お互い様。
騎士団の詰所まで報告に行ったテオさん。
私が今度はテオさんちゃんと帰ってくるかな・・?大丈夫かな?と、玄関で待つ立場に・・・。歩いて1分なのに心配する気持ち、ちょっと分かりました。でも私は帰ってきますけどね。
魔法薬を作っておかないとなぁ・・と、思いつつ気になって。
・・これからどうしようかな。
薬草を探しつつ考えた。
ここで一緒に仕事をしていて思ったけど、テオさん一人でほとんど仕事を回せる。私がいなくても特に困る事はないと思う・・。多分どこにも行く当てのない私を心配して雇ってくれたんだろう。
そう考えたら、独立か何かして、ここから出て生活した方がいいのかな・・。
あ、でもテオさんご飯一人だと食べないから、せめてご飯だけは一緒にしたいかも。
側にいたい・・そうは言ったけど、テオさんはどう思ったんだろう?
嬉しそうだったけど・・、結局バタバタして聞けなかったし。
あれ・・???
そもそも、私を好き・・とかではないだろうに、キ、キスとかしちゃったけど・・。忘れて欲しいとか考える前に・・・すっごい迷惑行為以外のなんでもなくない?!!!て、なんで気が付かなかったんだろう・・。
すすすみません!!!あとで謝ろう・・。
ものすごく謝ろう。
もう絶対いたしません!!って、言わないと・・。
そう思うと、ちょっと胸がチクっとする。
あれ・・?
なんで胸が痛いんだろう・・。
テオさんは、私を同情して雇ってくれたんだ・・。別に私を好きなわけではない・・。そう思うたび、胸が痛くて・・薬草を探さないといけないのに、頭がうまく回らなくて・・手が止まってしまった。
と、扉を開く音が聞こえて、ハッとする。
いかん、いかん・・しっかりせねば。
胸がまたチクチクするけど、引き止めるのに必死で失礼な事をしちゃったんだから・・、と、ライオンテオさんが温室の扉を開けて入ってくる。言え・・言うんだ自分・・。
脚立から下りて、テオさんの前に行く。
心臓がドクドクいってる・・。
「あ、あのテオさん・・」
「どうした?」
「き、昨日キスとかしちゃって・・あの、ごめんなさい!!!」
思いっきり頭を下げた。すみません!!なんなら、土下座します!
「・・え、あ、ヨル?」
「す、好きでもない私に、そんなのされたら、嫌だったろうな・・って。引き止めるにしたって・・他に方法があっただろうに・・。すぐ気がついて謝るべきだったのに、なんだかいっぱいいっぱいで・・・思い至らなくて、すみません・・・」
あ、ダメだ・・恥ずかしい上に、すぐにテオさんが嫌だったかもしれない事に気付かない自分に嫌気がさす。下を向いて足元を見る。今はテオさんが見られない・・。
ちょっと無言のテオさんが怖い・・。
「ヨル・・」
「はい」
私の足元の視界にテオさんの足先が見える。だけどまだ上を向けない。
恥ずかしいし、申し訳ないし、怒られたら・・絶対へこむ。
「ヨルは、私をどう想っている?」
「へ?」
思わず顔を上げたら、人間のテオさんになっている。
「・・・・え、私・・ですか?」
そうだ・・、ええとさっき胸がチクチクしたのはなんでだっけ?・・私の事を好きでないテオさん。私のことをなんとも想っていないテオさんを考えたら、辛かった。
・・・あれ?
もしや私・・、テオさんの事・・・
「好き・・・・・・・?」
ふっとテオさんが笑った。
あ、すみません・・今、わかったんです・・。あああでも、そう言われても迷惑ですよね?
「あ、でも迷惑・・ですよね。すみません」
「いいや、それは私も同じだ」
「え?好きだと迷惑って・・?テオさんが??」
「私は「呪いの力」を持っている」
「別に何にも気になりません」
脊髄反射みたいに言っちゃった・・・。テオさんが嬉しそうにうなずいてくれた。
「そんな力を持っている私が、ヨルを好きだと知られたら・・、恐がられるのでは・・拒否されたら・・そう思った」
「そんな事・・」
そうか・・、だから私から離れていこうとしたのか・・。ようやく力の事を知られてショックを受けた顔を思い出した。
「・・・あれ・・?っていう事は、テオさんは私の事、好きなんですか?」
「・・・ああ」
テオさんがちょっと照れくさそうにする。
「ええと、じゃあ・・・両思いって事ですよね?」
「・・・ああ」
私は、じわじわと嬉しくなってくる・・。ちらっとテオさんをもう一度見ると、顔が赤い。多分、私も赤い。
「・・・両思いも初めてです・・・」
そう言うと、テオさんが嬉しそうに笑ってくれて、胸のチクチクはどこかへ行き、嬉しいのと恥ずかしいのでいっぱいになって、テオさんの胸に顔を寄せて見えないようにしてみた。そっと背中に腕を回され、ほっとした。
今はちょっとお互い恥ずかしいから、顔・・見えませんしね。
甘みが増してきました。




