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天使の目覚め

少女は今、夢を見ている。


真っ暗な空が覆いかぶさるようにして、天頂から地平線へと広がっていく。

地平線へと視線を移すと、地面との色の差で初めて空が暗いと解る。


地平線は歪んでいたが、やがて真っすぐになった。

最早その線は丘陵の輪郭をなぞった地平線から、水平線へと変わっていた。


空が重く感じるのは、どこまで行っても明確な輪郭を見せてくれる水平線と比べて、空に浮かぶ雲の輪郭が曖昧で、対比してそう感じさせているのだろう。


灰色の雲が高速で後ろへ流れていく。

やがて雲が晴れ頭上には銀色の月が眩しく輝いた。


とても気持ちの良い光を浴びて、私は空を飛んでいる事に気がついた。


耳元で、風が切る甲高い音が絶え間なく響く。

甲高い、不安定な音。


水平線が白く光り、突如目の前が明るくなる。


太陽が現れた。

そうか、これで終わりか、、、


そう思うと、体中の力が抜け水平線へ向けて堕ちていく。

雲を突き破り、真っ黒な海にめがけて堕ちていく。


アンッ!


少女の体がビクリとはねて、目を覚ました。


「う‥うん、また夢か、、、」

透けるような白い肌の身体が真っ白なシーツの上に寝ている。

波打つシーツの皺に絡まるように身体を捩らせて半身を起こした。


小さな顔と細い首には、細い髪の毛がまとわりついている。

胸元に少し汗を浮かべた少女は、夢から醒めていることを確認するかのように、小さな声で呟いた。


「ん。な、なんか変な夢を見たなぁ。でも、なんだっけ?」


変な夢をみて目覚めたが、内容は覚えていない。

目覚めが悪いのは、魔導士となってからはいつものこと、そしてどんな夢かはよく忘れる。


少女はゆったりとした動きでベッドから出ると、シーツと枕カバーをはがし、部屋の隅にある籠にそっと入れる、


「今日は洗濯をしようかしら。」


まだ薄暗い部屋の冷たい床の上を素足で歩くと、ピタピタと足音が響く。

眠たげな顔の少女は、ワンピースのパジャマを脱ぎながら、窓のほうへと歩いていく。


シェードを上げると、窓から白い光が部屋に射し込む。

ほんの一瞬でいままで色のなかった部屋が、白く輝き出す


漆喰を塗った白い壁にわずかに混ざる微細な石英質が朝日を反射する。

反射する光は、部屋の中のあらゆる影に細かな光を振りまいて夜空の星のように、淡い輝点を作り始めた。


窓辺に立つ白い背中は、窓の光を浴びて逆光で黒い影を作っていたが、部屋中を走り回る光の粒子は、少女の背中を夜空の星の様に輝かせ始めた。


ほんのりと白い産毛をまとった肌は、周囲に朝日の光を蓄えて、その輪郭を輝かせる。

透きとおる肌の白さを、ひと際目立たせているのは、黒い髪。

風に揺らぐ黒髪は、白い光受けて白銀の帯をその黒髪に走らせる。


秒速299,792,458メートルの光の粒は、1秒と掛からずに白銀の天使を薄暗い夢の世界から、朝日の満ちた部屋の中に連れ戻した。


窓の外は快晴。


「うーーーん、いい天気。」

背筋を伸ばしてからいっぱいに朝日を浴びて小さく一息つく。


先週12歳になり、一人で寝ることにも慣れてきたわ。


「今日は休日だけど、早起きはやはり気持ちがいいわね。

おまけに天気が良いと、気持ちよさも2倍。得した気分ね。」


いつもは、すこしだけ仕事をしているわ。

そう、こんな歳でも働いているのよ、大変ね?とよく言われるけれどそんなことないの。

私は今の仕事が苦じゃないの、とっても楽しいのよ。


「さぁ、朝ご飯にしましょう。」


そう1人呟いてカオリは部屋のキッチンに向かって歩き始めた。


これから連載開始いたします。

どうぞよろしくお願いいたします。


2020.03.16 文章を少し修正しました。

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