file.1宇野 紅羽
自信あります
あの後、祖父の家へ帰ってからとても悩んだ。
なんなんだよ、この町謎すぎかよ、娘といい感じの関係ってなんだよ、あーだめだ考えても頭パンクするだけだわー。
逆に考えるんだ、運動だってそこそこできるのに何故かモテなかった僕を娘たちが必要としてると。・・・なわけないか
お腹が減った。1階に行って何か飯でも食べようかな。いやでも今祖父に見つかったらやばいかもな。とりあえず寝よ。。。
「ふぁー今何時?」
「今13時」
さてとっ背伸びでもしってうわわわわわわわ
眼前目いっぱいにひろがる祖父の顔、気持ち悪いくらいににたぁと笑っている。
「ジャジャーンここでミッション1だ」
「っやっぱりか、そんなもの誰がやるか!!」高反発する。
「ミッション1はー」
僕を無視して続ける祖父の言葉
「今から家の周りの森の中で自分の食料を確保してもらおうか」
はい無理ー僕には無理でーす。いくら体力に自信あっても、初体験でーす。
「とりあえず、家の外に出てみろ」
心の中を読まれたかのように、祖父は僕に迫る。過去2回の経験から抵抗しても無駄だと知っている。
部屋の中にはなぜか僕サイズのオシャレ服があったがそれよりも後ろから感じる祖父の眼差しっ!僕の支度は普段のそれよりかなり早くなっていた。祖父への恐怖心だけではない。心のどこかでは新しいことへの挑戦に飢えていたのかもしれない。
抵抗することを諦め現実を受け入れるしかない。ひな鳥が巣を飛び立つかのように玄関を開け、ぶわっと外へ飛び出す。目の前には雲ひとつ無い晴天と、、
「キャッもっなによー」
「えっえええええぇぇぇ」
大きく1歩踏み出した僕は不覚にも美少女とぶつかってしまう。しかもその声には聞き覚えがある。
「く、紅羽!?」
突然の遭遇に慌てふためくも何とか取り乱さないようにした。
「あ!久しぶり!」
久々に見る紅羽は昔と大して変わってない子供の頃をそのまま大人にした感じだ。少しくぼんだぱっちりお目目、ちっちゃなえくぼ、綺麗な黒髪はうなじが隠れるくらいまでで典型的なスポーツ体型だ。身長は高校生いや中学生に間違われても仕方ないほど当時のままで145くらいだろうか。ただ、あの時と違うのは、少し色っぽくなったのと元気がない事だ。
「そっちは楽しかった?」
「え、ああうんん、友達も面白いやつらばっかりで毎日が楽しいよ」
「へえ」
えぇー俺変なこと言ったかなぁ
紅羽に生気はなく、じとっとした声で、こっちまで影響される。
「お前ら湿気てんなぁ」
祖父が苛立ちの声をあげる。
「さて、では2人の今晩の食料を協力して取ってこい。制限時間は3時間、それを超えた場合はミッション失敗とみなし2人ともこの町を永久追放だ!!では始め!!」
「「!!!???」」
2人して顔をしかめる、そもそも紅羽はこの儀式のことなんて聞いてないのか、目がクルクルと、回っている。
「何してるんだ始めろ!」
祖父に急かされ僕らは訳も分からないまま森の中へ突っ走ってしまった。
祖父のミッションに疑問を抱えながらも、これから始まるであろう2人きりの時間に興奮していた。
森を横並びで歩いている僕らに沈黙が駆け巡る。とても気まずい、紅羽の雰囲気が暗すぎる。
「あのさぁ、私やっぱり子供っぽい?」
「は、はい?」
沈黙を破ったのは紅羽の意外な質問だった。
「だからぁ、わたしこどもっぽい?」
「い、いやーそんなことないよ」
とりあえず言葉を取り繕う
「あ、嘘ついたね、昔から嘘ついた時目が上向いてたもん」
そんなこと今まで気づかなかった。
たしかに紅羽は昔から観察眼に優れていた。昔森の中で遊んでいた時も、虫の動きの予想が大事うんちゃらって言って沢山捕まえまくってた。
「私さあ、バイト先でね、子供っぽいからって理由で客にも舐められているしバイト仲間からは『子供にはこんな仕事無理だから早くママの元へ帰ったら』なんてバカにされてて」
そんなことがあったのか、俺が毎日大学でバカやってる間に。
「そういえば、ミッションってなんなの?」
「あーそれは・・・」
カサカサ
「とう!ゲヘヘェ」
突如俺たちの目の前に現れた太眉高身長な女、いや男か、とてもおネエ風なメイクをし服にはどてかくとYOSHIKIと書いてあり、某JAPANを意識したような長髪だ。
「だだだだだだだれなんですかあ、あなたたたた」
紅羽が声にならない声を小刻みに震えているからだから絞り出してる。
「私はYOSHIKIよ」
「いいから逃げるぞ!」
俺は無我夢中に紅羽の手を握りしめ林の中へ入る。後ろから叫び声が聞こえたが、振り返らずに走り続けた。
けっこう走って気づいたことがある。握っている手がゴツゴツしているんだ。
ごくり…
「ね、ねぇ紅羽ちゃん?」
嫌な汗が止まらない。お願い可愛らしい声を聞かせて
「いやぁねぇわたしはYOSHIKIよん」
図太い声に思わず後ろを振り向く。
「うわあああああああ」
思わず逃げ、れない
相当の怪力でガッチリと両腕を掴まれた。恐怖に顔を歪ませ、全身をブルブル震わす。
「あら!あなたなかなか可愛い顔ねぇ」
そう言うと彼の手が俺の口をこじ開け、彼の長い舌が俺の唇をペロペロしてこようとする。
「俺の初めでがごんな人なんてぇぇぇぇぇ」
「いくわよぉぉぉぉ」
涙で視界がぼやけてきた。あぁもうダメだ。。
ドスッ
鈍い音がしたので、恐る恐る目を開けてみる。
そこに居たのは、
「はぁ、はぁ大丈夫か」
そう声をかけてくる人。涙拭くと顔を真っ赤にして息を切らしている紅羽がいた。
そして眼下には股間を抑え膝立ちの状態で顔を地面突っ伏し悶えているYOSHIKIがいた。あーうん。なるほどね。
「ま、ままさかキキキキキキキススなんてしてないよね」
「うん、してないよぉぉぉ」
してないと信じたい、この唇が濡れているのは自分の涙だと。
「はぁ良かった」
「んんん?」
最後はよく聞こえなかった。
モゾモゾモゾモゾ
「「「は!!」」」
2人してこいつの方へ身構える。
「ま、待ってくれ!」
そう言うと、片脚をまっすぐ伸ばしてこちらに体を向けた。さらに自分の手をお尻と胸にあてた。そうまるで生存本能がむき出しになった雌のように無害を主張してきた。
俺と紅羽は顔を見合わせ話を聞くことにした。
「ま、まず、話を聞いてちょうだい。私は、ただあなたのぉ、お、お、おじいさんに会いたいだけなのぉ」
・・・ほ?
その後なんだかんだあって、家の前に着いた。帰路では、警戒しながらも自己紹介をし合った。彼の名前は清水ディラー。年齢は非公開らしいが40歳前後の風貌で、あるホスト店のオーナーらしい。ちなみに紅羽が姓別を聞いたら、いきなり俺の手を掴んで自分の胸に押し当ていやぁんとかいきなり叫びやがったこいつ。ただの硬い大胸筋だったが、紅羽が後ろの方でぷるぷる震えながら俺を睨んでいたのはひしひしと感じられた。
「意外と早かったじゃないかってん?んん?2人の後ろにいるのはもしかして…」
「久しぶりです。ディラーです。」
急に真面目トーンになりびびる。
「お、おぉ!」
2人はやはり知り合いのようで、さっき聞いた話では2人は切っても切れない深い関係らしい。
「2人とも中で風呂にでも入って待ってろ。今日はご馳走を作ってやるぞ」
そう言うと祖父は俺たちの背中を後ろから押し家の中へ半ば強引に押し込んだ。
風呂から出て食卓に向かうと、紅葉は傍にちょこんと座り、祖父とディラーさんは食事しながら話をしている。四脚の長テーブルにたくさん並んだ食事に飛び込むように席に着く。
「うちお店の恒例のイベントがピンチなんですよおぉぉ」
「景品ってあれか、えーっと確かクレーンゲームの」
「はいい、特別メニューを頼んだお客様に建物内のお好きなクレーンゲームの商品を次回来たときにお渡しするというものです」
どうやらディラーさんのお店は複合型施設となっているらしい。それよりどういうコンセプトのお店なのかとても気になるな。なんだホストとクレーンゲームって、ターゲット違いすぎるだろ。
「それがどうかしたのか?」
「実は、今朝クレーンゲーム部隊が事故ってしまって。幸い命に別状はないですけど、仕事に復帰するまでに1カ月かかってしまうんです。。」
「はぁーなるほど。それで?」
「お、お願いします!お孫さんを私にください!!」
「ゴボッゴホッ」
ネタはまだまだあります