運動も。
テオさんと今日は魔法の道具を作るため、魔石の確認をした。足りない。
何度見ても空っぽだった。
空の引き出しを思わず2人で覗きこむ。
「・・何もないですね・・」
「うっかりしてたな・・」
夢中でここの所、2人で魔法薬を作る特訓をしていて・・、管理していないといけないのに・・お互いにやっていると思い込んでしまっていた・・。
「すみません!お仕事なのに・・」
「いや、それは私も同じだ」
「魔石ないと困りますよね・・、どうすれば・・」
「ふむ、では今日は買ってくるか」
「え!?売ってるんですか?」
びっくりして思わず大きな声になってしまった・・。
「街で売っている。いつもは店に発注して持ってきてもらっていたんだ。すまない・・ずっと仕事に掛かりきりで伝えていなかったな」
そ、そうなんだ。いつも頼んでいたから、お店で売ってるとイメージできなかった・・。
ポカーンとしていると、ライオンテオさんは小さく笑った。
「ヨルに、街を案内すると言ってたのに、随分と遅くなってしまったな・・。うん、今日は買い物へ行こう」
テオさんとお出かけ!パッと笑顔になる。
「準備してきます!」
エプロンをつけていたので、急いで2階の部屋へ置いて、籠を持つ。何か買えたらいいな・・と思って、先日貰ったばかりのお給料袋を籠に入れて階段を下りる。
「テオさん!お待たせしました!」
「ヨル、ゆっくりでいい」
ライオンテオさんには、今にも転びそうに見えるらしい・・。小さい子じゃないから・・。
テオさんは魔法使いのローブを着ている。濃紺の生地に金色の刺繍がしてある・・綺麗だな。
「ヨル、これを」
テオさんがもう一つローブを持っている。
同じ濃紺のローブだ!
目を丸くしてテオさんを見ると、
「ヨル、今日から魔法使いの弟子と名乗って仕事をするといい。まぁ、あと少し学ぶ必要はあるが・・」
「え、ええええ・・いいんですか?!」
「ああ、もっと時間が掛かるかと思ったが、基礎はしっかりできているから」
そっとテオさんがローブを渡してくれて、じわじわと嬉しくなる。
「ありがとうございます!テオさんのおかげです」
魔力は残念ながらなかったけど、魔法薬なら大丈夫だとテオさんに励まされ、頑張って特訓してきた成果だと思うと胸が一杯になった。
私はローブを広げて、羽織ってみる。
テオさんがそっと、襟の辺りを整えてくれたけど、モフモフの毛がちょっとくすぐったかった・・。
「嬉しい・・!」
クルッと回ってローブが広がる様子にニコニコしてしまう。テオさんが、ふふっと笑って見ていた。あ、すみません・・舞い上がってます。
「さ、では行くか」
「はい!」
扉を出た瞬間、こけそうになってテオさんに慌てて腕を掴んでもらう。
「すみません・・」
うっかりしすぎて小さくなると、頭にポンと手を置かれる。
「大丈夫だ」
優しい・・。
百獣の王、余裕の笑みである。
手を差し出してくれたので、私は遠慮なく掴んだ。安心感がすごい・・。
久しぶりの外出は楽しかった。
並木道を歩くと、風が気持ちよい。
やっぱり、たまにはテオさんも連れて散歩にでもいこう。うん、いいかも!散歩!私は名案が浮かんで、テオさんを見る。
「どうした?」
「テオさん、今度散歩しましょう!食事も運動も大切です!」
「私は鍛えているが・・」
「・・そうだった!引きこもってたけど、テオさん剣の練習してましたね。むしろ私が動かなきゃでしたね」
・・そう、テオさん引きこもってる割に、剣の練習をしていた。魔法も練習してた。休んでない。
「テオさんを休ませるために、私と散歩して下さい」
そう言ったら、テオさんはハハッと笑った。
いいアイデアじゃない?




