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夜と魔法使い。  作者: のん
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弟子入り。


テオさんと手を繋いで、魔石を売っているお店に行く。

半地下にあるらしく、少し薄暗い階段を下りていくと、グレーの扉がある。


そっと扉を開けると、ベルが鳴る。

中も少し薄暗く、あちこち木箱に入っている魔石や、鉱石が淡く色々な色で光っていて、なんとも幻想的だ。と、奥からドカドカと歩いてくる音がして、そちらを見ると顔がひげで埋まってるんじゃないかってくらいのおじさんが出てくる。


「おや!珍しい。今日は買いに来たのか!」

「・・・確認をうっかり忘れてな、あと弟子を連れて来た。ヨル」


テオさんの体が大きいので、後ろから顔を出す。


「初めまして!ヨルです。よろしくお願いいたします!」


おじさんはびっくりした顔で私とテオさんを交互に見た。


「あんたが弟子とはねぇ!よろしく頼むよヨルさん。俺はタリッドだ」

「はい!」


笑顔で答えると、ライオンテオさんは小さく笑う。


「何かの際には、ヨルが卸しに来ることもあれば、買いにも来る」

「わかった。ご贔屓さんだ!大歓迎しますよ」


ヒゲの中から黒い目が面白そうに見ていてる。あの辺に目があるのね・・。

そうして、私達は在庫が無くなってしまった魔石と、いくつか鉱石も買い足して店を出た。


薄暗い店から、外へ出ると、お日様が眩しく感じる。


「ひゃあ〜〜、眩しい!」

「確かに・・、あの店は魔石に合わせて薄暗いからな」

「あ、やっぱりそうなんですね。でもどれも淡く光ってて綺麗でしたね」

「ああ、そうだな」


ライオンテオさんは、そう言って手を差し出してくれたので、そっと掴む。


「あ、テオドルさ〜〜ん、ヨルちゃ〜〜ん」


後ろから声を掛けられて振り向くと、ジスさんがこちらへ騎士の人達を連れて歩いてくる。


「お疲れ様です!お仕事ですか?」

「そう、パトロール!珍しいね〜、二人で買い物なんて!しかもヨルちゃんローブ着てる!」


「・・・・今日から弟子入りだ」


テオさんがちょっと低い声で話す。・・・面白くなさそうな声に笑いそうになってしまう。


「そうなんだ!おめでとうヨルちゃん1ヶ月ちょっとで、弟子に入れるなんてすごいね〜。偉いね〜」


そう言って、頭をわしゃわしゃ撫でられる・・。私、大人なんですけど!力が強いから、フラフラしてしまう。


「ジス・・・」


テオさんの声が更に低くなると、ようやく手が離れた。

た、助かった・・・。


「テオドルさん、あと・・ちょっと話しておきたいことあるんですけど・・」


そっとジスさんが小声で話すと、テオさんは私の手を離す。


「ヨル、そこで少し待っててくれ」

「はい」


私はテオさんから離れて、店の入り口辺りで待つと、ジスさんとテオさん、騎士さん達は何やら小声で話している。お仕事かな・・?大変そうだ。

籠の中に入った魔石の布が少しずれていたので、掛け直そうとすると目の端で何かが動いたのが見えた。


「・・・ん?」


私の足元から少し離れていたけど、蜘蛛がいた。


だけど、蜘蛛・・大きい。

犬くらいあるけど・・?え、こっちの蜘蛛ってこんなに大きいものなの?


そう思って、奥を見ると・・路地奥から大きな蜘蛛がぞろぞろと出てくる・・。こ、これはまずいのでは・・??でも、声が出なくて、喉が引きつるだけだ。


蜘蛛は、ジリジリと動いてくる。私もあとずさる・・。


「て、テオ・・さ・・」


声を出そうとすると、私の後ろのテオさんに向かってビュッと何か液体を出す。

テオさんに掛かる!!!


「テオさん!!!」


液体に咄嗟に手を伸ばす。


「うあっ!!!!」


ジュッ!!!と、音がして左腕が熱い。そして痛い。


「ヨル!!!」

「ヨルちゃん!!」


蜘蛛の存在に気付いたテオさん達が私を庇う。蜘蛛達が囲うようにやって来て、騎士さん達が剣を構えて、蜘蛛を追い払おうとするけれど動きが早くて苦戦している。


私は液体が掛かった腕がチクチクと針で刺されているように痛み、顔が苦痛に歪む。


「よくも・・・」


テオさんの声が、低く響く。

シュウ・・と音がして見上げると、人間のテオさんに戻っている。

テオさんの名前を呼ぼうとすると、金の瞳が淡く光る。



『止まれ』



低い声に蜘蛛達は、さっきまで私達を狙うかのように動き回っていたのに、突然動きを止める。


『檻で眠れ』


テオさんがそう言うと、蜘蛛が一斉に一箇所に集まり、その下から淡い光と共に、四隅から鉄の棒が出てきた。と思ったら、鉄の柵が蜘蛛達を閉じ込めるように囲んでしまった。


私はあっという間の出来事に痛みを一瞬忘れてみる。

騎士さんの一人が小さな声で呟いた。




「・・呪いの力・・・」




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