まず腹ごなし。
朝食は人間に戻ったテオさんと取る。
シュウって音がして人間に戻るのは、何度見ても面白い。
「いいなぁ〜〜、私も魔法使ってみたい!魔力とかあります?」
「ちゃんと計測しないとだな・・」
「計測・・・。意外と化学的だ」
小さく笑ったテオさんと朝食がのったトレイを持って、空いているテーブルを探すと、窓際が空いていたので一緒に座る。お皿には野菜と肉団子がゴロゴロ入ったスープとパンが乗っている。最高じゃない?
「・・・美味しそう〜・・いただきます!」
「・・いただき・・?」
「私の国の言葉で、命をもらいますとか、準備してくれた事を感謝する挨拶なんです。これだけはちゃんと言いなさいって、教えてもらったんです」
・・最後に私を面倒を見てくれたのは、遠縁も遠縁のおばあちゃんだった・・。人間らしい扱いも、教育もされたのも、おばあちゃんが初めてだった。その後の親戚とやらに、めっちゃひどい目に遭わされたけど。
おばあちゃんの言葉だけは聞くようにしてる。
手を合わせてから、スプーンでスープを掬って食べる。
うぁあああ、美味しい・・。
「うぅ、美味しくて泣けます・・・」
「そうか、味わって食べろ」
「は〜い」
美味しいなぁ・・、もぐもぐ食べていると、こっちを通る人や、座ってる人がチラチラ見ては、視線をすぐ逸らす。何・・?なんかあった?私は周りをキョロキョロ見回す。
・・・何もないよね・・。あ、もしかして・・?私が考え込んでいると、テオさんの顔が暗い事に気付く。
「・・・テオさん、どうかしました?」
「いや、その・・すまない・・私のせいで見られて・・」
「あー!テオさん、綺麗だから、注目されちゃうんですね」
わかります、わかります。私はうなずいて、テオさんの窓から溢れる光と一緒に光る金髪と、綺麗な瞳を見る。綺麗だなぁ・・、天使とか言われても納得しちゃうんじゃない?
「・・・うーん・・・やっぱりお日様かなあ・・。月だともったいないですね」
私がそういうと、テオさんは目を丸くする。
クスクスと笑う声が聞こえるので、そちらを振り向くとジスさんが立っていた。
「おはよう〜。朝から楽しそうだね〜」
「おはようございます!そう見えます?」
「うん!一緒に食べていい?」
「あ、はい」
そういうと、ジスさんは私の隣へ座ろうとする。あ、もうちょっとずれて・・
「ジス・・・、こっちだ」
テオさんの低い声が、自分のテーブルの横をコツコツと叩く。
「ちぇ〜、女の子の隣がよかったのに〜」
ああ・・・、なるほど・・。こんな感じなんですね・・。ありがとうテオさん。
テオさんをチラッと見て小さく笑うと、テオさんもちょっとだけ笑ってくれた。
「そうだテオさん〜、昨日魔法薬作ってもらったばかりなんですけど、あれと種類別で欲しいのあるんです。あと遠征も近いから、鉱石と魔石も欲しいし」
「・・仕事の話を食堂でするな・・。機密事項だってあるだろうに」
「これくらいなら大丈夫ですよ〜。皆知ってますし」
ジスさんは悪びれる事なく、にっこり笑う。・・結構、素敵な性格をしてらっしゃるようで。
「あとで執務室へ顔を出す。それでいいか?」
「は〜い、お願いしますね」
喋りつつ、すごい勢いで食べてあっという間に完食してしまったジスさん・・。は、早い。私も早く食べよう。
「・・ヨルは、ゆっくりでいい、ジスは職業病みたいなもんだ」
「そうなんですよね〜。早く食べ終えないと、敵襲が来るぞ〜みたいな?味わって食べられないんです」
「あ、ああ〜・・・それはちょっと切ないですね」
「まぁ、仕事も山ほどありますしね・・」
ジスさんの笑顔が、なんだか切ない・・。
副団長さんって大変なんだな。
「じゃあ、お先に失礼しますね〜。お日様〜」
そうジスさんが言って立ち去っていくと、テオさんは両手で顔を覆ってしまった。低い声でジス・・と呟きつつ。




