切実な祈り。
自分の世界に帰ってきた・・・。
私の住んでいた町は、いつもと変わらない様子だった・・。
店に飾られている日付を見ると、私が追い出された日からそんなに経っていない・・。
霧は徐々に薄れていき、テオさんのいた世界へもう二度と帰れないようで・・私は焦った。
帰らないと・・、テオさんが心配だ。
会えないと・・、テオさんが悲しむ。
「え、本当に・・どうしよう・・・」
キョロキョロと辺りを見回す。
焦りばかりが、どんどん増していく。ローブは浮いて見えてしまうので脱いで、腕に持って町中を歩く。
色んな音楽が鳴って、いつも通り変わらず人が歩いている。店の扉が開くたび、大きな音がする。・・こんな所にずっと住んでいたのに、私はずっと一人だったんだな・・。
たくさんの人が行き交うのを見て、少し呆然とする。
優しいテオさんに会いたい。
でも、こっちへ帰って来てしまった・・。
泣きそうになるけど、町中で泣いたら不審者だ・・。
どこか公園でもないかな?そう思って、目をゴシゴシ拭いて涙を誤魔化すように横を見ると、細い通りが目に入った。
そこへ迷いなく入って、とりあえず進んだ。
誰もいない所で泣きたい。
テオさんって呼んで泣きたい。
ここに、私の居場所はないのに・・帰りたいのに、帰れない・・・。じわじわと涙が出てきて、ゴシゴシとまた袖口で拭くと、いつの間にか神社の中にいた。
・・・あれ、こんな所に神社あったんだ・・?
そのまま、中の境内に進んでいく。
目の前にお賽銭箱があった。
あ・・、お願い事・・。
カバンは持っていたけど・・、お金はないし・・、パンを入れるわけにはいかないし・・、何かないかな・・、そう思ってカバンの底に丸い物が入っているのに気付く。
「ワーズさんの白い石・・・」
今となっては、テオさんのいた世界と繋がる唯一のような物に見える。
丸い真珠のような石をお賽銭箱に入れるのって・・失礼かな。
でも、珍しいって言ってたし・・。
私はなりふり構わず、お賽銭箱に入れた。
もし怒られたら、入れちゃったっていえばいいや!もう何も今更恐いものないし!!そっと入れたけど、ガコンっと結構いい音がした。こ、壊れてませんように・・。
作法なんて全然知らないから、手をパンパンと打ってからお願いする。
こっちの神様、お願いです!!!テオさんのいる世界へ戻して下さい!!
テオさんは、あっちの世界ですごく優しくしてくれたライオンの獣人さんなんですけど、最近やっと呪いの力から解放されたばかりなんです!ずっと一生懸命生きていた人なんです!
大変なのに、辛いのに、私を助けてくれたんです!
それで・・、私の事好きで・・、私も好きで・・、一緒にいようねって約束して・・帰ってこなかったら、きっとすごくすごく心配して、ずっと私のことを探すと思うんですけど・・
そんな風に祈っていたら、ボロボロ泣けてきた。
テオさんが心配して、悲しんでる顔しか浮かんでこない。
帰りたいよ・・、テオさんの所に帰りたい。
ここで生まれて育ったけど、私・・一人になっちゃったんです。
「あっちの世界に帰り・・たいんです・・・」
誰もここにこないで欲しい・・
私はもうボロボロ泣いて、しゃっくりをあげ始めた。
キィっ・・と、目の前の神殿の扉がちょっと開いた。
「へ・・?」
そこの中に誰かいたの?
思わず開いた木の扉を見ると、真っ白な細い手がそっと出てきて、手招きされた。
「・・・・私?」
そういった途端、シュッと体が神殿の扉の中へ入ったかと思うと、後ろでパタンと閉まる音が聞こえた。コロンと体が真っ白でフカフカな絨毯の上に転がって、私は急いで顔をあげる。
真っ白な空間に、真っ白な絨毯・・・。
シーンと音がしない空間に一人・・・。
「・・・え、ここはどこ?」
私は、ぽかんとその空間を見るだけしかできなかった。




