表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/38

AGPドラゴン隊

リュウはエルンストを馬に跨がらせて、ルーデンドルフの工房に向けて馬を走らせていた。


エルンストは一人で馬に乗れない。


「エルンストのオッサン、一人で馬乗れないのか!?」

リュウがエルンストに話しかけるがエルンストは必死に馬にしがみつくばかりで返事をしない。


「工房にはうちの若い連中が先に行って準備している。おっさんの必要な物は30分で準備してくれ。」


エルンストは小さく頷いた様だ。


なんだ、結構な勢いで捲し立てた割には大人しいな。

そんなに馬が苦手か?


リュウは先を急いだ。

馬はそれに応えるように、街道を疾走する。


工房の煙突が街道の先に見えてきた。

白い煙は上がっていない。今日は工房は休みだからだ。


リュウの耳に遠くで男の叫び声が聞こえた。それに、剣戟のような金属のぶつかり合う音も続いた。


「おっさん、降りてくれ、様子がおかしい。後からゆっくり歩いてきてくれ。」


リュウはそう言うと、エルンストを馬から降ろし、背負っていた剣の鞘から、スラリとバスタードソードを抜いて抜き身のまま工房へ馬を走らせた。


「見えた。」


工房の入り口が見えるが、入り口に3人見慣れない男が居る。

中から叫び声が聞こえる。


「ウォォォ!」


リュウは雄叫びを上げると、バスタードソードを振りかざして馬を工房の入り口まで走らせ、入り口の男に斬りつけた。


ドスッ!


「一人!」


不意を付かれ背後から一撃を浴びた男が声も立てずに倒れる。

残りの二人は、短刀をリュウに向かって突き出すが、馬上のリュウまでは間合いが広い。


短刀を難なく躱したリュウは、更にもう一振りで右手の男の腕を斬りつけた。


「うが!」

短刀を落としてその場にうずくまる。


リュウの馬上での剣捌きは巧みで、まるで騎士の様に堂々としていてスキもない。


もう一人の男は、素早く工房の中へ逃げ込んだ。


「くそう!先を越されたか?マギー!どこだ!」


馬から流れるように降りると、バスタードソードを両手に構え直して、工房の奥へと駆け込んだ。


「マギー!おれだー!」


そう叫びながら慎重に進んだ。



〜〜


ッツ、貧乏クジ引いちまった。

そうつぶやきながらAGPドラゴン隊のマギーは手に持っている折れたショートソードを投げ捨てた。


「何だこいつ、力がありすぎる…」


目の前には、ウォーハンマーを構えた男がこちらににじり寄る。

その後ろからもう一人のの男が近づいてくる。

一撃で俺の得物をぶち壊しやがった。


俺たちはリュウ隊長と別れてから3人で工房の工具を荷馬車に積み込む作業をしていた。そこをこいつら、5人の男に襲われた。


くそう、入り口付近で一人仲間が倒れている。

もう一人は?見当たらない。

うまく逃げていればいいが…


この廊下で後ろは行き止まり。加工室の扉が道を塞ぐ袋小路だ。

本当なら、ここは俺がなんとしてでも守って見せるぜ!

と格好良く決めるところだろうけど、俺の場合は逃げるが勝ちだぜ!


でも、今逃げ道はない。


「くそう…どうやったら逃げられる?」


頭の中は逃げる事を考えているが、逃げ道がない。

目の前の男は異常に肩の筋肉が盛り上がって、目が血走っている筋骨隆々のどう見てもヤバイ奴だ。


コイツら、どこのどいつか分からんが、とにかく俺はツイてないぜ。


加工室の扉のドアノブをそっと後手で探るが、鍵がかかっている。

武器になりそうなものは…廊下の壁に、フライパンやら鍋がかけてある。これしか無いか。

しかし、どれも、ひん曲がったりひしゃげていて、なんでこんな物飾ってるんだ、ルーデンドルフは変態か?


入り口の方で馬の嘶く声が聞こえ、何か騒ぎが起きた。

その音に釣られて、ウォーハンマーの男は一瞬視線を俺から離した。

チャンスだ!


マギーはすばやい動きで壁から鍋とフライパンを手に取り、ウォーハンマーの男にフライパンで殴りかかった。

マギーの身のこなしはしなやかで素早い。


バグッ!!


鈍い音が響きウォーハンマーの男の頭にヒットした。


「よっしゃ!」


しかし、次の瞬間マギーはウォーハンマーの一振りを浴びて弾き飛ばされた。


何?まるで効いてない…こいつ化物か!?


尻もちを着いたマギーにはもう次の一手はない。


「ウオーーー!!!」


ウォーハンマーの男が雄叫びを上げて大きく振りかぶった。

まずい、超まずい!もう駄目だ!


既に戦意を失ったマギーは鍋で頭を覆うようにして男から目を背けた。

ウォーハンマーが鍋ごとマギーを叩き潰す。


バキン!!ボンッ……

「ぐあっ」


男がうめいた。


マギーはそっと目を開ける。男がのけぞってよろけている。

ん?ボンッって言ったの鍋?

不思議なことにマギーは無傷だ。


しかしウォーハンマーの男が態勢を立て直して再び振りかぶってきた。

「ウオーーー!!」

マギーは何もわからないまま、またしても鍋で頭を隠す。


バキン!

鍋にハンマーが当たる音。

ドンッ!!

爆発する音。


え?爆発?マギーは目を開けたが、目を開けたことを後悔した。


鍋が爆発を起こし真っ赤に燃え盛る火の玉となっているのが見えまさにマギーの目の前で燃え盛る瞬間だったからだ。


「ゥッ」

声を出すひまもなく、ウォーハンマーの男が吹き飛んだ。


しかし、爆風はマギーの方へも走り熱風浴びせた。

とっさに、頭を下げたマギーはギリギリで顔が吹き飛ぶのを免れた。

髪の毛が焦げる匂いが漂う。


「やベぇ!」


マギーはそうつぶやいて手に持っていた、既に柄だけになっている鍋を見て目を丸くしたが、すぐに状況を飲み込み前方へ駆け出した。


懐からダガー取り出し、爆風で倒れかけている黒焦げの男の腹を踏みつけ、後ろへ押し倒す。

そのまま、男を飛び越え、その奥で剣を構えているもう一人の男に飛びかかる。


男の胸元に飛びつき、そのまま押し倒して、首にダガーを突き立てた。

マギーの全身からドッと力が抜ける。

「ふぅ、死ぬかと思った…」


マギーがため息を漏らすと、奥から剣を構えた人影が走り込んできた。


まだ居たのか!


「マギー!!マギーか?」


剣を構えた男は離れたところから叫んできた。

リュウ隊長だ、助かった。


「隊長!リュウ隊長!俺ですマギーです…」


そう答えたが、隊長は遠巻きに慎重に近づいてくる。


「隊長!俺っすよ俺!オレオレ!」


隊長の顔がよく見えるところまで近づいてきたので、マギーは手を振って立ち上がった。


「お前、本当にマギーか!?」


そういうとリュウ隊長の視線は俺の頭の上へ注がれていた。


ん?頭に何か付いてるのかな?そう思って頭に手をやったマギーは思わず叫んだ。


「あーー!髪の毛が!」


頭のてっぺん部分だけ髪の毛がチリチリになり、焦げて真っ黒になっていた。


「まじかよ…」

マギーは恨めしそうに、手元の鍋の取っ手をみつめた。既に鍋の原型は無く、取っ手しかない。


「マギー、カーラは?」

「わかんねぇきっと外だ。」


その時、大きな窯のある部屋に繋がる通路から、顔立ちの綺麗な細みの男が現れた。

弓矢を構えている。


「なんだ隊長か。」

「なんだカーラか。」


「隊長、ここは早くずらかりましょう。外に追加で3人来ていました。まだ来るかも。」


「こいつら何なんだ?」


リュウが唸っていると、加工室の扉が開き、中からエルンスト顔をだした。


「え?なんでここに居るんだオッサン?」

「こっちに来い!」


エルンスト手招きをする。

皆を連れて加工室に入った。


エルンスト加工室の扉に鍵を掛けると話はじめた。


「ここに、裏に通じる搬入路がある。ここから脱出しよう。重要な荷物はもう先に出してある!他で代わりが利く道具は置いていくぜ。」


そう言って、奥の壁にある古びた扉をあけて通路を指さした。


「わかった、まずは船に向かおう。それからケンと合流だ。」


一行は隠し通路に入り、隠し通路側から鍵を掛けた。


暗く細いあまり整備されていない通路を進むと、一つの扉があり、扉を開けるとそこは工房から少し離れたところにある河岸に出た。


「ここは、窯を作る時にレンガの搬入のために作った通路だったんだが、約に立って良かった。海に出るならこのボート使えば早いだろう。」


「エルンストのおっさん、助かったぜ。マギー、カーラと一緒に船で島に戻って、状況を報告してこい。」

「承知しました。リュウ隊長とケン隊長は?」

マギーが答える。


「俺はケンと合流する。折返し向かえに来てくれ。3日後だな。」

「気をつけて。今日の奴らは正体がまだ分からないし、こちらの動き読まれている感じがするわ。」


「わかった、ドラゴン隊は島までエルンストを届けたら、また来てくれ。」


「「はっ」」


二人の着ている服はいずれもAGPの制服であるが、左肩にドラゴンを模したエンブレムがついている。

彼らは皆、リュウ率いるドラゴン隊である。


ボートは河を下り始めた。

河は北から南に向けて下っている。


まわりに人影は無く、静かなところが不気味でマギーは身震いしていた。

皆、声をたてずに、静にボートが流れるのに任せて川下をじっと見続けている。


いったい、あいつらは何なんだ。


マギーが空を見上げると、一羽の鷹がゆっくりと高空を舞っているのが見えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ