野宿の日常とシトリンの力
「領主の館の警備兵が、次々と失踪したそうですよ?」
「へえ~?別に興味ないわね。」
「でしょうね。」
流石に噂になってきたか…
こっそり調べてきたけど、やっぱり警戒されていて、警備が厳重になってる。
これは、ほとぼりが冷めるまでは無理かな?
でも、それまでに出発すると思うんだよね〜
「外で寝てるらしいですが、寝心地はどうですか?」
「サフィーが、かまってちゃんになってるから寝られない。」
「そうですか…大変そうですね。」
本当に大変だよ、昼寝してなかったら倒れてた思う。
はぁー、サフィーが可愛すぎてつらい。
ロープかなにかで縛りつけ、人形みたいに可愛がりたい。
それすると、サフィーに仕返しされるからやらないけど。
そういう、一方的に可愛がると、同じ方法で倍返しされるから、簡単に出来ないのよね〜
「さて、話って?」
「答えは分かってますが、タダ働きをしてくれませんか?」
「却下」
「デスヨネー」
この私に、タダ働きをしろだと?
例え国王とかに言われても、やるつもりはないね。
…サフィーの頼みなら引き受けるかな?
「でしたら、サフィー様かリン様に頼むので結構です。」
「よし、二人に引き受けるなって、言ってこよ。」
「本当にやめてください。」
リン姉はともかく、サフィーは引き受けないだろうな〜
サフィーって、結構面倒くさがりだし。
それで、空いた時間に私に甘えに来るっていう。
「で?何するの?」
「簡単なことですよ、魔物を討伐して、その報酬を横流しにしてくれれば…」
「んー?つまり、討伐報酬がほしいってこと?」
「簡単に言えばそうですね。」
金が必要と…例の薬草を買うのに金が少しでも多くほしいとかかな?
麻薬売買の片棒を担ぐようで、なんだかいやね。
まあでも、
「全額じゃないなら、少しくらい協力してあげてもいいよ?」
「ありがとうございます!!」
「出発までの暇つぶしに、魔物を狩り尽くして来るよ。」
せっかくだし、生態系が変わるくらい大量に狩ってやる。
狩猟解禁だ。
「というわけで、モン○ターハ○ターをするわよ。」
「珍しい、ビーノ姉様がそんなことするなんて…」
「明日は、雪でも降るんじゃないの?」
「う〜ん、殴っていい?」
取り敢えず、サフィーは後でくすぐり刑にしょしておこう。
それよりも、他にも言うべき事がある。
「館の襲撃計画だけど、しばらく延期することにしたわ。」
「「え?」」
「相当警戒されてるのよ、流石に火事を起こしても気付かれるかも知れないから、ほとぼりが冷めるまで延期よ、延期。」
ん?サフィーがホッとしてる。
そういえば、サフィーは反対だったもんね。
主に、私に手を汚してほしくないという理由で。
「いつから始める?」
「明日からでいいんじゃない?もう少し休んでからにしましょう。」
「分かったわ。サフィー、ナデナデしてあげるからおいで。」
「は〜い!!」
サフィーが、私の膝の上に乗ってきた。
「フフ、引っ掛かったわね。」
「え?」
「くすぐり刑、執行!!」
「え!?あっ、ちょっと、やん、やめっ!」
「どう?くすぐったい?さっき余計なことを言った罰よ!!」
「ごめんなさい!!謝ります!!許して下さい姉様!!」
逃げようと、必死に体をよじるサフィーを、がっしり掴んでくすぐり続ける。
逃げようとするサフィーの、裏拳やエルボーを何度もくらったけどに、そのたびに更に激しくくすぐってあげた。
最終的に、サフィーが暴れないように、覆いかぶさるようにしてくすぐっていた。
最後は、リン姉の『うるさいのよ!!』でくすぐり刑は終わった。
「ハァ…ハァ…、姉様、覚悟しておいてくださいね?」
「いいわよ。いつでも来なさい。返り討ちにしてあげるから。」
「人前でやらないでね?」
「そこは弁えてるので大丈夫ですよ。」
すると、サフィーが飛びかかる前のような、ポーズをとった。
私も慌てて構える。
しかし、
「姉様〜、今ビビりましたね〜?」
「まさか、ビビってないに決まってるでしょ?」
「へぇ〜?じゃあなんで構えたんですかぁ〜?」
「あれは、警戒しただけよ。決してビビってないわ。」
「本当ですかぁ~?」
ムカつくわね…
私も、サフィーに飛びかかるような構えをとる。
すると、サフィーは慌てたように警戒したような体勢をとる。
「サフィー?今どうして構えたの?」
「気のせいですよ?」
「もしかして、ビビっちゃった?」
「気のせいですね。」
「あらあら、往生際が悪い悪いわよ?」
「うるさいですね!気のせいだって言ってるじゃないですか!!」
「サフィーって、自分が不利になると、怒る癖があるよね?」
「うっ…」
「おやおやおや〜?」
「姉様、ウザいですよ?」
「サフィー、貴女が言えた事じゃないわよ?」
リン姉から、ため息のような音が聞こえてきたような気がするけど、気のせいだよね?
そして、しばらくこんな下らない言い争いをしたせいで、喧嘩になってしまった。
「えーっと?喧嘩してるんだよね?」
「してるよ?」
「してますよ?」
リン姉が、おかしなことを聞いてきた。
「…どうして抱き合ってるの?」
「こうすれば、お互い顔を見ることなく。」
「それでいて、ずっと一緒に居られるからです。」
画期的な体勢でしょ?
こうすれば、喧嘩しながら、ずっと好きだよ?って行動で表せるからね。
キスは出来ないけど、耳に噛みつく事は出来るからね。
愛情表現は出来るよ。
「もう、仲直りしたら?」
「サフィーが、謝ってくれたらね?」
「ビーノ姉様が、謝ってくれたら仲直りします。」
「ハァ…面倒くさっ。」
んん〜、サフィーのいいニオイがするわ〜。
私は、このままの体勢でサフィーの髪の毛を弄る。
すると、サフィーが私の首に噛み付いてきた。
もちろん、甘噛だけどね。
「サフィー、あんまり強く噛まないでね?跡ができて、隠すのが大変だから。」
「姉様もほどほどにしてくださいね?髪がぐちゃぐちゃになるので。」
結局、いつの間にかイチャつき始めて、そのまま仲直りしてた。
翌日
「んー!いい天気ね。」
シトリンが朝日を浴びに外に出てきた。
寝ている間に固まった体をほぐした後、テントに戻った。
「いつまでするつもりなの?もう朝だよ?」
「「もう少しだけ。」」
「ハァ…もう好きなようにして、一人で狩りに行ってくるから。」
二人を放置して、一人で獲物を探しに行くことにした。
「この辺に…この穴かな?」
シトリンは、誰も居ないことを確認すると、ペンダントの効果を切り、触角を使って獲物を探した。
そして、早速獲物を見つけていた。
「結構深いね…掘り起こすのは、難しいかな?」
きっと、うさぎか何かだろう。
それなら、わざわざ掘り起こすまでして、捕まえる必要はない。
もっと、大物を探さないと。
そして、次なる獲物を探して森を歩き始めた。
「ん?この気配、人間か?」
だとしたら、今の姿を見られるのはまずい。
シトリンは慌ててペンダントの力を発動する。
「誰?」
「気づいてたのかよ…まあいい。」
服装、数、態度…賊か。
「今すぐ持ち物全部置いて、回れ右して帰るなら許してあげるよ?」
「ヘヘっ、それは出来ねえな姉ちゃん。大人しくしてれば痛い目見ずに済むぜ?」
「そう…」
シトリンは、空間収納から槍を取り出すと、魔力を練って戦闘態勢を取る。
そして、パチパチと空気中に静電気がいくつも走る。
「十秒で終わらせる。」
その瞬間、雷が落ちたかのような轟音と閃光が走った。
「1…」
賊とシトリンの距離がゼロになり、前にいた5人の首が飛ぶ。
「2…」
返す刃で近くの二人を切り裂き、そのまま槍を腰まで回して次振るために構える。
「3…」
右側から殲滅することを選んだシトリンは、右に飛び、3人の賊の首をはねる。
「4…」
いち早く冷静さを取り戻した賊がいたので、高圧電流で処刑する。
「5…」
右側、前方の殲滅を終え、中間距離の賊の首を全てはねる。
更に、後方の賊の首も幾つかはねる。
「6…」
右側の殲滅を終え、逃げ出そうとした腰抜け二人を、高圧電流で処刑する。
「7…」
左側の賊と距離をゼロにして、近くの二人の首をはねる。
ついでに、遠くの逃げ出そうとした賊を処刑。
「8…」
近くの賊を殲滅すると、槍に電撃を纏わせ飛び上がり、地面に突き立てて周囲に電撃をばら撒く。
「9…」
ラストスパート。電撃で麻痺して動けない賊を一瞬で殲滅し、遠くの賊は電磁加速したナイフで殺す。
ビーノの入れ知恵だ。
「10…」
二人の賊のうち、一人を処刑して、余裕を持ってもうひとりの後ろに回り込み後ろから刺し殺した。
「ちょっきり十秒。…8秒でいけたかも。」
これが、姉妹最速の槍使い、シトリンの力だ。
槍と電撃を巧みに操り、最速で敵を殲滅する。
電撃を使わなければ、加速して斬撃を放っているだけなので、ビーノやサフィーよりも、圧倒的にコスパがいい。
特に、最大速度まで加速したシトリンの突きは、ビーノの全力の斬撃に匹敵する破壊力を持つ。
爆発、電撃を併用すればビーノに軍配が上がるものの、ビーノの馬鹿力を止められる数少ない存在だ。
「こんな雑魚に、十秒も使うなんて…姉妹最速の名が泣くわね。」
奴隷生活と、馬車の長旅の影響で訛っていたらしい。
これでは、ビーノ達と肩を並べて旅ができない。
もっと速くならないと。
一通り死体をあさり終わったシトリンは、立ち上がると、
「こいつらの本拠地を探して、そこから酒代を巻き上げるか。」
お酒に弱いものの、ビーノ達に負けず劣らずの酒好きであるシトリンは、臨時収入を求めて盗賊のアジトを探し始めた。




