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11事件勃発


 セバスがデザートの説明をし、ジェーンをはじめとしたメイドが貴族たちに淹れたてのダンダンコーヒーを振る舞う。何人かはあの苦味が苦手だったらしく紅茶を所望した。


 さて、デザートを味わおう、としたときに突然とある貴族のテーブルにあった花瓶が光りだした。


「待つのじゃ!」


 貴族の娘にはあるまじき大声だが、緊急事態ゆえ見逃してもらおう。シェリルの一声で全員が固まる。声とともに軽い足止め魔法を使ったからだ。

 全員が口に入れていないのを確認してから、問題の花瓶に近づいていく。

 唐突なシェリルの行動に全員が戸惑いを隠せない。この状況で動けているのはジェーンとセバスのみだった。


「この花瓶は、実は古代アーティファクトです。とはいっても、そこまで大したものではありません。

 毒物が近づくと、光るというだけのもの…」


「毒だって!?」


 まさに、手に持ったカップの中身を飲もうとしていた貴族が慌ててテーブルの上に置く。

 ガシャン、という音が響いた。一応割れてはいないらしいのでほっとする。毒であることの証明をするためには現物が無事でなくてはならない。


「ダンダンコーヒーには解毒作用があるんじゃなかったのか!?」


 別の貴族が声を荒げる。

 確か、彼は解毒作用という言葉に懐疑的だった人物だ。やはり、詐欺なのではないか、と騒ぎ立てる前にシェリルが言葉を挟む。


「その通り。ダンダンコーヒーには解毒作用が存在します。

 ですが、すべての毒に対応できるような強い効果ではありません、とセバスが申し上げたはずです。

 それと、こちらの方が飲もうとしていたのはダンダンコーヒーではございませんので、毒物反応も強く出たようです」


 カップを花瓶に近づけると、花瓶の光は一際強くなった。その中身は、紅茶の色をしている。

 ダンダンコーヒーの解毒作用は眉唾物、という評価は免れたが、代わりにシェリルに対して疑いがかけられた。最初に口火を切ったのはかの豚人貴族だった。


「小娘! 貴様、そちらの方を殺そうとしたのか!」


 その言葉を皮切りに、あからさまな敵意がシェリルへ向けられた。特に、主人を守ろうと控えていたお付きの人間たちからの目が鋭くなる。


 もちろんシェリルはそんなことはしていない。やる必要がないからだ。

 なので、落ち着き払って場を眺める。

 そして全員に向けてとびきりの美少女スマイルをサービスしてやった。この程度の敵意など前世に比べれば屁でもないのだ。


「犯人は、あなたですね?」


 向けられた敵意もどこ吹く風。シェリルは後ろへ向き直り、狙われた貴族の傍に控えていた執事を睨み付ける。


「ば、ばかな、ど、どど、どうしてわたしが」


 この動揺具合からして猛烈に怪しいのだが、それだけで納得してくれるような御仁ばかりではないだろう。理論的に犯人のとった行動を説明する。

 スーパー美少女なシェリルは声も通るのだ。


「まず、当家の者たちは毒をいれるのは不可能です。

 全員がダンダンコーヒーの配膳をしておりましたから。希望者には紅茶をお出しする、とは言いました。けれど、紅茶はあちらのコーナーに準備してはいたものの、当家の人間は誰も近寄ってはおりません」


「そういえばそうだったわね。

 メイドの数が少なすぎて異様に思ったのだけれど、それぞれの動きがよくて感心してずっと見ていたからわかるわ」


 全く関係無さそうな領地の夫人から同意の声が上がる。思わぬ援軍には美少女スマイルを送り、話を続けようとした。

 しかし、犯人だと指摘された男があがく。


「も、もとから紅茶に毒を仕込んでいたのかもしれないだろう? わたしではない!」


 はぁ、とシェリルはため息を一つ。

 物憂げな美少女もやはり絵になるな、と思いながら諭すような声音で語りかけた。


「よくご覧になってくださいまし。あちらの紅茶を用意してあるテーブルにも花瓶を設置しているのがわかりますでしょう?

 当家で万が一のことがあっては大変、と心を配りましたから。ちなみに花瓶は皆さま方のテーブルだけでなく、あちこちにあります。花が多いとそれだけで心が潤いますしね」


 シェリルがそう言うと貴族たちは辺りを見回す。確かに、あちらこちらに花瓶が設置されていた。記憶の良い者がいれば、この食堂だけでなく廊下や客室までありとあらゆるところ花瓶が置かれていたことを思い出すだろう。

 そのどれもが、テーブルの上に置かれた花瓶と似たようなシンプルなものだ。

 お遊びで作った際に、どうせならば屋敷中の花瓶にそのような効果を持たせられないか? とセバスに提案されたのだ。流石に量が多かったため時間はかかったが、その苦労が今こうして実を結んでいる。

 もっとも、こんなに早く役に立つとは思ってもいなかったが。


「それに、紅茶を所望された他の方々にはまだ紅茶は配られておりません。

 これはこちらのメイドの数が少ない故の不手際ではありますので、大変申し訳なく思いますが…」


「いや、そんなことはどうでもいい。それより、その紅茶には本当に毒が入っているのか?」


 当然の疑問だ。

 毒物反応が出なければただの冤罪である。

 まずはそこから納得させなければならない。



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