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カモアの地脈

カモアといえば地脈の改良で有名な土地だ。

もともと枯れた土地であったが、ある時、この土地に移り住んだ家族がこも土地の改良した。


彼らの故郷は周囲を山と森に囲まれており緑豊かな土地だったそうだ。

だが何故か移住先を探していた最中に家族が重い病を患い、療養させるためにこの地に定住したという。

彼らはウェールズと言った。


その土地は次第に豊かになっていったが、ある時を境に一気に豊かになった。

その土地ではなかなか実らない、小麦や大麦、サトウキビなどが実るようになった。


周辺の気候は四季によって熱くもなれば寒くもなり、年中温暖な地域ではないのにだ。

この日を境としては異常に芳醇な土地となった。

また、貴重な砂糖の原料となるサトウキビが取れることと、麦から作られる麦酒がこの土地の名産となり、アール国に大きく貢献している。


これは地脈の改善がなされて、土地そのものが大きく改良されたことがその要因とされている。

この功績をたたえられて、ウェールズには爵位が与えられた。


今、目の前で上半身裸になっている青年は、そのウェールズの息子である。

ソファに座ったままの美少女の前に、上半身裸の青年が立っている。


この瞬間をマリアンナさんが見たら、おそらく血の気が引いて倒れてしまうだろう。

そう思いながら、カオリは青年に向けてさらに要求を伝える。しかし確かめなければならないわ。


「後ろを向いてくださる?」

「は、はい」


青年はやや躊躇しつつも、カオリに背中を向けた。

胸にも生えていたが、背中にもやや白身ががった短い毛が生えている。産毛のようなその毛は、青年の髪の毛と同じ灰色をしている。

そして、背中には獣の爪でひっかかれた大きな傷が、右肩から左わきにかけて付いていた。


傷がついてからまだ日がたっていないのか、傷口はふさがっているが、まだ赤くかさぶたが残っている。


「も、もうよろしいでしょうか、魔導士様」

そういったとき、カオリはすでに立ち上がり、青年の背中の傷に手を触れていた。

「うっつ」

青年がビクリと背筋を伸ばす。

まだ痛みがあるようだ。


「この傷は?」

「はい、森へ捜索に出た際に、ヒグマに出くわしまして、その際に受けた傷でございます。」

「嘘ではないわね?」


「…」

青年は答えない。


「出発しましょう。急ぐ必要があるわね。」

「ありがとうございます!私の馬車でご案内いたします。」

「いいえ、私は、自分の馬車で行くわ、あなたも乗ってください、道中詳しく話を聞きたいわ。」

「かしこまりました。」


~~


「お帰りは何時になりますか?カオリ様」

「早くとも明日の昼になるわ、でも泊まらない、夜通しの仕事になるわね。」

「サミュエル様はお連れにならないのですか?」

「うん、まだ休ませておいて。」

「では、こちらをお持ちください。」


そう言ってマリアンナさんは、傘を一振りと、ハンカチに包んだおやつを手渡した。

「ありがとう、傘を使うわ。(それとおやつ!これはきっとビスケットね。)」


カオリはマリアンナさんの感を信頼している。マリアンナさんはとても感が鋭い。

なので、マリアンナさんの言うことにカオリは素直に従う。

miumiuのポシェットにハンカチの包みを押し込む。そして、金の糸で編んだネックレスを一つ首から下げた。

このネックレスは、細い金の糸を編み込んでできたもので、まるで絹の束のように滑らかな手触りのものだ。とても高価な一品で、おそらく20万Gゴールドはくだらないだろう。

一般家庭の年収は約10万Gであるから相当な高級品だ。

しかし、魔力を感じ取れる魔導士であれば、このネックレスの価値はさらにその1000倍はあることがわかるはずだが、今その価値を知るものはカオリだけだ。


カオリの馬車は少し大きく広い、御者は二人、そのうち一人は護衛の役割を担っている。

その後ろに、シング・ウェールズの馬車が従者を乗せて続く。

出発際、カオリのそばに鳩が飛んできた、カオリの伝書鳩だ。

カオリは、鳩の足に手紙をつけて、そっと飛ばした。


「行きましょう。」


カオリの馬車は、振動しない。

これは、特別な魔法器具によって振動を抑えているからだ。

この魔法器具はまだ世に出ていない、カオリのとっておきの発明品である。 ーいったい、カオリの取っておきは幾つあるのか誰にも分からないー


馬車の前方には、馬の魔力を読み取る魔法器具がつけられている、これがカオリの特別製である。

まず、魔法を感知する魔法器具を作ることは普通の人にはできない。

ここで感じ取るのは、馬の後ろ脚の動きである。

この動きは、馬がどのような道を走ったかを知るために使われる。

そして、馬車の車輪には、振動を吸収するためにのバネはついているが、このバネは馬から読み取った魔力の強弱をもとに、魔導力によって反発力が変えられる。

この微妙な調整によって、まるで平地を走っているかのように、馬車は滑らかに走る。


「なんてこった、こんなに滑らかに走る馬車があるなんて信じられない。」

シングはそうつぶやいた。


「シング殿、まず到着したらあなたのお屋敷を拝見できるかしら。」

「はい、承知しました。しかしなぜ?事件の起きた公園を先にご覧になってはいかがでしょうか?」


カオリは答えない。

考え事をしている。

(家族を確認するのが先ね…)


この感触は、カラメル味のビスケットと、シュガーバタークッキーね。

カオリの心は馬車の間遠外を見た時から、ここにはない。


カーク市郊外へ差し掛かるとき、桜並木が8分咲きになっていた。

「明日はきっと満開ね。」


カオリからはほのかに春の花の香りが漂う。

マリアンナさんがカオリのポシェットにポプリを入れてくれたからだ。

今、頬を桜色に染めた美少女と、美少女を呆然と眺める青年の二人が乗る馬車が桜並木をカモアへ向けて疾走している。


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