どうも新人です。
毛皮に包まれ、私はぐっすり寝て・・起きたら、治療院のベッドの上にいた。
真っ白な部屋に、真っ白なシーツのベッド。
周りにもいくつかベッドがあり、衝立越しに何人か寝ている様子が見えた。
朝なんだろうか・・大きな窓からはお日様がキラキラ輝いている。
うん、いい天気だなぁ〜。
腕を見ると、擦りむいた所が丁寧に包帯が巻かれていて、点滴みたいなのまで付けられていた。良かった〜・・、比較的医療水準高そう・・。いやだよ、麻酔のない世界とか・・と、ぼんやり思っていた。
と、ぬうっと足元から大きい影が伸びてきて、見上げると大きなライオン・・テオさんが立っていた。あ、今日は洋服着てる・・。尻尾、どうなってるんだろ。
「テオさん・・・」
「体調はどうだ?」
低い声が心配そうに聞いてくる。
「ええと・・、とりあえず頭はスッキリしてます。お腹は・・空きました・・」
「そうか・・、もう少しで昼食だ」
「はぁー・・3日、いや・・4日ぶりかな・・」
「そんなに長く食べてなかったのか・・」
テオさんは、驚いた顔でこちらを見る。
「でも、こういうのは以前もあったんで・・まぁ、慣れっこです」
力なく笑うと、テオさんは顔をしかめた・・・ように見える。なにせライオンの表情なんてわかりづらい・・。
「ヨル・・、良ければ元気になったら、うちで働かないか?」
「え?」
「私は、これでも魔法使いで・・」
ライオンが魔法使い??昨日は、甲冑着てたよね・・?
「魔法使いだったんですか・・・?てっきり剣士かなって思いました・・」
テオさんは、ふっと笑って・・
「剣も多少はできるが、普段は魔法使いを名乗っている」
「どっちもできるのって、いいですね・・」
「・・そうだといいが」
ちょっと眉が下がって笑ったような表情になるんだけど・・・、可愛いなぁ・・。表情豊かなライオン・・テオさんにほっこりする。
「・・・あの、話を戻しますけど・・、どんな職場ですか?」
「ああ、魔法に関わる物の管理をしているんだ。一人では手が回らなくて・・、たまに手伝ってもらうが・・良ければそこで手伝ってもらいつつ、生活基盤を作っていけばいいのでは・・と、思って」
テオさん・・・さすが百獣の王・・なんという優しさ。
「ありがとう・・ございます・・。すごく嬉しいです」
ホッとした・・。こんな人の元で働くなら、きっと大丈夫だろう。
「あの・・、体が動くようになったら、ぜひお願いいたします!」
「ああ、待っている」
そういって、テオさんは、私の頭を大きな手で頭を撫で・・ようとしたものの、「大人・・だったな」と、慌てて、手を引っ込めた。・・・可愛い。
それから、毎日・・時間はバラバラだったけれど、テオさんは様子を見にきてくれた。他愛もない会話は、楽しくて・・すぐに仕事へ戻ってしまうけど、ホッとするひと時だった・・。
ようやく1週間経って、お医者さんに
「明日、退院していいですよ」
と、お墨付きをもらい、話をしに来てくれたテオさんに報告すると、顔の表情は変わらなかったけど、尻尾が揺れていて、大変可愛らしかった。
退院当日、看護師さんが紙袋を持って来てくれて、不思議に思って中身を確認すると、服や下着が入ったものだった。
「テオドルさんに頼まれたの、女性じゃないと分からないもの・・あるでしょ?」
と、ピンクの髪をした可愛い看護師さんに教えてもらった。
テオさん・・、ありがとうございます・・。退院当日まで、私は気付いてなかったです・・。あまりにも頭が回ってないなぁ。看護師さんにも、もちろんお礼を言った。
看護師さんが用意してくれた服は、シンプルな物が多くてホッとした。私は早速、中に入っていたシャツワンピースを着た。ベッドに座ってテオさんを待っていると、病室の扉を開けたテオさんが私の姿を見て驚く。
「起きて・・大丈夫か?」
「大丈夫だから退院するんですよ?あ、服とか・・色々ありがとうございます。今日まで、全く気が付かなかったから、助かりました」
ピョンと、ベッドからおりてお礼を言うと、テオさんの目がすっと細められる。・・・これは笑っているライオンと見た!私も笑うと、テオさんがすっと手を差し出す。
「転ぶと危険だ」
「いや、私、大人ですからね」
・・どんだけ小さい子に見えるんだろう。




