神野
昨日は完成させることができず、更新が遅れてしまいました。
申し訳ありません。
私は、サフィーア。
前世の名前は、神野菜々。
「ただいま、お姉ちゃん。」
「おかえり、菜々。」
私は、一年とちょっとぶりに、お姉ちゃんと再会した。
正確には、ずっと一緒にいたんだけど、これはビーノ姉様だ。
お姉ちゃんとは、ちょっと違う。
だって、私のお姉ちゃんは、今のお姉ちゃん…ルビーノが霞んで見えるほどの天才。
いや、異才の持ち主だった。
私は、常にお姉ちゃんと比べられてきたからよくわかる。
狂気に磨きがかかったものの、前世のお姉ちゃんと比べると、大したことない。
だって、本当にそれくらいお姉ちゃん早い異才…いや、異常だった。
ある、仲睦まじい夫婦の間に、一人の女の子が生まれた。
名前は、神野宝菜。
後に、『魔女』と呼ばれ、畏敬の念を持たられる存在だった。
宝菜は、医学的に異常な速度で成長していった。
生後3日で首が座り、一週間で寝返りが出来るようになった。
10日でつかまり立ちをして、次の日には数歩、歩けるようになった。
成長速度が異常なのは、身体だけではなかった。
2週間で名前を呼ぶとすぐに振り返るようになった。
一ヶ月、そこで少し喋れるようになり、生後2ヶ月で簡単な会話が出来るようになった。
『神童』
流石に世界の科学者達が黙っておらず、様々な学者がやってきた。
そして、皆口を揃えて神童と言っていた。
生後一年
身長は、小学一年生くらいまで成長していた。
そして、学者や精神は小学生中学年レベルだった。
…勘違いしないでほしい。
この時宝菜は、まだ生後一年である。
そこから、少しずつ成長が緩やかになっていった。
7歳
小学校に入学するのかと思いきや、なんと中学校に飛び級していた。
肉体的にも、精神的にも、学力的にも中学生の域に達していた。
いや、学力は高校卒業レベルのものがあったらしい。
それも、国内有数の名門校レベルの…
ただ、勘違いしてはいけないのは、この時宝菜は、まだ7歳なのである。
普通なら、ランドセルを背負って、元気よく小学校に行っているはずなのだ。
だが、この時宝菜には、3歳年下の妹、菜々が居た。
妹は4歳で、普通の成長をしていた。
しかし、異才の姉を見てか4歳にして様々な才能の片鱗を見せていた。
例えば、筋力、持久力が同年代の子供に比べて高いこと。
ピアノや絵が上手で、読み書きも出来たこと。
頭が良くて、とても4歳が読むとは思えない内容の本を読んだりと、様々な才能を見せていた。
だが、その程度、宝菜は1歳で全て出来ていた。
それどころか、4歳のときには、鍵盤、木管金管、弦、打、全ての楽器を扱えた。
絵は、ピカソのようにどれも芸術的なものばかりで、何度も展覧会が開かれていた。
読み書き?宝菜は4歳で日本語、英語、中国語の読み書きができ、会話もできた。
その時読んでいた本といえば、物理学や天文学の論文や、専門的な世界史の本、古文などの学者が読むような物を読んでいた。
そして、4歳の頃には、『神の落し子』、『神の生まれ変わり』、『叡智の化身』等と、様々な呼ばれ方をするようになり、国が抱え込むほどだった。
しかし、その反面妹の菜々は冷遇されていた。
当然といえば、当然だ。
菜々も天才と言われる域にいる。
しかし、異常なまでの才能をみせる姉が居るせいで、姉と比較される事になっていった。
そのことは、宝菜も理由ごと気付いていて、一人菜々に優しくしていた。
十歳
国内有数の名門校に推薦で入学した宝菜は、暇を持て余していた。
国内有数の名門校とは言うが、宝菜はその程度中学生の時には習う内容を網羅していた。
それどころか、世界一の大学に主席で合格出来るとも言われていた。
しかし、事件が起こる。
宝菜が誘拐されたのだ。
それを行ったのは中国マフィア。
宝菜を拉致して、中国へ連れて行こうとしていたらしい。
だが、宝菜は一瞬の隙きを突いて、脱走。
その時、マフィアが持っていた銃やナイフを使い、マフィアを皆殺しにしていた。
当然、そのことは世界中で放送されたが、宝菜はまだ十歳。
法律的にも宝菜を罰する事が難しく、国も出来るだけ宝菜を守りたかったのか、罪に問われることはなかった。
十五歳
誘拐騒動を受けて、5年間で世界中の様々な武術をマスターしていった。
特に、日本の武術は全て免許皆伝であり、剣、弓、槍、格闘、全て達人の域だった。
そして、世界の武術を学ぶ際に、様々な言語を学んだことで、宝菜は二十の言語を扱えるようになっていた。
更には、学んだ武術を活かす機会まであった。
妹の菜々が誘拐されたのだ。
しかも、身代金代わりとして、宝菜の身柄を渡せと言ってきたのだ。
相手はアメリカンマフィア。
ライフルまで持っているという重装備で、警察もなかなか手を出せずにいた。
そして、待ちきれなくなった宝菜が、家を飛び出し、博物館のガラスを叩き割ると、飾られていた真剣を取りだし、マフィアの元へ走った。
そこからは、私がよく知っている。
アジトに単騎で乗り込んできた宝菜は、次々とマフィアを袈裟斬りにして、体を真っ二つにしていった。
その時、鬼の形相で怒声を上げながら襲いかかる宝菜を見て、逃げ出すマフィアが続出。
その九割は殺されたが、運良く生き延びたマフィアが自ら警察の元へ行き、このことを世界へ知らせたのだ。
返り血手真っ赤に染まり、鬼の形相で襲いかかる宝菜は世界から、『血濡れの女サムライ』と呼ばれ、絶対に怒らせてはいけない存在となった。
その時、菜々は十二歳で、小学校を卒業する年だった。
元々、菜々も天才であり、自身が冷遇されていること、姉と比較されていること、姉との差を理解していた。
しかし、それでも優しく純粋に愛してくれる姉に、心酔していた。
ちなみに、誘拐されたことを機に、姉に武術を習うが、武に関してはほとんど才能がなかった。
そのため、ちょっとした護身術を学ぶ程度だった。
二十歳
しばらく遊び回ったあと、近くの大学に入学した。
理由は近くにあったから。
ただそれだけだった。
しかし、ここで宝菜人生を大きく狂わせる事が起こる。
妹の菜々がいじめられたのだ。
宝菜が気付いた頃にはもう遅く、菜々は睡眠薬を大量に接種して自殺した。
当然、宝菜はいじめの主犯を殺そうとした。
しかし、国があらかじめ対策していたことで、生徒に被害が出る前に、拘束することが出来た。
そして、精神的に弱っていたとき。
菜々の声を録音したものを聞きながら歩いていたために、赤信号で進んでしまい、トラックにはねられ死亡した。
「宝菜。どうして、こんなのと関わってるの?貴女は人類史で二度と生まれることのない天才と言われてるのよ?こんなのに構ってると、考えが鈍るわよ。」
「こんなの?菜々のこと?一体、何回言ったらわかるのかな?親なら菜々にそんな言い方するなって。」
お姉ちゃんとお母さんがまた喧嘩してる。
お母さんは、私のことを失敗作という。
私は、全てにおいてお姉ちゃんの下位互換だから。
でも、お姉ちゃんは私のことを大切にしてくれてる。
「行こう菜々。こんな人相手する必要はないよ。」
私は、お姉ちゃんの事が大好きだ。
普通なら、私が冷遇される原因である、お姉ちゃんを嫌いになるんだろうね。
でも、私はお姉ちゃんが大好きだ。
私は、誰にも愛されなかった。
お姉ちゃんを除いては…
誰も愛してくれない中で、お姉ちゃんだけは私のことを愛してくれた。
ずっと味方で居てくれた。
困った時はなんでも助けてくれた。
そして、私を守れるように、自分の部屋に私を匿ってくれてる。
そして、いつも私のことを守るように抱きしめて、一緒に寝てくれる。
「菜々。今日は、何が食べたい?」
「ハンバーグが食べたい!」
「じゃあ、二人でファミレスにでも行こう。」
お姉ちゃんは、カードをちらつかせる。
秘密になってるけど、お姉ちゃんは国から大金を貰ってる。
国からすれば、先行投資のつもりなんだろうけど、お姉ちゃんは大きくなったらアメリカに行くらしい。
その時は、私もついてきてほしいんだって。
「そう言えば、今日はテストが返ってくるんだよね?」
「うん。合計点数は、486点だったよ?」
「スゴいじゃない!!自己ベスト更新ね!!」
「でも、お姉ちゃんはいつも五百点だったんでしょ?それに比べて…」
私がネガティブになると、お姉ちゃんが励ましてくれる。
きっと、今日も優しく励ましてくれるはず。
「菜々。誰かと比べるのは、良いことだよ?でもね、比べる相手をしっかり選ばないと、自分のためにならないよ?」
「高すぎてもダメ、低すぎてもダメ?」
「そう。自分に近い人と比べるのよ。理想は、自分よりも少し頭のいい人かな?」
やっぱりお姉ちゃんは優しかった。
でも、今日はいつもと違って、先生みたいなことを言ってる。
お姉ちゃんのこういう話は、覚えておくと良いことがある。
比べる時は、自分よりも少し頭のいい人。
もしかして…
「それって、しっかり足元を確認しろって事?」
「そうよ。目標が高いことはいいことだけど、高すぎて足元の確認を怠っちゃいけないよ?足元って言うのは、自分の身の程のことだから。」
「遠回しに、身の程を弁えろって言ってるんだね。」
そうか…いくら周りよりも優秀でも、人間一人にできることなんてたかが知れてる。
だから、周りの人に協力してもらえるように、自分の身の程を知り、弁えろってことなのだ。
「わかった。私は、人に点数を見せびらかしたりしない!」
「そうね。自慢することは悪いとじゃないけど、人の信用を失いかねないから気を付けるのよ。」
お姉ちゃんは、そう言って私をファミレスに連れて行ってくれた。
思い出した。
私は、神野菜々。
桁外れの天才、神野宝菜の妹。
「菜々。本当に菜々なのよね?」
「違いますよ?」
「え?」
そう、私は菜々じゃない。
「神野菜々は死にました。私は、サフィーアです。ビーノ姉様。」
「菜々…いや、サフィー。」
そう言って、姉様は私のことを抱きしめてくれました。
「良かった、貴女が幸せそうで。」
「はい、今まさに幸せですよ。大好きなお姉ちゃん…ビーノ姉様に心の底から愛してもらえて。」
「そうね。私は、菜々のお姉ちゃん…神野宝菜じゃなくて。サフィーアの姉…ルビーノだもんね。」
どうやら、お姉ちゃんもビーノ姉様として生きるつもりらしい。
私が、菜々ではなくサフィーアとして生きるように。
私は、それだけで幸せだった。
「さて、シトリンちゃん。」
「あっ、はい。」
「暴走しがちな二人を止めるの、頑張ってね?」
「わかりました…ちなみに、私に前世のあれとかは…」
ビーノとサフィーになにかあるなら、私にも…
「ん?前世の記憶?君は普通に生まれてきたから、そんなものないよ?」
「そ、そうですか…」
デスヨネー
知ってました、あの二人が異常なだけで、私は普通なんだって。
…普通ってのもいいことだけどね?
「まあ、私の加護をつけておいてあげるから、それで我慢してね?」
「しますよ。私は、あの二人の姉なので。」
「そうだ!全員に言っておかないといけないことがあったんだよ!!」
蝶の神は、パンッ!っと手を叩いて、ビーノとサフィーを振り返らせる。
「サフィーちゃんは、自分の力について自覚してるかな?」
「?」
「してないみたいだね。」
サフィーには、何か力があるらしい。
「七大罪ってわかる?」
「嫉妬、傲慢、憤怒、怠惰、強欲、色欲、暴食、の事?」
「そうだね。神々の言語だとちょっと違うけど、意味は同じだから、訳したらそうなるね。」
「このままでいいのね?」
「うん。それで、サフィーちゃんにはその大罪の力が宿ってるの。」
サフィーが大罪の力を?
…そもそも、大罪の力って何?
「いい質問だね、シトリンちゃん。大罪の力って言うのは、かつて七柱の大魔神が持っていた力の事だよ。その力は、七つの悪感情から生まれたんだよね。」
「つまり、負の感情が集まって、意志の力が能力になったってこと?」
「そゆこと。」
大魔神が持つほどの能力を生み出すなんて、意志の力というものは侮れない…
「ただ、今は大魔神は居ないし、力も散り散りされて、一箇所に集まらないようになってるの。用は、大罪の力の欠片が、サフィーちゃんの中にあるって事。」
「最初から、そう言っていれば、分かりやすかったんじゃ?」
「そこはまぁ…」
それくらい察しとけって事だろう。
「それで?サフィーの中には何があるの?」
今は、そこが一番知りたい。
「色欲だよ。」
「うん、納得。」
「そんなことだろうと思ったわ。」
「…酷くないですか?」
サフィーにここまで似合う大罪は他に無いだろう。
けど、どうしてそれを言う必要があるのだろうか?
「サフィーちゃんの色欲は、ビーノちゃんの精神を汚染してるんだよね。」
「え?」




