表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

それでも涙は温かい。

作者: さち



…心が通わない人がいる。



こちらからノックしても返事もしない。




何度も何度も心のドアを叩いてみる。




トントントン。




やっぱり返事はない。




少し強く叩いてみる。

ドンドンッ。



それでも返事はなく、何なら私の手が痛かった。




毎日諦めずに叩いてきた。

とてもとても長い間。




トントン。


トントントン。


ドンドンドンッ!



私の手はいつしか痛みを感じなくなった。




今度は声をかけてみた。




「ねぇ?聞こえてる?私はここにいるよ。」



「ねぇ。貴方はここにいるの?」



「お願い。返事をしてよ。寂しいよ。悲しいよ。」



どんなに大きな声を出しても、怒っても優しく言っても何の反応もない。




これもとてもとても長い間やってきた。




…今度は私の心が折れてしまった。




周りは言う。何の責任もないから。




「諦めずに話しかけたら?」

「もう一度ノックしてみたら?」って。




もう疲れたよ。




「今度は手紙を書いたら?」



それはもうやったの。

読まずに放置された。

これなら気づいて捨てられてた方がマシだった。





愛情の反対は無関心だと誰かが言っていたらしい。




無償の愛は必ずある。とこれも誰かが言っていた。





愛は枯渇しますよ?

いつまでも湧いて出る泉ではないです。




見返りを求める訳じゃない。

けれど、誰かに優しくしたら誰かから優しくされたい。

そんな簡単な事を求めるのもワガママなのかな?




昔、どこかのアーティストが歌ってた。



「一人でいるより誰かといる時の孤独の方が寂しい」って。



まさか、大人になって実感するなんてね。



寂しさで身体の芯まで冷えてたまらない夜は、温かいお風呂で誰にも言えない悲しさを洗い流す。



時々あるの。

誰かに抱きしめて欲しい夜。

でも、私を抱きしめてくれる暖かい腕はない。



そんな時は自分で自分を抱きしめる。

悲しさと一緒に虚しさややるせなさも一緒に洗い流して、私は暖かい布団に入る。



小さな頃に母と手を繋いで眠った事を思い出した。

あの暖かい手は今、自分の子どもへと繋がれている。



可愛い寝顔を眺めて、この子たちを守るためにまた強くなろうと涙を流した。



どんなにツラくてもどんなに寂しくても…。




それでも涙は温かい。




その温かさは私が今生きている実感になる。



…生きていくしかない。

泣いても笑っても容赦なく陽は昇る。



明日はやって来るのだ。

だから、しんどいことは昨日に置いてこう。



今日を生きて過ごすのは、今日を…今を生きている私なんだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 詩の様だ。
[良い点] 「何なら私の手が痛かった。」の文が好きです。 手をとり、両手で包み、痛かったねと、声をかけたい気持ちです。 あらすじの「必ず誰かは誰かの大切な人だから。」という文、好きです。 さち様が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ