朝8時。
今日は雨である・・。
朝から雨って、なんで憂鬱になるのかな。
仕事がなければ、なんて事ないのに・・。そう思いつつ朝食を用意して、温室にいるテオさんを呼ぶ。
テオさんは嬉しそうに台所へやってきて、私の向かいに座る。
「・・なんだか久しぶりな気がする・・」
「そうですね〜・・・、なんだか朝食をかっ込んで出かける事の方が多かったですよね・・」
手を合わせて食べ始める。今日はベーコンエッグです。
卵とハムを焼いただけで、ご馳走に見える不思議・・。ああ、うまく半熟に焼けたぞ・・と、ニマニマしてしまう。テオさんは、そんな私をニコニコして見ている。
しまった・・今日は人間テオさんだった・・・。視線を感じて、ちょっと顔が赤くなってしまう。
「テオさん・・・、ちょっと見過ぎです。控えてください」
「・・・そうか?」
「自覚なしですかーい・・」
そういえば・・、私の目の色の事・・今なら聞いてみてもいいだろうか・・。テオさんなら知っていそうだし・・、そう思ってテオさんを見てみると、テオさんは少し驚いた顔をする。
「・・・?テオさん・・?」
「あ、いや・・ヨルが急にこっちを向くから・・」
「え・・いきなり照れないで下さいよ・・」
人間テオさんだと照れた顔がわかるから・・わかりやすくていい分、ちょっとこっちも照れくさくなる・・。二人で朝からもじもじしてるとか・・シュールだな・・とも思うけど、急に甘い空気になると、どうにもできない。
ううう、朝ご飯の味がわからなくなるーー。
なんとか・・なんとか食べ切ったよ。
多分二人して顔が赤い・・。
お皿を片付けて、お仕事だ・・。お仕事になればテオさんは仕事モードに入るから・・そうなれば大丈夫だ!ちょっと無言でお皿を二人で片付けつつ、私は必死で「あと少し!」と念じた。
棚の中にお皿を仕舞って、扉を閉じた。
振り返ったら、テオさんがそっと抱きしめてきて、思わず体が固まった。
「・・・少しだけ」
小さくテオさんがそう言って、ギュって抱きしめてくるから・・もうどうしたらいいかわからなくなって、ただただ顔が赤くなるだけだった・・。
よくわからない世界へ来て、テオさんは心配してくれて、色々教えてくれて、どうしてここまでしてくれるんだろう・・と思う。テオさんが私を好きなように、私もテオさんは好きだけど・・・。金の瞳を怖がらないから・・?でも、助けてもらったし、怖くないし、むしろ瞳の色は綺麗で好きだ。
そう思ったら・・、テオさんがもっと安心したり、嬉しくなって欲しいな・・と思って、身長差があるので、腰の辺りをそっと手を回してみた。腕が回りきらない・・?あ、いやもっとくっ付けば手が届くな?そう思って、ぎゅっと体をくっ付けてみた。
「・・・・・・・・・・・・ヨル」
「はい?」
無事、手を回して繋げたので達成感でいっぱいだ。テオさんを見上げると、顔が真っ赤である。
テオさん、顔真っ赤だけど大丈夫?
「・・・・・その、あまり、密着されると・・」
「・・・へ?」
さっきまでそっと抱きしめる程度だったのに、腕が回りきるかな〜?と思って、私からグイグイくっついてましたね。あ、これ恥ずかしいですね。恥ずか・・・
私は思いっきり腕の中を飛び出した。
「すすっ、すみません・・、う、腕が回るかな〜っと思って、ああああああ・・・・・・」
恥ずかしくて、しゃがみこんでしまった。
顔、顔を見られたくない・・、今無理だ。
テオさんが頭上で笑った声が聞こえた。テオさんだって、真っ赤だったじゃーん!!私も真っ赤ですけど。
頭にポンと手が置かれる感触がする。そのまま、するっと手が髪を撫でるから、なんだか嬉しいような、恥ずかしいような、安心するような・・。うん、ちょっと冷静になれてきた。
「・・・仕事、するか」
「・・・・・はい」
そろっと顔を上げると、テオさんはライオンになっていた。
「ずるいーーー!!!!!」
真っ赤な顔で私は叫んだが、悪くないと思う。




