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マギー

空が白み始めた頃、カオリの乗ったシーウルフ号が入港した。


表向きはカーク市の中心にある大きな商会、日月商会の貿易船して登録されているの。

もちろん偽装だけど、見破れるものは居ないはず。なぜならカーク市の市長自ら偽装したのだから書類から旗まで全部本物だからよ。


レスター副隊長が港の倉庫群の中から4と書かれている倉庫を指差し、部下に捜索に向かわせた。


「ケン隊長と合流するぞ」

そう言って部下を港に下ろしているのはレスターさんね。マーナもその中に入っているわ。


レスターという人は細身で小柄な男で非力そうに見えるけど、ケンさんはいつも彼を頼りにしていたわね。

見た目通り穏やかな物言いをする男で、レスターの指示で動くウルフ隊は物静かでまるで忍者のようだわ。

この世界に忍者がいるならきっとこんな感じかしら?


カオリは、12と書かれた倉庫の屋根にスーローを見つけた。

「スーロー、そこなのね。」


カオリはレスターに目配せをしてスーローの居る12番倉庫を指さした。

レスターはカオリの意図を理解して部下を1人連れて港に降り立った。

すぐさま、12番倉庫へ向かって部隊を移動し始めた。


「まず状況を把握しなくてダメね。ケンさん、リュウさんとはいつ会えるかしら…」


そう呟いてカオリは甲板上から港の魔力を透視した。

カオリが魔力を感じる方法は、匂いとして感じる方法と気配として感じる方法、それと見る事が出来る。

魔法石が関わっているのであれば、きっと目に見える痕跡があるはず。


倉庫群の合間から所々強い魔力の痕跡が見られる。

戦闘があったに違いない。


「やっぱり…白くまちゃんの気配がない。」

カオリは少し悩んでいた。


海賊が持っていた羅針盤の調査に出たホノカさんとケンさんは行方がわからない、白くまちゃんを連れ出しに行ったリュウさんとカーラもここには居ない。アルは返事は来たけど 、どこに居るのかしら。まったく「わかった」の一言ではあなたが次どういう行動をするつもりか私にわからないわよ。


この世界には通信手段がほとんど無い。

手紙、伝書鳩、狼煙のろし、笛。

いずれも、分散した仲間たちが敵に知られずに情報を伝えるには不向きだ。


新たな通信手段が必要ね。ここには携帯電話なんて無いし、インターネットも無い。うーん。

インターネットかぁ。魔力で作ってみるのも有りね、でも今のところは、スーローに頼るしか無いか…


「アルはわかった、って言ったのだから今回はアルに任せるわ」

カオリはそうつぶやくと指で笛を鳴らした。

ピーッ


カオリが指笛を鳴らすと純白の鳩スーローがすかさずカオリのもとへ飛んできた。


カオリはポシェットから白銀のリングを3つ取り出してスーローに見せた。

スーローはカオリの掌に舞い降りてきた。


「おとと」


カオリは急に重さを増した右掌に左手を添えて支えた。小さなカオリの体にはスーローの身体は結構重く、指輪が掌からこぼれ落ちそうになった。

スーローはクチバシで指輪を咥えて落ちるのを防いでくれた。


「お願い。魔導士邸の鳩達を3羽貴方の配下につけるわ。リュウさん、ケンさん、私のそばに置いて伝令をさせて。あなたはアルの上空でアルの位置を常に把握していてね。そして他の鳩達の伝令を受け付けて全てアルへ届けるの。良いわね。」


これでアルが移動していてもリュウさんケンさんの状況が分かるはず。

まずは、簡易的だけど連絡網をテストね。

そして、私は船で待っていることにするわ。私が動いたらスーローとの連絡が難しくなるもの。


「スーロー、それではお願いね。」


そう言ってカオリはスーローを空へ放った。

純白の鳩は一気に高度を上げ、白銀の魔導士邸へ向かって飛び去った。


カオリは甲板上に簡易的に用意されたカフェテリアに腰をかけ、ゆっくりとお茶を飲み始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

シーウルフ号が港に入る4時間程前のこと。


空はまだ暗く空には白い月の灯りだけが灯っている、しかし、この部屋の中にはわずかな月の灯りも入ってこない、真っ暗な部屋でややねこ背の男が自分の傷の手当てをしていた。

身体中赤くただれた傷を手当てし、濡れた髪をタオルで拭いている。


男はキッチンの隣にある食器棚を開けると、中から4本の短刀を取り出した。

その担当を鞘から抜き、一本ずつ刃の状態を確認している。

一本目は刃の研ぎ方が甘い、男は投げ捨てもう一本をあらため始めた。

二本目の短刀は鋭く研ぎ澄まされている。しかし、光の入ってこないこの部屋で刃の研ぎ具合を鑑定できるのはこの男くらいであろう。


目をぎらつかせた男は、二本の短刀を背中の帯に据え付け、もう一本の短刀を腰に納めた。


今日はついてねぇ。


今日何度目か、もはや口癖となったセリフを呟きながら、マギーは家を出た。


「俺の隠れ家の近くで助かったぜ。」


そう言いながらポーションを一つ飲み干して、空き瓶を家の前に置いた。


あのクソどもにやられた上に、カーラもルーデンドルフも連れ去られるとは、俺も落ちたもんだ。

あいつらの馬の足跡を追跡すればアジトまで行ける筈だ。

AGPのルール通りなら、まずは、リュウ隊長と合流して援軍を待つのが筋だが…


マギーは単独行動にでた。

隠れ家をでて、マギーは家の窓枠の隅に米粒大の石を6つ並べた。

これは連絡石だ、後続に自分が何をするのかを伝えるものだ。

内容はこうだ。


“問題発生

追跡を行う

戻らない“


まぁ、相手が黒曜団っていうのもあるが、今の俺はちょっとばかし冷静じゃ無いぜ。マギーはカーラの顔を思い出していた。


マギーは使い古した革の鎧に着替えてその上から黒いローブを羽織っている。

暗いところでは目立たず、衣擦れの音もほとんど立てない。

革の靴の裏には柔らかく滑した革が貼り付けてあり、マギーの歩き方の効果もあり無音で闇の中へと消えていった。







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