不思議な部屋
「うわっ、焦げ臭いと思ったら…」
サフィーが、散乱した死体を見て、顔を歪める。
その死体のいくつかは、焼け焦げたような異臭を放っており、二人を不快にさせた。
ビーノが近付いて、死体を調べてみる。
「首のない死体ばかりね。首があるのは、逃げ出したような体勢の死体と、あれだけ。」
「魔物のしわざではなさそうですね。明らかに人の手によって殺されてますし。」
「そうね…ん?」
ビーノは、逃げ出したと思われる死体を見て、首を傾げる。
その死体には、稲妻のような跡があったのだ。
ビーノは、その模様に心当たりがあったのだ。
「リヒテンベルク図形?雷でも落ちたのかしら?」
リヒテンベルク図形とは、放電によってできる樹状の図形の事だ。
雷の写真を見ると、いくつも枝分かれしているのが分かるだろう。
それが、リヒテンベルク図形だ。
雷にうたれると、この図形が火傷痕として、体に残る事がある。
ビーノは、それを見つけたのだ。
「でも、雷が発生するような天気じゃないし。それに、見た感じ他の死体にもありそう。となると…」
「となると?」
「リン姉がやったのかな?」
シトリンの持つ槍は、薙刀や偃月刀のような形をしており、槍の中でも斬撃を得意としている。
あれなら、首をはねるのは簡単だろう。
それに、シトリンは雷属性を扱う。
リヒテンベルク図形があることから、シトリンがやったと考えるのが妥当だろう。
「リン姉様が?…確かに納得がいきますね。」
しかし、肝心のシトリンが居ない。
ビーノがその事について触れようとしたとき、
「っ!?」
突然、雷鳴が鳴り響いた。
空を見上げるが、雲を見つける方が難しいくらいのいい天気だ。
この状況で雷が落ちる事は無いだろう。
となると、可能性は一つ。
「リン姉だね。音の方向からして、あっちかな?」
「そうですね、行きましょう。」
シトリンの物と思われる雷鳴が鳴り響いたのだ。
それは、シトリンが雷魔法を使う状況…戦闘をしているという事だろう。
二人は、シトリンのいるであろう方向に走った。
「ば、化け物…」
賊の一人が呟く。
目の前の女は、盗賊達の最強戦力である大男を、瞬きをする程度の時間で殺せる程の化け物だと。
そして、見ればわかる通り、あの女は人間じゃない。
蜂のような翅と触角がそれを物語っていた。
「逃げたら苦しみの中死ぬことになるよ?逃げなかったら、首をはねて、一撃で殺してあげる。」
どちらにしても死ぬ。
ただ、死に方が苦しいか苦しくないかの違いだ。
それなら、後者を選ぶだろうがそうじゃない。
『あなたは死にます。死ぬなら、苦しいか苦しくないか、どっちがいいですか?』って聞かれて、『じゃあ後者で。』と、答えるやつはいない。
普通は、『死にたくない』とか、『何故死ぬことになってるのか』と、答えるはずだ。
つまり、そんな質問をされても返事に困るのだ。
「どうしたの?早く決めてよ。」
「そんなこと言われても…」
「そんなこと言われても?だから何?」
小さく呟いたつもりが、あの女には聞こえていたらしい。
どう反応すればいいか、困っていたとき、
「いたいた。探したよリン姉。」
「こんなところで、人間と戯れて何してるんですか?」
あの女のことを、姉とよぶ女が二人現れた。
つまり、この女の妹だろう。
「苦しんで死ぬか、苦しまずに死ぬか、どっちがいいか聞いてたの。」
「なんですかそれ?そんな面倒くさいことしないで、パパっと殺しちゃえばいいのに。」
「そう?じゃあ、そうしようかな?」
それは、死刑宣告だった。
そして、閃光と雷鳴の後、いつの間にか盗賊全員の首が落ちいてた。
「速いですね。」
「姉妹最速の名は、伊達じゃないって事だね。」
「二人共手伝って!一人で片付けるのは大変なんだからね?」
片付けか…金目のものだけ奪って、燃やすか。
さっきもそうしたしね。
…リン姉が全部持っていったみたいだけど。
「?」
金目のものが無いか探さていると、サフィーが首を傾げていた。
「どうしたの?」
「この鍵は、何なのでしょうか?」
「確かに…ずいぶん豪華ね。」
その鍵は、色は黄金で、持ち手の部分にピンク色の宝石がはめ込まれていたい。
そして、鍵の先はアルファベットの『E』のような形をしていた。
とにかく不思議な鍵だった。
「貴著な物かも知れないし、取っておきましょう。」
「そうですね。高値で売れるといいんですけど…」
金のことしか頭にない、俗物姉妹がここに…
鍵だけで高値で売れるなんて、相当である。
あるとすれば、鍵が純金で出来ていて、宝石も本物だったときだろう。
「ちょっと来てー!」
シトリンが、二人を呼んで手を振っている。
何かあったらしい。
二人が近づいてみると、石で出来た大きな扉があった。
その扉は倒れていて、苔むしていた。
「何でしょう?この扉。」
「さぁ…昔、この当たりにお城でもあったんじゃないの?」
「城があったら、もっと沢山石畳とかレンガが落ちてると思うけど?」
「じゃあ、この扉は何なのよ?」
「…分からない。」
取り敢えず、倒れている扉を立たせることにした。
私は、身体強化も使って、本気で持ち上げる。
かなり重かったけど、持ち上げる事に成功した。
「改めて見ると、大きな扉ね。」
「やっぱり、城とかに使われてそうな扉ね。」
「いくらするんでしょうか?」
私達が真面目に考察する中、サフィーは相変わらずお金の話をしていた。
今は、別にお金の話がしたい訳じゃないから、一旦お金から離れてほしいところ…
「これもしかして、さっきの鍵が使えるんじゃ…」
「さっきの鍵?」
「さっき、やたらと豪華な鍵を拾ったのよ。それが使えるんじゃないかな〜って。」
苔に隠れて、よく見えなかったけど、鍵穴があった。
ここに、さっき拾った鍵を使えるんじゃないかな〜って。
使えたところでって、感じるかも知れない。
ここは、遺跡とかじゃないからね。
扉を開けた先に広がのは、横から回れば見える世界。
扉が開くだけ。
…それだけだ。
「微弱だけど、魔力を感じるの。空間魔法で、何処かの空間へ繋がってるに違いないわ!!」
「ふうん?お宝でもあるの?」
「お宝!?」
うん、後でサフィーには再教育をしておかないと。
このままだと、絶対良くないことになる。
…マルチ商法とかに騙されそうな人に成長しそう。
「さて、入るかな?」
私が、鍵を穴に差し込むと、スッと入っていった。
鍵を右に回すと、カチャリという音がして、何もしていないのにひとりでに扉が開いた。
中には…
「黒い膜?」
「転移するための何かじゃない?」
中には、真っ黒な膜がはられていて、奥が見えなくなっていた。
中に入らないと、何があるか分からないタイプの入口らしい。
何が待ち受けているかは、誰も分からない。
もしかしたら、モンスターハウスになってるかも知れないし、お宝が大量にあるかもしれない。
入ってみなきゃ、分からない。大○学実験
「入りましょう!!」
「うん、サフィー静かにして。じゃないとお説教するよ?」
「むぅ〜」
私に怒られて、サフィーがふぐみたいに頬を膨らませる。
うん、可愛いね。
私が、膨らんだ頬を突付いてみると、サフィーは少しだけ息を吹き掛けてきた。
2回突くと、2回吹き掛けてきた。
なんだか楽しくなって、サフィーと一緒に遊んでると…
「ゴホン!!」
リン姉が、わざとらしく咳払いをして、私を急かす。
私は、サフィーと手を繋いで黒い膜の中に入った。
もちろん、これにも意味があって、これが転移装置的なものなら、転移先が変わるかもしれない。
その時に、離れ離れにならない為に、手を繋いでるのだ。
もちろんリン姉ともつないでるよ?
私は、二人と手を繋いだ状態で中に入った。
「これは…」
無駄に広い、神秘的な空間に飛ばされた。
多分、壁まで数十メートルから、数百メートルはあるだろう。
それくらい、無駄に広い部屋の中心に、一つの祭壇のような台座があった。
そこには、大きな宝石のはめ込まれた腕輪があった。
「強い魔力を感じる…魔導具か…」
「ずいぶんと豪華な魔導具だね。売れば高値で取引されるのだろうね。」
「リン姉までそんなこと言い出して…」
取り敢えず、どんな効果があるか知らないけど、お宝が手に入った事は確かだ。
もっと、ないのかな?




