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5雑草の中からお宝発見


「これはダンダンではないか?」


「そうですね」


 さらりとセバスが肯定する。なんという勿体ないことをしているのか。


「こんな扱いをしては薬効が台無しではないか!」


 土魔法や木魔法を使って、根っこから引き抜いている。あれは簡単なものだから使える者がいるのはこの時代でも不思議ではない。そこまでは良いのだが、引き抜いただけで放置している。これでは薬効が飛んでしまう。


「ダンダンに薬効…ですか?」


 ダンダンとは春から雪がつもるまで一面を黄色く色づかせる花だ。生命力に溢れており、特にその根には薬効成分が多量に含まれている。煎じればコーヒーと同じような苦味がある飲料になり、愛好家もいたくらいだ。というか、前世のシェリルが愛好家だ。


「なんじゃ、知らんのか?

 軽い解毒作用があるし、二日酔いにも効く。味は好き嫌いが分かれるが、わしは好きじゃな」


「ダンダンは私の知る限りただの雑草ですが…」


「なんじゃと!? ではこの山は廃棄するのか? もったいないではないか。

 この畑のあるじを呼ぶのじゃ。ダンダンを引き取るぞ」


「はっ」


 ダンダンの薬効に対して半信半疑の目をしていたセバスだが、シェリルが命じるとすぐさま駆けていった。

 その間にシェリルは魔方陣の準備をする。

 ダンダンコーヒー好きが高じて作ってしまったオリジナルの魔方陣だ。

 魔方陣の上にダンダンを根っこごと放り込めば簡単に煎じたダンダンの根を作ることができるというもの。前世ではこの魔方陣を作ったと言ったら弟子に「才能の無駄遣いをしないでください」と半ば本気で泣かれたことがある。懐かしい思い出だ。


「お嬢様、そちらはゴミなので好きにして良いとのことでした」


「ご苦労様なのじゃ。

 ではちょいと離れておれ、さっさと煎じてしまおう」


 風魔法で積み上がったダンダンを持ち上げ、魔方陣の上に置く。すると数秒間光輝いたのちにダンダンコーヒーの素と、それ以外に別れた。

 ついでに土魔法で器を生成し、できあがったダンダンコーヒーの素を収納した。これだけあれば暫く楽しめるだろう。


「うむ。なかなかの量じゃな。

 ダンダンコーヒー以外のモノは肥料にしてある故、この畑のあるじに渡してやるがよかろう。

 では帰って久しぶりのダンダンコーヒーを楽しむとするかのう」


「…了解いたしました」


「あ、肥料をやり過ぎると植物が暴れることがあるのじゃ。その辺りも伝えておくのじゃぞ」



●●●●●



「どうじゃ、いけるじゃろう?」


 屋敷の厨房にて、ホクホク顔で持ち帰ったダンダンコーヒーを三人で試飲する。

 本来であれば屋敷の主が厨房に入ることはあまりない。が、このヴァイルト邸においてはそういった常識はあてはまらない。そもそもこの広い屋敷に三人の人間しかいないのだから、指摘する者はいないのだ。

 というわけで多少お行儀は悪いが、シェリル手ずからダンダンコーヒーを振る舞った。久しぶりに味わったダンダンコーヒーはやはり口に合う。

 美少女のドヤ顔を披露の瞬間である。


「確かに…この苦味は癖になりますな」


「えぇ。私は調理も担当して長いのですが、ダンダンが嗜好品のコーヒーに似た味になるとは思いもよりませんでした」


 久しぶりに使った魔方陣だったが、特に問題は起きてないようだ。


「お嬢様、ダンダンコーヒーをお披露目の席に出しましょう」


 じっくりとダンダンコーヒーを味わっていたセバスがいきなりそんなことを言い出す。


「良いのか? わしは大歓迎じゃが、ダンダンは雑草なんじゃろ?」


 気難しい貴族が怒り散らさないとも限らない。


「そこは話の持っていきようです、お嬢様。

 一口飲んで頂いてから薬効の話をし、これがダンダンだと種を明かす。そして、この味はお嬢様でなければ出せないことを強調するのです」


「ほう…貴族の嗜好品として売り出すつもりか?」


「はい。そもそもダンダンはこの領地では辺り一面に生えている雑草ですが、他の領地ではあまり見かけません。土地が豊かな象徴という者もおります」


「まぁ雑草が特産品になれば儲けモノじゃな。原価はタダじゃし、加工は魔方陣任せじゃ。

 農民からダンダンを買い取る算段をつけておこう。もちろんダンダンコーヒーが気に入られてからの話じゃがの」


「恐らく薬効の話をすれば食いつく貴族は多いかと思われます。味が悪くない飲料で解毒効果があると広まれば、これからの貴族の食事会でのスタンダートとなるやもしれません」


 この屋敷の調理担当でもあるジェーンが味に太鼓判を押すのであれば、勝算がないわけでもなさそうだ。

 それに貴族の化かし合いの席には毒を用いられることがないとは限らない。前もってダンダンコーヒーを出していれば「うちには毒殺の意思なんてありませんよ」という友好的な意思表示にもなりうる。


「なるほどのう。精々売り付けられるよう努力しようか」


「そうでございますね。

 ですがその前に、お嬢様には貴族流の食事に慣れていただきとうございます」


 ジェーンはそんな不穏な言葉発すると、厨房からシェリルを追い出した。これからその貴族流の食事とやらを調理するので、食堂で待て、とのことだ。

 いったい貴族流の食事というのはなんなのだろうか。



閲覧ありがとうございます。

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