食事は基本!
台所の冷蔵庫っぽい箱から、野菜を出して手早く切る。
あんまり食材を使いすぎると、殴られていたあの頃・・・今は、思う存分使える・・最高かよ!と、感動する。
コンロは、マッチみたいな木の棒で付けるタイプだったけど、慣れてしまえば大丈夫。チャチャっとスープとお肉をおばちゃんが入れておいてくれたので、焼いて塩胡椒で味を整える。
うぁ〜〜いい匂いだなぁ〜〜。
「テオさん、できましたよ〜」
私の料理は手早い。
煮る、焼く、炒める。最高です。
テオさんは、台所にあるカウンターに並べたご飯を見て、驚いていた。ライオンなんでわかりづらいけど・・。
「ヨルはすごいな・・・」
「生きるために、出来る事はなんでもやってきましたからね・・でも、役立って良かったです」
ちょっと過去の自分の悲しい気持ちが浄化されていくようだ。好きなだけ食材使えるし・・。
「とりあえず、温かいうちに食べましょ。」
「あ、ああ・・」
カウンター越しに椅子に座って、手を合わせて「いただきます」と言うと、人間に戻ったテオさんも手を合わせてくれた。優しい。
「あ、良かった!美味しくできてる。自分で言っちゃうけど・・」
「いや、上手だ・・・すごい・・」
「テオさんは、ご飯は作らずに食堂へ行ってたんですか?」
「・・・まぁ、たまに」
「たまに・・・・・・?それって、食べてたんですか?」
「・・・・・時々・・?」
気まずそうに目を逸らす。一体何を食べていたのだ・・。
「買ってきたものを摘んだりはしていたぞ?」
「それは食べてるとは言いませんよ・・。テオさん、これからちゃんと3食食べましょうね!」
「・・・・・ああ」
ご飯を食べるのは体調管理の基本でもあるのに。私の健康は気にするのに、自分は気にしないのはダメじゃない?
「テオさん、倒れたら嫌ですよ・・」
ボソッと言ってみた。
テオさんは、じっとこっちを見る。金色の瞳って、本当に綺麗だな〜・・私も見てみた。
「ライオンを余す事なく触れるの・・、最高なのでお願いしますよ?」
ニマッと笑うと、ようやくテオさんは小さく笑った。完食してくれて、私は大変満足した。一緒にお皿を片付けて、午後も集中して仕事した。テオさん・・・、仕事は鬼だった・・。
可愛いライオンがいいです・・。
夜も食材を食堂から貰って、作って食べた。
台所が高い作りになっているから・・と、テオさんが足台を作ってくれた。すごく楽〜〜〜。感動してお礼をいうと、照れくさそうにしていた。ライオンだから分かりづらいけど・・。
そんな風に、ご飯を作ったり、お仕事をしたり、仕事場にほぼ篭りっきりのような生活を2人でしていたが、穏やかに時間は過ぎていった。
時々、様子を見にジスさんが来ると、色々喋るものだから、テオさんはライオンの顔で複雑そうな表情をしていたけど・・、ちょっと面白かった。
「二人の姿を食堂で、全然見ないんですもん〜、そりゃ心配になりますよ〜」
「ああ、そうでしたね・・。2日くらい来て、すぐご飯作り出しちゃったんで・・、ご心配かけました」
そう言いながら、お茶のおかわりをジスさんのカップに注ぐ。
「ヨルちゃん、そんなに小さいのにご飯作れるの?すごいね〜」
「え、こっちの人ってご飯作らないんですか?」
「う〜ん、ご飯作る人から買うのが多いかな〜」
「へぇ・・・そうなんですか」
なんというか・・経済的には作ったほうがいいと思うけど。あ、テオさん・・ほら〜みたいな顔をしない。
「そういえば、この間摘発した人さらいの奴ら・・また活動し始めたみたいだから、気をつけてね」
「え・・、そうなんですか。そんな時にジスさんここでお茶してていいんですか?」
「休憩させて下さいよーー」
「ジス、そろそろ団長が来るぞ・・」
嫌がるジスさんを、テオさんが突っついていた。めげないジスさん強いな・・。
そんな事を言いつつ、のんびり過ごしていた。
その時までは・・。




