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島の邸宅とスーロー


カオリは夢を見ている。


背中には白銀に輝く月の光を背負って、空を飛んでいる。

夜の澄んだ空気が気持ちいい。


広げた両手の先は、鋭い音を立てて空気を切り裂き、わずかに羽根を震わせている。


鳥のように空を翔ぶカオリは、目の前にある多きな積乱雲を迂回しようと左へ旋回した。


風の音が大きくなる。


積乱雲の中心では稲妻が沢山発生し、地上に降り注いでいる。


その時、月の灯りに影が差した。

ふと見上げると、夜空に星の煌めきと月の光を浴びて輝く、白い大きな鳥が舞っていた。


太くたくましい足は獅子の様で、大きな嘴と鋭い眼光を放つ目、鷲のものだ。


白いグリフォン。


グリフォンは地上を見つめている。視線の先には山を切り崩して何かを採掘している?鉱山があった。


「きゃんっ」


カオリは身体をビクッと跳ね上げ目を醒ました。


「うーん、夢?かしら…グリフォン…」


いけない、もう朝だわ。

そう思って窓の方を見ようとしたけど、身動きが取れない。

誰?ん…


カオリはベッド上でマリアンナに抱きしめられていた。


身じろぎして視界を確保しようとするも、マリアンナさんの柔らかい乳房に顔が余計に埋まって何も見えない。


そっとカオリの頭を撫でる様に手が動き、髪の毛を細い指が滑っていく。


「マリアンナさん…」


声を掛けたけど返事がなかった。見上げるとマリアンナさんの小さな唇がわずかに動いた。なんて言ったのかしら?

口元を良く見ようとして、身体をひねろうとしたところ、マリアンナさんにギュッと強く抱きしめられて動きが封じられた。


「んっ」


カオリの口から、可愛らしい喘ぎ声が漏れる。

マリアンナさんの唇が近づいてきてカオリのおでこと髪の毛に口づけされた。


「マリアンナさん?」


寝ている。


母猫が子猫を抱きかかえて寝るように、マリアンナさんに包まれながら、カオリは気持ちよくまた眠りについた。


気持ちぃ、寝ちゃお。


カオリが次に目を醒ました時は、いつもより2時間も遅い時間だった。


「ベーコン…」


ベーコンの香がりする。

マリアンナさんが料理をしているのね。


「ごめんなさい。マリアンナさん、私がやるわ…」


そう言いながらカオリはベッドから出てキッチンへ向かうと、そこにはマリアンナさんとマーナが居た。マーナがベーコンエッグを作っていて、マリアンナさんはヨーグルトにフルーツを混ぜている所だった。


「カオリ様おはようございます。」


マリアンナさんの声が聞こえるけど、まだ目が霞んでよく見えない。


「マーナ?ベーコンがゴゲてしまうわ?」


マーナが動きを止めてジッと私を見ているので、これではベーコン焦げてしまうと思ったのだけど、マーナは口をポカリと開いたままこちらを見ている。


「もう、マーナったら私が代わるわ、」っとっとと。


マリアンナさんが私の手を強引に引いて、私を寝室へ連れ戻した。

そして、優しく私をベッドに座らせて、服を着せてくれた。


あら、私何も着てなかったのね?

寝ぼけてたわ。


〜〜


マリアンナさん、マーナと一緒に3人でちょっと焦げたベーコンエッグ。それと、マリアンナさんの作ったベーグルとヨーグルトの朝食を食べ始めて、私はやっと目が覚めてきたわ。


アルの海賊船に羅針盤を取り付けている間に、海賊団の皆が建ててくれたこの家は2階建てになってるの。

2階は私のためのフロアになっていて、でも一人では何だか寂しいと思って、いつもマリアンナさんと一緒に寝ているわ。


マリアンナさんもきっと、慣れない土地では一人で寝るのは寂しいと思うのよ。


「それにしても、マーナは料理がちゃんと出来るようになってきたわね。私が作って見せた料理は大体すぐに覚えてしまって、マーナは料理の才能があるのね。」

「そうかな、僕も料理するよ!」


マーナは健気に答える。

いつも私はマーナも一緒に寝よう、と言うのだけど、最近は隣の部屋で一人で寝るの。

でも、食事の時は一緒よ。


海賊討伐から2週間が過ぎて、AGP(アルとギルの海賊団)の本拠地の島の整備が一段落した。

この島に名前は無かったため、ギルが「ブルー・デイジー」と名付けた。


この花のように鮮やかな海の色と、可憐な印象のため。

という理由だったが、女性陣には不人気だった。


ちょっとあれよね。

私も、狙い過ぎかな?と思ったけど、アルもとても気に入って、二人して、”これしかない!”って言って決まったの。


ホント、男の子たちの考えは良くわからないわ。


マーナは大人マーナになると、とても力が強くなるのだけど。アルがそれを見て”お前は海賊一の戦士になれるぞ!”って言ったものだからマーナがその気になっちゃって。

ケンさんとカーラさんに剣技と弓を教わってるの。


そうそう、カーラさんのお兄さんは、マーナのお家の従者だったカイルさんだったの。マーナがもっと小さい時良く抱っこしてくれてたそうよ。

カーラさんったら、マーナを抱きしめてしばらく放さなかったわ。


でも、なんでケンさんに剣技を習っているかといいうと、これも面白いの。ケンさんの服に付いているマーク?これが狼の手形?みたいなの。

ケンさんはウルフ隊の隊長さんなんだって。マーナったらウルフ隊のマークが気に入って、ケンさんの隊に入るんだ、って言って聞かないのよ。今はもう、ケンさんに貰ったウルフ隊の服を着ているわ。


ケン隊長の下で海賊見習いとして下働きをするんだって。

いいなぁ男の子は。私は絶対だめってアルもギルさんも入れてくれないのよ。


「それじゃ、行ってきます!」


マーナは元気に言うと、食器を片付けて、窓から飛び出していった。

海賊だって。楽しそうで良いねマーナ。


カオリの居室のある二階の窓から飛び出したマーナは、軽い身のこなしで宙を舞うと、魔力を全身に漲らせて一瞬で灰色オオカミの獣人、大人マーナへと姿を変え、軽い身のこなしで地面に降り立った。そして、ソードフィッシュ号への停泊してる港へと走り出した。


マリアンナさんは窓から飛び出したマーナに驚いて、窓まで駆け寄って外を覗き込んでいたけど、マーナを見て胸を撫で下ろしていた。

カオリは、窓の外を見なくとも、ここまで届く迸るマーナの魔力で、大人マーナが走り出したことを感じとった。


「マーナ君楽しそうですね。」

「ええ、ここに来てよかったわ。」


海賊は男のロマンなんだ!っていうのなら仕方ないわね。私はここで、ホワイト・グリフォンの続きを作る事にしたわ。

マーナもとっても楽しそうだし、この島にいたほうが、マーナも自由に外を出歩けるからマーナに良いかなって思うの。邸宅に戻ると、政務官が報告書を催促に来るしね。


でも、白くまちゃんが必要だから、リュウさんにお願いして連れてきて貰うことにしたわ。

スーローも白くまちゃんが危ないよって教えてくれたから、連れてくるのは丁度良いと思うしね。


カオリは、食後の紅茶を飲みながらゆっくりと窓の外を見た。

白い砂浜と、青い海が見え、気持ちいい風が部屋の中に吹き込んで来る。


「気持ちぃ」


白い鳩が一羽窓から入ってきて、部屋の窓際に立ててある止まり木に止まった。

なにか嘴に咥えている。


「スーロー、こっちにおいで。」


白い鳩は、カオリの肩に止まって、咥えていた茶色い布製の金貨サイズの小さな巾着を差し出した。

その巾着の中を見て、カオリは隣の部屋にある仕事用のデスクへ移動し、手紙を書き始めた。


巾着の中には、薄暗い袋の中を仄かに黄色く照らす光を放った、石のかけらが入っていた。



~~



アルはAGPのことを団長のギルに任せて、市庁舎に戻っていた。

ホノカは、例の羅針盤の足取りを探らせるために調査にでかけている。今頃、港でケン達と合流している事だろう。


アルが窮屈な市庁舎に戻って来たのは、ブルー・デイジーへの補給物資をこっそりと定期的に送るには、市長がサインしなければいけない書類があったからだ。長期休暇の期間も使い切ってしまったし、仕方ないと自分に言い聞かせながら。


一仕事終えたアルは、カーク市庁舎の市長室で居眠りをしていた。


「うーん、気持ちよく寝た…、ホノカもいないし自由でいいぜぇ。うわッ!!」


ゆったりと座れる革張りの椅子に深く腰掛けて、伸びをしながら目を覚ましたアルは

眼の前に鳩が居るのを見て飛び上がった。


「白い鳩…」


足に白銀のリングが付いているのが見えた。


「スーローじゃねぇか。カオリの手紙か?」


アルは、白銀の魔道士の伝書鳩スーローの足から、手紙をそっと取り出した。

スーローはこっちを見ている。


「あんだよ、今読めってか。わかった、わかった、でもちょっと目が霞んでるんだ、歳かな。」


そう言って目を擦りながらアルは手紙を開いて読み始めた。


「…まじかよぉ。しかし、黒曜団が復活ってホントの話か?これ?」


アルは「了解。」とだけ書いた手紙をスーローの足に付け、外へ飛ばした。

白い鳩は、まるでハヤブサの様な速さで空を駆け抜けて行った。


さて、市長様のお仕事はまたしてもお休みだぜ。

ホノカとケンのやつ、しくじってなけりゃ良いが。


魔道士からの手紙にはこう書いてあった。


──────────────────────

親愛なるアルへ


黒曜団の可能性あり。

被害が出る前に魔法石を押さえてください。

ギルさんはソードフィッシュで待機中です。


白銀の魔道士

──────────────────────


「カオリのやつを魔法石に関わらすのは、ちょっと気が引けるぜ。」


アルは、昔の事を思い出していた。

黒曜団、魔法石、紅の館。いずれもカオリには思い出させたくない話だぜ。


「おっし、ちゃっちゃと片付けるか!」


そう言ってアルは市長室を後にした。


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