職場訪問。
大きなテオさんの手は、ライオンの手〜。
わぁ〜・・ライオンの肉球って、こんなに大きいんだ〜〜。
差し出された手の平を思わず両手で、モミモミ・・と揉んでしまう。
「よ、ヨル・・・・??!」
「あ、すみません・・。こんな風に手をじっくり見た事がなかったんで・・、失礼しました」
「いや、私の配慮が足りなかった」
そういうと、手が淡く光ったかと思うと、人間の手に変わる。
「え?!!手が人間に??これ、魔法ですか?」
「そうだ」
テオさんがゆっくりうなずく。はぁ〜〜・・すごぉおおおい!!!
私はまた手をまじまじと見ながら、モミモミしてしまう・・。本当だ・・人間の手だ・・大きいなぁ。ちょっとざらっとしてる。
「・・・・・・・・・・ヨル、あの・・・、手を・・」
テオさんは、気恥ずかしいのか声が困っているようだ。顔の表情がわからないのって、ちょっと不便だな。
「あ、すみません・・・」
私はそう言って、ようやく普通に手を握ると、ホッとしたような息遣いが聞こえる。す、すみません・・。病室を出て、受け付けらしき所へ行き、手続きを済ませると病院を出る。お世話になりました〜〜。
「ヨル、ではこの街を案内しながら職場に行こうと思うが、体調が悪くなったらすぐに言うように・・」
「あ、はい!ありがとうございます」
街・・と言うだけあって病院から出ると、そこは本当に整えられた街並みだった。馬車でここへ来た時は、外は見えなかったもんね。
石畳の上を歩きながら、テオさんが色々説明してくれた。
ここは、ガルドという国で首都から少し離れたバルという街。
私が捕まったのは、バルの外れにある所で治安が良くなく、人さらいが頻発していたので、騎士団と一緒に摘発したとか。助かりました・・騎士団の皆様。
今から行く職場は、騎士団から外注のような形で任されている魔法に関わる道具や、植物、魔石や鉱石を管理する場所・・。「魔法庫」と呼ばれているらしい。かっこいい〜〜〜。夢がある〜〜〜。
「え・・、すごく楽しみです」
そういうと、ライオンの顔は静かに微笑む。おお、かっこいい。
「そこがヨルの住む場所にもなる」
「あ、そうなんですね?」
「まだ、この国の事を知らない内に外へ住むには危険そうだしな・・」
「ありがとうございます」
・・・実は、異世界から来ました〜とは、言ってないんだよね。まぁ、何にも知らない所から連れられて来たって思ってるみたいだし・・・。
「私は、隣の棟に住んでいるから・・何かあれば声をかけるといい」
「一緒じゃないんですね」
「・・・ヨル・・・」
「ん?なんですか?」
「・・・・そういうことは、いうものではない・・」
「はぁ・・・・?」
いや、一緒じゃないのか〜って思っただけだし・・。
要領を得ない顔をした私をじっと見る金の瞳・・。綺麗だ。
気を取り直したテオさんは、よく行く食べ物屋さん、卸しに行くお店、洋装店、雑貨店などをざっくり教えてくれた。どれも可愛いお店だったり、素敵な店構えで見ているだけでワクワクした。
「今日は、まず職場と住む場所を整えて、徐々に外へ行くようにしよう」
「何から何まで、お世話になります・・」
「しっかり働いてもらうから、おあいこだ」
ニヤリ・・と片方だけ口が上がった。
おお、捕食されそうだな・・。
「頑張ります〜」
そんな会話をしながら、大きな赤いレンガでできた建物に着いた。鉄の門でグルっと囲まれて中までは見えない。
紺の屋根と赤いレンガの建物の配色が可愛い・・・。めちゃくちゃ好みだ・・・。
「ここだ」
そう言ってテオさんに手を引かれ、大きな木の扉を開ける。
中に入ると、飴色に磨かれた木の床に、真っ白の漆喰の壁。空気が気持ちいい。ひんやりしてる・・?
「外、ちょっと暑かったのに中はヒンヤリしてるんですね」
「魔法で温度管理している。魔法に使うものによっては、温度管理も大事な物もあるからな」
魔法・・・万能すぎない????!!!
私が目を丸くすると、テオさんの口がまた片方だけ上がった。