自己申告。
あの後、二人は何やらヒソヒソ話し、テオさんは追い払うようにジスさんを振り払っていた。
・・・人間関係がいい職場でありますように・・・。
思わず心の中で呟いた。
食堂を教えてもらい、後で昼食を食べようと言う話になった。やった〜!ご飯楽しみ!テオさんはどんな風にご飯を食べるのだろう・・・。生肉とか食べるんだろうか・・。
思わず、じっと口元を見てしまった。
「あとは、疑問に思ったら、色々聞いてくれ」
「あ、はい」
「テオ」
低い声がして、私達が振り返ると、紺色の髪をした・・キリっと整った顔立ちの男の人がこちらへ歩いて来る。ひゃぁああ、ジスさんとはまた違うけど、これまた美形だ・・。
「団長・・・・・・・」
テオさんが、若干ため息をついてる。
なに??何かあまり関係は良くない感じ・・・???
「ヨル、騎士団の団長で、ローナ・テルトラだ」
「あ、先日は助けて頂いてありがとうございます。ヨル シモセです」
「・・ん、無事で何よりだ」
キリッとした顔がちょっと笑う。
か、かぁっこいい〜〜〜〜。ちょっと顔が赤くなってしまう。
「テオ、説明している所すまないが、魔法薬が急遽欲しい。これなんだが・・」
そう言って、持っていた書類をテオさんに渡すと、テオさんが確認するようにうなずく。
「・・これか、わかった。今から取って来る。後で事務所に届ければいいか?」
「ああ、助かる」
「では、ヨル・・、一旦戻るぞ」
「はい!」
ペコっとお辞儀してテオさんの後をついていく。
「お休み・・もしかして取ってくれたんですか?」
「・・・まぁ、ただ消化しきれない有給があるんだ、一年くらい」
「・・・もしかして激務ですか?」
「いや、私があまり休まないだけだ」
「・・・適度に休んでくださいね。無理しすぎは良くないです。あと私も休みにくいです」
そう言うと、金色の瞳はちょっと大きくなって、面白そうに細められる。ライオンの表情・・・難しいけど、笑ってると思われる。
「・・・忠告痛み入る。ヨルは遠慮なく休め」
「それを言われると、余計休めません〜」
私は面白そうに言うと、テオさんは小さく笑った。
魔法庫へ戻ると、緑の扉へ一緒に行く。
「魔法薬は、植物の部屋へ置いてある。ここで作るものが多いからな。それ以外の時は、その都度教える」
「ありがとうございます」
温室の横には確かに作業台のような大きなテーブルがあり、色々な器材が置いてあった。
右手に物凄く大きな小引き出しがあって、薬になる薬草が入っていると説明してくれた。私は背が低いので、脚立を持ってきて、探すのを手伝う事にした。
これと、これ・・と、薬草を引き出しから出して、半紙にのせていくテオさん。手早いライオン。
「ヨル、8番と書いてある引き出しから、一掴み薬草をとってくれるか?」
私にも覚えてもらおうと、声をかけてくれたので、脚立を持って引き出しを開ける。引き出しを開けるといい匂いがする草が入ってる。一掴みって、こんな感じかな?手に持って、
「テオさん、これくらいですか?」
テオさんがこっちを見て、返事をしようとした途端、視線が揺れた。
あ、違う。
私が脚立から落ちそうなんだ。
「わ!!」
なんとか落ちまいと、手を引き出しに掛けようとする。
「ヨル!」
テオさんが受け止めてくれたけど、二人で大きな音を立てて落ちてしまった。
ガシャン!!!と、脚立が倒れた音が聞こえる。
あ〜〜〜、いきなり失敗してしまった。
「テオさん、すみません・・・」
そういって顔をあげると、金色の髪に、金の瞳をした綺麗な顔をした青年が私を見ている。あれ?テオさんは?
「・・・・あの、すみません・・・どなたでしょうか・・・?」
ライオンのテオさんを、もう一度探してみた。




