がとんでもない実力者だと誤解されそう…

…既にされてるか。


「はぁ…」

「大丈夫ですか?」


ため息をつく私を見て、サフィーが心配してくれる。


「ありがとうサフィー。私は大丈夫よ。」

「そうですか?疲れたらいつでも言ってくださいね?」


その時は、サフィーが私のことを甘やかしてくれるだろう。

はぁ…どうせなら、今日一日サフィーに甘えてようかな?

そのためにも、早く用事を終わらせないと!!


「失礼します。ビーノ様達をお連れしました。」

「入ってくれ。」


中からハーウェイの声がする。

受付嬢が、扉を開けて私達に入るよう促してくる。

私を先頭にして部屋の中に入る。


「久しぶりね。二、三ヶ月ぶりかな?」


部屋の中には、ハーフエルフの男性、ハーウェイがいた。


「そうだな。古代神殿には行けたのか?」 

「ええ。とても良い収穫があったわ。」


謎だった私の前世と、妹との再会。

これ以上ないくらいの収穫だ。

…お宝は最後まで見つからなかったけどね?


「自分が何者だったのかわかったのか?」

「ええ。それに、前世で失った愛する妹も見つけたわ。」

「それは…どういうことだ?」


私は、サフィーが、前世の私の妹、菜々の生まれ変わりであることを話した。


「そうか…謎が解けたうえに、妹とも再会出来たのか。」

「そうよ。私の愛する妹は二人とも同じだった。これで、浮気したと二人から殺されることはなくなったわ。」

「もっとも、ビーノ姉様の浮気性は治ってないようですが。」


サフィーに冷たい視線を向けられて、身震いをする。

浮気すると、本当にサフィーに殺されそうだから、絶対しない。

私を殺せなくても、相手を殺しに行く事は確かだ。


「そうか…あー、恋愛事情には触れないでおこう。何が飛び出してくるかわからないからな。」

「そう言えば、最近姉様と喧嘩することが増えました。」

「そうなのか?」

「そうね。サフィーも私やリン姉に対しては、意見を言えるようになったから、それで喧嘩することが増えたのよね。」


意見を言えるようになったけど、自分の意見が一番だと考えてる節があるからね。

否定されると、癇癪を起こしかねないから、やんわり否定してる。

そのせいで、喧嘩になることが増えた。

まあ、私が相手ならすぐに仲直りするし、リン姉が相手でもすぐに忘れて普通に話してる。

だから、そこまで困ってない。


「それは、大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。喧嘩してる時のほうがイチャついてるからね。すぐに仲直りしてるんだよ。」


ハーウェイは、確認を取るようにリン姉の方を見る。


「そうね。お互い無言で顔を合わせないけど、ぴったりくっついてイチャついてるから、すぐに仲直りしてるの。」

「それは…喧嘩なのか?」

「この二人は、喧嘩が出来ない姉妹だからね。喧嘩というよりは、ちょっと怒ってるだけなのよ。」


見ればわかるんだけど、私とサフィーはずーっと一緒にいるから、なかなか喧嘩することがないんだよね。

いつものあれは、喧嘩というよりお互い怒ってるだけで、本気で喧嘩したことはない。


「まあ、元気そうで良かった。」

「そうだ!!あの廊下にあった絵。あれ、いくらで買ったの?」

「廊下の絵?ああ、ビーノの絵か。あれは貰い物だから金は出してないぞ?」

「貰い物?」


あんなに立派な絵が?


「何でも、画家が納得出来なかったらしい。」

「あれで?」

「そうだ。それで、いらないからあげるよと譲り受けてな、それからあそこに飾ってあるんだ。」

「ふ〜ん、あれで納得出来ないのか…」


絵か…私も描こうかな?

前世じゃあ、世界的な名画として飾られる物を、四、五歳から描いてたから、こっちでもできるでしょ?


「それで?要件は何かしら?」

「これを受け取って欲しいんだ。」


そう言ってハーウェイが差し出してきた物は、小さな箱だった。


「開けていいの?」

「ああ、もちろんだ。」


私は、受け取った箱を開いてみる。


「これは…何?」

「知らないか…これは、『ポッポロ』というお菓子で、中にベリーソースが入った、カップケーキみたいな物だ。」

「なるほどね…」

「これは、この辺りでは余り作られていない、『コメ』と呼ばれる穀物の粉を使用しているんだ。」


コメ…米か?

となると、これを作ったのは勇者かな?

にしても、贅沢なことしてるね。

材料は、ベリー、砂糖、米粉、卵辺りは確実に使ってるはず。

そして、砂糖と卵は値段が高い。

更には、米粉はこの辺りでは、稲作がほとんど行われてないだろうから、輸入しないといけない。

となると、また値段が高い。

ベリーは、大した事はないだろうけど、ベリーソースには大量の砂糖が使われてるだろうから、こいつも値段が高い。

つまり、この『ポッポロ』というお菓子、贅沢の塊だ。

ギルマスの財力で手に入れたのか?


「食べていいの?」

「もちろんだ。3人で食べてくれ。」

「そうね、じゃあ3等分するから、ちょっと待っててね。」


私は、空間収納からナイフを取り出して、ポッポロを3等分する。

そして、一口食べてみる。


「うん!!美味しいじゃない!!」

「本当ですね!!」

「思ったより甘さ控えめね。でも、これがいいわね~」

「あー、そうだな…」


ん?

何かあるんだろうか?


「どうしたの?」

「実は、コスト削減のために、砂糖の量を普通の三分の一減らしてるんだ…」

「なるほどね…それで、甘さ控えめなのね。」


でも、私もこれくらいのほうがいいわね。

リン姉も同じみたいだし。

サフィーは…


「私はもっと甘い方がいいです!!」

「もっと?糖尿病になるわよ?」

「トウニョウビョウ?」

「知ってるでしょ?とぼけないの。」

「チッ」 


ふ〜ん?あっそう。

私は、サフィーの手からポッポロを奪い取ると、そのまま食べた。


「なんてことするんですか!?」

「サフィーは、もっと甘い方がいいんでしょ?なら、これは食べなくてもいいわよね?」

「そうですか…」


サフィーは、私のことを殺意のこもった目で、睨みつけている。

すると、私の髪を掴んで引っ張ってきた。


「痛い痛い痛い痛い!!」

「姉様が悪いんですよ!」

「はあ!?サフィーが余計なことを言うからでしょ?責任転嫁しないの!」


リン姉は、私達のことを無視して紅茶を飲んでいるが、ハーウェイはオロオロしている。


「これが…ちょっと怒ってるだけなのか?」

「いや、普通の喧嘩ね。放っておいても、そのうち仲直りするから大丈夫よ。」

「いいのか?結構な大喧嘩だと思うんだが…」

「大丈夫。」


その間、私はサフィーの頬を引っ張っていた。

サフィーは、私の怪力に涙を流しながらも、私の頭に噛み付いてきた。


「いっ!?」

「う〜!!」

「くう〜!馬鹿サフィー!!」

「ぎゃあ!?」


私は、勢い余ってサフィーを突き飛ばしてしまった。

サフィーは、大きな音を立てて頭から倒れ込む。

そして、その先に机があったのだ。


「痛っ!?」


サフィーは、机の角に勢いよく頭をぶつけてしまった。


「サフィー!?」

「痛い…姉様、なんで…」

「ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったの…ごめんなさい…」


サフィーは、頭から血を流していた。

血の気が引くと言うけど、まさにそんな感じだった。


「すぐに治してあげるからね!」

「姉様…」


私は、傷口に回復魔法が掛けようと、サフィーを動かす。


「っ!?」


そして、思わず息を呑んでしまった。

傷口が、予想以上に深かったのだ…

もしかしたら、骨が欠けているかも知れない…


「どうしたの、ですか?」

「なんでもないわ…」

「そうですか…」


私は、慎重に回復魔法を使う。

共鳴は使えない。

もし、共鳴を使えば私の見たものがサフィーにバレてしまう。

知らぬが仏。こんなものをサフィーに見せるわけにはいかない。


「ビーノ…」

「大丈夫。幸い、サフィーに回復魔法を習ったばかりだから。」


つい最近、サフィーがいない状態でも回復魔法を使えるようにと、サフィーから回復魔法を教わっていたのだ。

私は、それ使って治療を進める。


「姉様…凄い汗…」


集中すると、汗が出てくる。

オペを済ませた医者が、汗まみれなのも納得出来る。

緊張で冷や汗が止まらない。


「大丈夫よ。もうほとんど終わっわてるから…」 


噓だ

まだ、3割程度しか終わっていない。

でも、サフィーが弱気にならないのように、励ましてあげる。

すると、リン姉が手を私の手に絡ませてきた。


「手伝ってあげるわ。落ち着いて。」

「ありがとう、リン姉。」


リン姉が、回復魔法の演算をしてくれている。

これで、私は回復魔法を制御するだけでいい。

心做しか、傷の回復が早くなった気がした。


「大丈夫、大丈夫よサフィー。すぐに終わるからね。」


そう、サフィーに言い聞かせているが、それはサフィーへと言うよりは、自分に言っているようだった。

その後、何事もなくサフィーの治療を終えたが、私は、緊張が解けて倒れてしまった。

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