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夜と魔法使い。  作者: のん
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未知との遭遇。


もう何日、ご飯を食べていないのだろう・・。

お腹が減って、リアルお腹と背中がくっつくぞ♪な、体験をしている。


私は、ヨル。

下瀬 夜・・と、いう名前だった・・。


なんで過去形かと言うと、現在、ものすごい顔の怖いおじさん達に、絶賛捕まって売り飛ばされそうだからだ。人身売買のある異世界とか・・聞いてない。いや、聞かされてもいないけど。武器を持ったおじさん達が常時見張っている。お仕事熱心ですね・・。


石でできた牢屋には、何人か膝を抱えて座ってる。

頭の上の方で、小さく切り取られたような窓からは、小さく月が見えた。ああ、今晩も水だけかぁ・・。



どういうわけか、私はあまり家族と縁がなく、犬猫のように捨てられる事が何度かあった。親戚中にたらい回しにされ、やっと珍しく長く一緒にいてくれた人が突然亡くなって、一緒に住んでいたマンションをその人の親類とやらに追い出され・・はー、どうしよ。とりあえず警察に行くかなって、思って雨の中路地を歩いていたら、異世界へ来た。


雨は同じように降ってたけど、ランプの街灯が点いていて、街ゆく人も、カラフルな髪をしている。

顔つきもみんな違って、ここは違う世界かな?って、すぐ思った。


来た道を辿れば帰れるかもしれない・・。


でも、もう・・そう思えなかった。

もう帰る場所はない・・。


トボトボと歩いていると、暗い路地から急に手や口を押さえつけられ、あっ、という間もなく、誘拐、そして今に至る。


「・・・・はぁ」


お腹が空いた。

最後に食べたのが、おにぎりで良かった・・。

ジャパニーズソウルフードで、締めくくれるなら・・。いや、できればもう一回おにぎり食べたい。お味噌汁も飲みたい。あとカツ食べたい・・。ダメだ・・お腹が空いて力が出ないよ〜。甘い餡子が入って、やたらと顔を食べさせようとするあいつを思い浮かべた。


「・・・助けて〜・・・」


力なくポツリと誰に聞こえるわけでもなく呟く。


と、


ガゴォオオオンンン!!!!


いきなりの轟音がする。


膝を抱えていた人達が、一斉に顔を上げて、音がした方を見る。

見間違いでなければ、私達が入ってきた牢屋の入り口だ。

まるで爆弾が落ちてきたように、大きな穴が空き、なんなら煙が立っているし、パチパチと赤い火花が出ている。


「売人どもを捕縛しろ!!!」


大きな通る声が、牢屋の向こうから聞こえ、見張りに立っていたおじさん達が一斉に空いた穴へ武器を持って向かう。急な展開で、混乱したが、誰かが助けに来たのかもしれない。助かる・・・?

わずかに希望を持って、じっと穴の向こうを見つめる。



怒鳴り声や、悲鳴、何かが打ち合う音、しばらくその音は続いた。


ようやくその音達が鳴り止み、同じように牢屋に入っていた私達は固唾を飲み込む・・。

すると、人影らしきものが何人か見えた。


「助けに来たぞ!!」


その声にワッと皆、歓声を上げる。


やった!!ともかくご飯食べたい!!!

そう思って、皆と同じように牢屋の入り口へ来た人の元へ駆け寄って行く。


「さあ、こっちだ」

「怪我をしているものは、こっちへ」

「もう大丈夫だ」


ああ、良かった・・。

声だけでもわかる・・。優しそうな人達の声だ。


真っ暗な中に、ずっといたので、松明の明かりだろうか・・眩しく感じる。

目を擦りつつ、私の番になってその手を取った。


モフッ。


モフッ・・?


毛皮とか着てるのかな?そう思って、その手を見ると、爪が鋭く出ているライオンのような手である。ライオンみたいな手・・・?


そおっと見上げると、ライオンがいた。ちょっと口を開けてハッハッと、息をしている。

甲冑を着たライオン。



『熊を見たら、気絶したふりをしろ』っていうじゃない?



ライオンだけども!!熊じゃないけども!!!フリじゃなくて、リアル気絶した。

もう無理!!!って、気絶した。

餡子の入ったパンの方が、まだ良かったかもしれない・・。そう、思いつつ。




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