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交通事故にあった私、蜂になる  作者: カイン・フォーター
古代神殿と遥かなる旅の始まり
117/142

古代神殿に向かって

翌朝


「で?結局甘やかしてるじゃない。」


朝からイチャついてる私達を見て、リン姉が呆れている。


「やっぱり、無理に厳しくするよりも、優しく甘やかしながら教えてあげたほうがいいって思ったの。」

「私はビーノ姉様に甘やかしてもらって、ビーノ姉様は私が甘えてくるので、お互い良いことしかないんです。」

「私は苦労しかしないけどね?」


どうやら、この方法でリン姉は損をするらしい。

昨日は絶対無理だとか言ってたのに、いざ辞めたらこの反応。

結局、どうして欲しいんだか…


「ところで、昨日の男は何だったの?」

「あー…今から説明するね。」


私は、魔神教について、リン姉にわかっていることを話た。


「そんなにヤバい連中なのね…」

「それで、昨日のアイツの階級は何だったのですか?」

「おそらく『教祖』」

「なっ!?」


魔神本人なのでは?と言われる程の力を持ち、神に勝ったという伝説があるくらいだ。

関わらないほうがいい。


「本当なんですか?」

「ペンダントの色は赤だったわ。」

「偽物という可能性は?」

「魔神教のペンダントは、偽物を作れないらしいわ。」


『使徒』が作成する特別製の物だから、偽物を使ってると本物の魔神教に粛清されるだろうね。

にしても、どうして『教祖』が下級竜なんかを使役してたんだろう?

上位竜でも簡単に使役出来そうだけど…


「あまり深く考えない方がいっか。」


相手は、魔神教の教祖。

下手に突いて殺されるくらいなら、何もしない方がいい。


「おはようございます。今日も仲が良さそうですね。」


一仕事終えたローケンが帰ってきた。

私達が起きる、ずっと前から仕事に出ていたらしい。

商人も大変だね。


「今日は、古代神殿に向うつもりなんですが…どうしますか?」

「もちろん行くわ。というか、どうしてそこで行かないなんて選択が出てくるの?」

「…外を見てないんですか?」


私は窓の外を覗いてみた。

外は、台風のような大雨だった。


「…どうして、今日行こうと思ったの?」

「ビーノ様が神殿で何を仕出かすか分からないので、人がいなそうな今日にしました。」

「私を何だと思ってるのよ…」


確かに、サフィーに何かあったら自分でも何仕出かすか分からない。

だからって、本人に向かってそれを言うのは失礼極まりないと思うんだけど?


「ビーノ、貴女を連れて行くなら、夜か今日みたいな人が来なそうな時じゃないと…ね?」

「そうですね。もしかしたら、神殿を吹き飛ばすかも知れないじゃないですか…」

「嬢ちゃんなら、それくらいしてもおかしくないな。」

「もしかしなくても、私バカにされてる?」

「「「「別に?」」」」

「絶対ウソね!」


揃いも揃って、私を何だと思ってるのかしら?

それに、神殿を吹き飛ばすって、それもう歩く災害なのよ…

…出来ないこともないかも。


「分かったわ。そこまで言うなら、今日行きましょう。今日!!」

「ビーノ姉様…どうしてそんなに怒ってるのですか?」

「サフィー、貴女気は確かかしら?」


というか、どうして皆してそんな『信じられない』みたいな顔するのよ。

何?私いじめられてるの?


「これ以上すると、ビーノ姉様が拗ねちゃいそうですね。」

「ちょっとサフィー?貴女、悪意があってこんなことしたの?」

「そうですね。」

「分かったわ、じゃあその喧嘩買ってあげる。」


私は、サフィーの頬を引っ張って、ビヨーンと伸ばす。


「痛い痛い痛い痛い!!」

「サフィー、貴女ちょっと太ったんじゃないの?」

「なっ!?酷いじゃないですか!!私のモチモチのほっぺを引っ張っておいて、太ったなんて!!」

「自分でモチモチって言うのね…」


サフィーがポカポカと私の体を殴ってくる。

可愛らしいけど、人外の筋力があるから普通に痛い。


「姉様、また胸が減ったんじゃないですか?」

「はあ!?そんなわけないでしょう?サフィーの勘違いよ!勘違い!!」

「貧乳姉様…」

「だまらっしゃい!!」


…もっと、カロリーの高い物を食べないと、本当に胸が無くなるんじゃ…

いやいやいや!きっと、サフィーの勘違いよ!

…一応、お菓子でも買っておこう。


「サフィー、やっぱり貴女太ったんじゃないの?」

「そうですか。なら運動のためにも、私のサンドバッグになってくださいよ?」

「その程度で痩せるのかしら?」

「痩せますよ。それに、姉様も私に殴られて、貧相な胸も腫れ上がって大きくなるんじゃないですか?」

「私の胸は、貧相じゃないわ。肥満サフィー?」

「痣だらけにしてあげるので、動かないでくださいね?貧乳姉様?」


久しぶりに、マジな喧嘩になるかも知れない。

普段は、癇癪を起こしたサフィーを私が叱って起こるけど、今回は普通に罵り合って喧嘩してるからね。

と言っても、サフィーは私の傍を離れないだろうし、私もサフィーを殴ったりはしない。

ちょっと険悪ムードになるだけで、普段とあんまり変わらない。


「大丈夫でしょうか?」

「そのうち、忘れてイチャつきだすわよ。放っておきましょう。」

「そうですね。」


リン姉やローケンは、もう慣れたらしい。

私達がちょっとしたことで喧嘩するのは、いつものことだからね。

既に、サフィーは私の膝に座ってきてるしね。

私も、視線は外してるけどサフィーの頭を撫でてあげてる。


「この調子なら、明日には仲直りしてそうね。」

「ですね。」


相変わらず、私達は喧嘩の出来ない姉妹らしい。
















正午


「晴れてきましたね。」

「そうね…………出発するとか言わないよね?」

「しましょうか。」

「…泥道の中を?」


旅の中で、雨が降ったことがあった。

その時は、道が泥だらけで、何度もぬかるみに足を取られていた。


「神殿までは舗装されているそうなので、大丈夫だと思いますよ?」

「そう?なら安心ね。」

「姉様〜もう少し右です〜」

「ここね?ふん!!」

「ふあ〜!!」


私は今、暇だったからサフィーにマッサージをしてる。

仲直り?いつの間にかしてたよ?

やっぱり私達は喧嘩の出来ない姉妹だったよ。


「それでは、馬車で待ってますね。」

「私も先に行くわ。ビーノ、早めに終わらせてね?」

「わかってるよ~」


サフィーが満足するまで続けてると、なかなか終わらない気がするから、もう少しだけしたら馬車に行こう。

にしても、やっぱりサフィーの体は贅肉が増えたような…


「姉様、今私が太ったって思いませんでした?」

「え?どうしたの急に。」

「…そうですか、気にしないでください。私の気のせいだったみたいなので。」


あっぶねー!!

やっぱり、サフィーは勘が鋭すぎる。

もはや、テレパシーの領域なのよ…


「ごめんなさい、サフィー。さっき嘘ついたの。」

「ですよね?偉いですよ、ちゃんと正直に話してくれて。」

「許してほしいとは言わないけど、リン姉には言わないでね?」

「そんなことしませんよ。変わりに、後でお仕置きしてあげますね。」


サフィーのお仕置きは、大体私を独占したいがためのものだ。

だって、お仕置きの話をする時は、いつも私が他の人…主に女に色目を使った時だから。

ちょっと、可愛いな〜って思うだけでも、サフィーは怒ってしまう。

その時に、いつもお仕置きと言って、私を独占しようとする。


「今日は、何をすればいいの?」

「ん〜?神殿に着くまで、一回も私を離さないでください。」

「つまり、ずっと抱きしめてあげればいいのね?」

「はい。」


それなら、いつもしてるのに…

確かに、ずっとではないけれど、いつもサフィーを抱きしめてあげてる。

それでも足りないなんて、本当にサフィーは甘えん坊なんだから。


「さて、そろそろリン姉達が待ってるだろうから、行きましょう。」

「わかりました。じゃあ、お姫様抱っこして連れて行ってください。」

「もう始めるのね…」


私は、サフィーを抱きかかえて馬車に向った。

















「あれが…」


ちらほらと、建物の残骸が見え始めた頃、遠くに大きな建物が見えた。

神殿というだけあって、かなり大きい。

見た感じ、五階くらいはありそうだ。


「記録では、五百年以上前から存在しているようですが、あれ程立派な神殿が、いつ、誰に、どのような理由で建てられたのかは不明だそうです。」

「不思議ね。五百年以上前の建物が、こんなに綺麗に残ってるのに、何一つわかっていないなんて…」

「祀られている神が何かすら、わかっていないそうですからね。」


古代神殿が祀る神。

これ程立派な神殿に祀られている神なのだ。

きっと、主神くらいにすごい神か、全ての神を祀っているかだろうね。


「古代神殿では、どんなお宝が見つかっているの?」

「お宝ですか?『四至宝』のことですか?」

「『四至宝』?それは、どんなものなの?」


至宝って、つくくらいだ。

とんでもないお宝なんだろう。


「神々の道具とも言われる、とんでもない力を秘めた、神器だそうです。かつて、勇者召喚によって呼び出された、伝説の工匠でさえ、何一つ模倣することが出来なかったそうです。」

「そんなに…」

「その時、工匠が残した言葉が、『世の中には、人が決して触れていけない領域がある。身の程を弁えぬ愚か者は、そこへ土足で踏み込み、身を滅ぼす事になるだろう。』と。」

「人に、身の程を弁えろと言いたかったのね。」

「それから、至宝を模倣しようとする動きは衰退していきました。」


当然だ。

伝説の工匠がそんなことを言うんだ、触れない方がいい。

しかし、それほどの物か『四至宝』

ますます気になってきたね。


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