神力騒動。
それから何日かが過ぎ、小春日和!のような日・・。
「今日はあったかいね〜」
「もう少しで春だな・・」
テオさんは、春になったら結婚式だね!とばかりに笑顔で言うものだから、私は作っている魔法薬を失敗しそうになる。・・・そういうの突然やめて欲しい・・・。
「そ、そうですね・・・」
ちょっと顔が赤いのはわかってる。
もう結婚したけど、まぁ、イチャイチャとかしてるけども。
まだ慣れない、全然慣れないのだ。
そんな事を思っていると、背中がホワッと暖かくなる。
・・?お日様でも当たってる??
でも、こっちは部屋の方だし・・、そう思って、後ろを振り返ると、部屋の中央に金色の光の塊が突然現れた。
「え?な、なに??!」
「ヨル!!」
テオさんが慌ててこちらへ駆け寄った瞬間、光の塊は強い光を発して、私は咄嗟に目をつむる。
『貴方がヨルさんですね・・』
どこか凛とした声が聞こえて、そぉっと目を開けると、金色に輝く鳥が翼を動かしながらこちらを見ている。あ、この鳥ってもしかして、魔の力の黒豹が言ってた・・怪我した鳥・・?
『その通りです』
え、考えてることがわかるの?!
テオさんは、私を後ろにして鳥を警戒しているけれど・・。私は驚いて鳥の方をテオさんの背中から見る。
『違うこちらの世界へ用があって来たのですが、道中で怪我をしてしまって・・。貴方の神力の髪のおかげで助かりました』
「いえいえ、そもそもこの力は私のではなく、私の世界の神様が授けてくれたもので・・」
『謙虚なのですね・・。お礼といっては何ですが、何か必要なものはありますか?』
そう言われても、咄嗟に思いつかない・・。
必要・・、動物かな。
最近寒いから馬房にも行けないし・・、動物撫でたいとか・・。
でも、テオさんが嫌がるからな・・、とか、そんな事を考えていたら、鳥は静かに頷き、
『それでは、動物になる機会を差し上げましょう』
「・・・・・へ????」
そういうやいなや、金色の眩しい光が私を包む。
「きゃあ!!!」
「ヨル!!」
テオさんの焦った声が聞こえるけど、自分の体から眩しい光が出てくるから目が開けられない!なんとか目を開けるけど・・・、あれ、ちょっと待ってなんて言ったっけ?
『では、わたくしはこれで・・』
凛とした声は満足そうに言うと、パッと消えてしまった。
「よ、ヨル・・・!!!!」
焦ったテオさんの声が聞こえて、テオさんを見ると、急いで部屋にあった鏡を壁から引きちぎるように持って、私の前に置く。
私は自分の頭の上に、猫のような黒い耳がついているのを見る。
耳。
猫の耳・・・?
え、
え、
「ええええええええええええ!!!!!!」
私の叫び声が仕事場いっぱいに広がった。
「な、なななんで動物が好きだけど、動物にするっていう考えに至ったの?!!!」
「よ、ヨル・・落ち着いて・・」
ちょっと待て・・、お尻に何か違和感がする・・。
そう思って、そろっとお尻の方を見ると、スカートを持ち上げる黒い尻尾・・。
「尻尾ーーーーーーーーーー!!!!!!」
びっくりして尻尾が持ち上がると、スカートの裾も持ち上がるわけで・・
「わ、わわわ!!!!て、テオさん、こっち見ないで!!!」
テオさんは、真っ赤になって後ろを向き、私は慌てて後ろのスカートの裾を下ろす。
えええ、これどうしたらいいの・・・??!!!
私は泣きそうになって、お尻の尻尾を見つつ、頭の耳をそっと触る。
「テオさん、魔法で服とかどうにかできる・・?」
「あ、ああ・・ちょっと待ってくれ」
テオさんは、ちょっと目を逸らしつつ、魔法をかけてくれたようだ。
尻尾はスカートの裾を通り抜けるが、スカートがめくれない・・。す、すごい。
獣人のテオさんで良かった・・。
安心して立ち上がると、テオさんは私に向き直っていて、ちょっと目元が赤い・・。
「テオさん、どうしたの?」
「・・・・あの、その」
「み、耳を撫でてもいいだろうか?」
・・・・・うん?テオさん????