それでも涙は温かい。
…心が通わない人がいる。
こちらからノックしても返事もしない。
何度も何度も心のドアを叩いてみる。
トントントン。
やっぱり返事はない。
少し強く叩いてみる。
ドンドンッ。
それでも返事はなく、何なら私の手が痛かった。
毎日諦めずに叩いてきた。
とてもとても長い間。
トントン。
トントントン。
ドンドンドンッ!
私の手はいつしか痛みを感じなくなった。
今度は声をかけてみた。
「ねぇ?聞こえてる?私はここにいるよ。」
「ねぇ。貴方はここにいるの?」
「お願い。返事をしてよ。寂しいよ。悲しいよ。」
どんなに大きな声を出しても、怒っても優しく言っても何の反応もない。
これもとてもとても長い間やってきた。
…今度は私の心が折れてしまった。
周りは言う。何の責任もないから。
「諦めずに話しかけたら?」
「もう一度ノックしてみたら?」って。
もう疲れたよ。
「今度は手紙を書いたら?」
それはもうやったの。
読まずに放置された。
これなら気づいて捨てられてた方がマシだった。
愛情の反対は無関心だと誰かが言っていたらしい。
無償の愛は必ずある。とこれも誰かが言っていた。
愛は枯渇しますよ?
いつまでも湧いて出る泉ではないです。
見返りを求める訳じゃない。
けれど、誰かに優しくしたら誰かから優しくされたい。
そんな簡単な事を求めるのもワガママなのかな?
昔、どこかのアーティストが歌ってた。
「一人でいるより誰かといる時の孤独の方が寂しい」って。
まさか、大人になって実感するなんてね。
寂しさで身体の芯まで冷えてたまらない夜は、温かいお風呂で誰にも言えない悲しさを洗い流す。
時々あるの。
誰かに抱きしめて欲しい夜。
でも、私を抱きしめてくれる暖かい腕はない。
そんな時は自分で自分を抱きしめる。
悲しさと一緒に虚しさややるせなさも一緒に洗い流して、私は暖かい布団に入る。
小さな頃に母と手を繋いで眠った事を思い出した。
あの暖かい手は今、自分の子どもへと繋がれている。
可愛い寝顔を眺めて、この子たちを守るためにまた強くなろうと涙を流した。
どんなにツラくてもどんなに寂しくても…。
それでも涙は温かい。
その温かさは私が今生きている実感になる。
…生きていくしかない。
泣いても笑っても容赦なく陽は昇る。
明日はやって来るのだ。
だから、しんどいことは昨日に置いてこう。
今日を生きて過ごすのは、今日を…今を生きている私なんだから。