ガキに教育
昨日は、とてつもなく忙しく、夜も眠気がMAXで執筆が進みませんでした。
代わりに、今日は二話投稿する予定です。
「ギルマスが行方不明になったらしいですね?」
「え?」
「…もしかして、今回は関わってないんですか?」
「もちろん。…確かにあいつはキモかった。」
フッ、私の演技力も上がってきてるわね。
ただ、ローケンは商人だ。
商人の観察眼舐めちゃいけない。
きっと、すぐにバレると思う。
「となると、ギルドは後任を誰にするかで揉めてるでしょうね。」
「ええ、それはもう。そのせいで、アルベイの取引が出来ないという問題も出てきましたが…」
ギルド内の荒れ具合はとんでもないだろうな〜
だって、
「この街は、アルベイが採れるからいろんな組織や人間が絡んでそうだからね。その利益を狙うカスどもが、醜く争ってるってわけだね。」
麻薬は、金のなる木だ。
一度ハマれば抜け出せず、そういうやつがずーっと買いに来るから、軌道に乗ればずーっと利益が出る。
それに、植物だからよほど乱獲しない限りはなくなるのこともない。
麻薬売買が無くならないのは、簡単に金儲けが出来るから。
「多少粗悪でも、買いたいやつはお金を出すからね。」
「そうですね。質のいい物だと、この小さい一袋で1ルゴの値がつく事もありますよ?」
「その小さいのが、1ルゴ…金貨一枚って、相当ね。」
確かに、あっちの世界でも金1グラムより、コカイン1グラムのほうが高いからね。
医療用大麻が高値になるなら分かるけど、違法薬物である、コカインが金より高いって、人間の醜さがよく分かる。
「あのキモ豚は、アルベイの甘い蜜を啜り続けて、調子に乗ってたんじゃないの?」
「ですね。あの豚は、欲に塗れた人間のクズのような存在でしたから。」
「行方不明って、言ってるけど、絶対死んでるでしょ?」
「でしょうね。あの豚は、恨みを買いすぎてますから。」
うーん、あいつの死因って、『サフィーに汚い視線を向けた。』なんだよね。
商人達の恨みが爆発…とかじゃなくて、私が結構くだらない理由で殺したんだよね〜
でも、大切な妹を守るため〜、って言えば、マシになるか。
「で?この街にはいつまでいるの?」
「明日、アルベイを買い取るので、それまでですね。」
「早ければ明日出発?」
「はい。それと、一つお願いしたいことが…」
森のテント
「護衛?」
「そう。いつもアルベイを買ったあとは、スリとか犯罪組織とか他の商人に狙われるんだって。」
「ガッスさん達に任せればいいじゃないですか。」
「最近、ガッス達でも抑えきれなくなってるらしいの。そこで、感知能力に優れて、実力もある私達に白羽の矢が立ったのよ。」
実質、盗賊退治をしてるようなものだ。
それほどまでに、アルベイというのは金がついてくるというわけだ。
どうせなら、指一本触れさせないくらいにしよう。
「殺しちゃ駄目だけど、殺さないなら好きなようにしていいって。」
「好きなように?拷問の実験台に使ってもいいんですか?」
「いいと思うよ?」
「こんがり焼いても?」
「それくらい許容範囲じゃない?」
う〜ん、二人共殺る気満々な気がするのは、気のせい?
サフィーに関しては、何をする気なんだろうか?
私へ近付くやつが居たときの練習?
もし、そうだったら嬉しいな。
「それはそうと、その“肉”は?」
「これ?私の財布をスろうとしたクソガキ。」
「ごめんなさい…許して…ください。」
生意気だったから、外に連れ出して全身をボコボコに殴っておいた。
「姉様、それを拷問の練習に使ってもいいですか?」
「ひぃ…」
「駄目よ。この子が反省するまで私が面倒を見るの。だから、回復魔法かけてあげて。」
「分かりました。こっちに連れてきてください。」
サフィーは、テントを指さしていた。
私は、ガキをテントに入れて外で待つ。
すると、人を殴ったような音と共に、
「おいクソガキ。姉様に優しくしてもらってるんだから、言うこと聞けよ?それと、姉様は私のものだから、調子乗るなよ?」
ハァ…
一回殴られるだけならマシな方か。
あれくらいで嫉妬するなんて、やっぱりサフィーは愛おしいわね。
そして、治療を終えたサフィーが、ガキを連れて出てきた。
ガキは、恐怖で小刻みに震えてる。
「ありがとうサフィー。」
「これくらい大したことないですよ。」
頭を撫でながら言ってるから、サフィーは満足そうだ。
でも、最後にガキを睨むのは良くないな〜
「ガキ、名前は?」
「…リク」
「そうか…リク、ついてこい。」
私は、リクを呼んでサフィーから離れた。
これくらい遠くまでこれば、着いてきてない限りは聞こえないはず。
「リク、お前に親はいるか?」
「いません、捨てられました。」
「そう、じゃあ問題ないわね。」
孤児か…なら都合がいい。
「世の中とんでもない奴が沢山居る。殺人見たでしょ?」
「サフィーとか言う、あんたの妹か?」
私は、リクに平手打ちをしておいた。
何故かって?
「お前如きが気安くサフィーの名前を呼ぶな。最低でも、『さん』を付けろ。それか『姉さん』な?」
「は、はい。」
「あと、リン姉や私にも『さん』か『姉さん』で呼べよ?わかったか?」
「はい、えっと…」
「ビーノだ。」
「ビーノ姉さん…」
このガキ…リクは、しっかり教育してやらないとろくな大人にならない。
それこそ、マフィアになるかも知れないしね。
「取り敢えず、テントに戻ったらナイフとか剣でも磨いときなさい。」
「え?あっ、はい。」
後は、皿洗いとか…他にやらせることあるかな?
まあ、なんかやらせよ。
「おいリク!!まだ皿洗い終わらないの!?」
「ちょ、ちょっと待ってくださ、ぐはっ!?」
サフィーのヒステリックな声を上げながら、リクを殴り飛ばす。
皿洗いは日替わり制で、今日は、サフィーの担当だ。
「しかも、こんな雑な洗い方して!食器は料理が乗るのよ?これに料理を載せられるの!?」
「ごめんなさ、げふっ!?」
「申し訳ありませんでしょ!?やり直し!!」
サフィーは、皿をリクに投げつけて、ズカズカと私の元に帰ってきた。
「まったく、使えないガキですね。」
サフィーは、リクに聞こえるように、わざと大きな声で愚痴を言う。
「ろくな事をしてこなかったのよ。だから、皿洗いの一つも出来ないの。」
「それに、剣を磨くのも途中だし、やる気あるのかしら?」
私やリン姉も、わざと大きな声で愚痴る。
私達は、教育の為にキツく言ってるけど、サフィーだけはマジだ。
きっと、私に優しくしてもらってるのが気に入らないんだろうね。
「リク!!さっさと皿洗いを終わらせて、剣を磨きなさい!!冒険者にとって、武器は命何だからね!?」
「うるせーな…」
「何か言ったかしら!?」
「なんでもありません。すぐ行きます。」
そして、皿洗いを終えたリクが、剣を磨きに戻ってきた。
「これも、磨いておいて。」
私は、豪華な装飾のされた短刀をリクに渡す。
貴族や王族の短刀かと思ったけど、ローケンに聞いてみたら、違うらしい。
普通に、豪華なだけの短刀らしい。
ローケンは気付かなかったみたいだけど、この短刀は魔法剣だ。
魔法剣は、魔法が付与された剣のこと。
魔剣は、剣そのものが力を持ってる剣のこと。
この短刀には、切れ味を良くする魔法が付与されてる。
売れば、装飾も相まって相当な値段になるだろう。
「私は、昼寝するから、ちゃんと剣を磨いといてね?」
「分かりました。」
「そこは、かしこまりましたって言うのよ。もういいけど。」
サフィーが、何か言おうとしてたけど、その前にお姫様抱っこでテントの中に連れ込んだ。
「どうしてあのガキに優しくするんですか?」
サフィーは、リクに聞こえないように小声で話してきた。
それを見て、私は防音の魔法をかける。
「あの子が、真っ当な人生を歩めるようにするためよ。」
「そこまでしてあげる理由が分かりません。」
「先行投資よ。あの子が、将来立派になったとき、色々頼めるようにね。」
失敗すれば、次に活かせばいい。
どうせ、今日明日だけなんだから、大した損にはならない。
すると、サフィーが絡みつくように抱きついてきた。
「私も一緒に昼寝していいですか?」
「いいわよ?ただ、そうやって絡みつかれると寝づらいから離れてね?」
私達は、三十分ほど昼寝をした。
俺の名前はリク
今、ヤバい姉妹に捕まってる孤児だ。
「剣を磨くときは、もっと丁寧に磨くのよ。」
「はい。」
サフィー姉さんは怖いけど、残りの二人はなんだかんだ優しい。
ビーノ姉さんは、サフィー姉さんの話をすると怖くなるけど、それ以外では基本優しくしてくれる。
リン姉さんは、普通に優しい。
今も、俺を膝の上に乗せて、一緒に剣を磨いてくれてる。
…デカイ2個の果実が頭に当たって興奮する。
「もっと丁寧に。聞こえなかったの?」
「も、申し訳ありません。」
「敬語が上手くなってきたわね。」
「あ、ありがとうございます。」
さっきまでは、無理して厳しくしてくれてたのかな?
俺が、しっかりした奴になるようにって。
ビーノ姉さんも、あえて俺に厳しくしてたのかな?
サフィー姉さん…本心だろうけど。
「あの…」
「ん?」
「俺、まともな人間になれますか?」
聞いてみたかった。
この人達が、俺のために色々してくれてるんだったら、まともな人間になりたい。
「それは、君次第じゃない?」
「俺次第?」
「周りがどんなに支えてくれても、本人が変わりたいと思わなかったら、それはただのお節介だからね。まともな人間になりたいなら、自分が変わりたいって思わないと。」
「自分が、変わりたいと思う…」
「自分を変えられるのは自分だけだよ。他人が出来るのは、機会を作ること。そこで、変わるか変わらないかは、その人次第。」
自分を変えられるのは自分だけ、か…
「どうしたら変われますか?」
「周りの人を見なよ。そして、自分が正しいと思う人の真似をすればいい。それが、一番簡単に変われる方法だよ?」
俺は…変わりたい。
ここで、姉さん達に厳しくされて、自分のやってきた事がどんなことかわかったか気がする。
散々人に迷惑かけて、自分より弱いやつに怒鳴り散らして、何やってんだ俺は…
「ビーノにボコボコされて、どう思ったの?」
「それは…」
「私は怒らない。だから、正直に言って。」
「すげームカついた。でも、それ以上に怖かった。」
自分よりも、圧倒的に強い存在に手を出してしまった。
動けなくなるまで殴られて、体の芯まで痛くて、殺されるんじゃないかって思った。
そして、そのまま森に連れてかれて、そこでリン姉さんとサフィー姉さんに出会った。
「サフィー姉さんって、あれ本心ですよね?」
「そうだね。サフィーは、ビーノに優しくしてもらってる君に、嫉妬してたんだよ。」
「しっと?」
「羨ましかったんだよ。」
…は?
あんなに優しくしてもらってるのに?
ビーノ姉さんは、サフィー姉さんのことをとことん甘やかしてる。
それなのに、まだ羨ましいって…
「サフィーのことは、深く考えない方がいいわよ?あの子は狂ってるから。」
「は、はい。」
「にしても、これなら今日中に開放してもいいかもね。」
「?」
今日中に開放?
なんのことだろう?
取り敢えず、この短刀を磨いとかないと、またサフィー姉さんに怒られる。




