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捨てる人あれば、拾うワン公あり  作者: 山口五日
ワンワンと聖域
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第12話 ワンワンステータス

ステータス大公開!!

 ジェノスが聖域に来て数日が経過した。


 聖域でのワンワン達の生活は主に農作業や狩り。また、料理などの家事やワンワンと遊んだり。そしてジェノスの勉強会だ。


 朝、食事を済ますとナエとジェノスは農作業。ワンワンとクロは自主勉強として、回収した本の中にあった絵本を読む。まだ完全に文字は読めないものの、絵が主体で簡単な言葉が並んだ絵本であれば、ワンワンは読む事ができた。


 一方クロはというと、未だに絵本に書かれている文字さえも読むのが難しい。


「えっとね、お姫様がね……えっと、王子様に助けられたんだって! それでね、それでね……」


「へー、そうなんだねー」


 このようにワンワンがクロに読み聞かせている状況である。これはこれでワンワンの学びの役に立っていると思われるが、ジェノスはそれを許しはしない。いつも彼女にだけ宿題を与えている。


 そして農作業が終わると、ジェノスの勉強会が始まる。勉強会は毎日昼食まで。昼食以降は家事をしたり、狩りに行っている。家事はナエが主導で行い、狩りにはクロが行く。ジェノスは主に家事の方を手伝っているが、ワンワンが回収した本を確認している。


 勉強会の教材探しという事もあるが、読書が元々好きなようだ。ジェノスの小屋には回収した本が積まれていて、足の踏み場はほとんどなかった。


 ワンワンはというと家事を手伝うか、【廃品回収者】の一覧を確認して回収している。また、手が空いている人に遊んで貰っているのだった。


 太陽が出ている間はそのように過ごし、夕食を済ませて就寝。だが、その前にワンワンから《ミソロジィ・キュア》を掛けて貰っている。

 魔法の効果は回復なのだが、最初にナエやクロが掛けて貰った時に、髪の毛の艶が戻っていたり、汚れていた体が清められている事に気付いた。それから就寝前に《ミソロジィ・キュア》を掛けて貰っているのだ。


 こうしてサッパリしたところで就寝するのだが、今日は違った。ワンワンが寝ると、同じ小屋のナエとクロが起き出し、ジェノスの小屋へと移動する。


「おうっ、来たか」


「何だよ、話したい事があるって?」


「ワンワンくんが寝てからって言われてたけど……ワンワンくんに聞かれちゃいけないの?」


「ああ……まあ、聞かれても問題ないとは思うが…………一応な」


 ジェノスは二人が床に腰を下ろしてから、彼女達の前に文字と数字が書かれた石板を置いた。


「ん? これは、えっと……攻撃力……魔力……?」


「ナエちゃんもだいぶ文字が読めるようになったんだねー」


「感心してねえで、クロも読めるようになれ」


「いや、私も頑張ってるんだよ、ジェノスさん。それに、それが何かは分かるよ。ステータスでしょ?」


「さすがに、クロには分かるか。そうだ。ちなみに俺のステータスだ」



生命力:867

攻撃力:753

守備力:658

魔力:253

俊敏力:761

知力:535

運命力:456



「ステータス……。私はよく知らねえんだけど、ステータスって特殊なマジックアイテムや魔法やスキルがないと見れないんじゃなかったか? 昔のステータスを書いたのか?」


「いや、違う。今、見たんだ」


 そう言って、ジェノスは更に石板に書き加える。


【鑑定】

【強欲】


 二つの単語がステータスの下に書き加えられて、ナエは文字は読めたものの、それが何を意味するのか分からず首を傾げる。


「これは?」


「俺の持つスキル、【鑑定】と【強欲】だ」


「えっ、ジェノスさんスキルを二つ持っているんですか!?」


「ん? スキルを二つ持っているのは凄いのか?」


 ステータスやスキルとは無縁だったナエにとって、クロが何に驚いているのか分からなかった。そんな彼女にジェノスが応える。


「スキルは持っていない事がほとんどだ。お前のようにな。二つ以上スキルを持っている奴は俺が言うのもなんだが……世界中で1,000人くらいしかいないだろうな」


「1,000人…………それって少ないのか?」


 世界を知らない少女にとって1,000人と言われても、いかに希少かという事がいまいち伝わらなかった。そこでジェノスは付け加えて説明する。


「そうだな……ナエがいた街はスラム街があったんだよな? 領主はそこに住んでたのか?」


「いや、領主はいねえよ。そこまででかい街じゃなかったぜ」


 幾つかの街を取り纏めているのが領主だが、領主はそのなかでも大きな街に住んでいる。ナエの話から彼女の街のおおよその人口を推察して、先程の疑問を解消させる為に口を開く。


「お前がいた街を100集めても、二つ以上スキルを持っている奴は一人もいないかもしれねえな」


「はあっ? そんなに少ねえのかよ……」


 ようやくその希少性を理解したナエ。そして、いよいよ本題に入るのだった。


「【鑑定】については、クロは知ってるかもしれないが、人の情報を知る事ができるんだ」


「人の情報?」


「ああ。人によって読み取れる情報に差はあるようだが、ステータスは確実に見る事ができる」


「へー、それなら私のステータスも見たのか?」


「知りたいのか?」


 子供らしく目を輝かせるナエに気付いて、ジェノスが問い掛けると勢いよく頷いてみせた。


「自分のステータスなんて見た事ないからな。見てみてえぜ」


「あ、それなら私も久し振りに、いいかな?」


「分かった……ああ、念の為に言っておくが、俺はステータスの情報以外も見る事ができる。ただ、意識すればステータスだけしか見えないようにできんだ。お前達に関してはステータスしか見てねえからな」


 そう言いながら、石板に二人のステータスを書いていく。


「二つに分けた方がいいか?」


「? 別に分ける必要ねえよ」


「私はナエちゃんにステータスは見られても問題ないよ」


 ステータスというのはあまり他人には教えないものだ。ステータスが低ければ、盗賊などの犯罪者に狙われる可能性がある。また、強くても今のご時世、国から徴兵される恐れもあるのだ。


 よってステータスは基本的には他人には漏らさないようにしている。だが、二人は特に気にしないらしい。ナエはステータスに関して警戒心が薄いからだろうが、クロはナエとジェノスを信頼しているからだろう。


 ナエには自分のステータスを他人から隠すように教えようと思いながら、ジェノスは二人のステータスが書かれた石板を見せる。



ナエ

生命力:124

攻撃力:16

守備力:10

魔力:12

俊敏力:50

知力:297

運命力:256



クロ

生命力:3,654

攻撃力:1,564

守備力:1,021

魔力:2,165

俊敏力:1,850

知力:250

運命力:1,025



「これがステータス……って、私の低くね? クロは高くね?」


「お前の年齢なら普通だ。一概には言えんが、攻撃力、守備力、魔力、俊敏力なんかは10以下が子供にとっては当たり前だ。クロは【勇者】のスキルがあるからで……知力ナエに負けてんな」


「あ、本当だ」


「ううっ……知力は昔から上がりにくいんだよ……」


「伸びにくいものと伸びやすいものがあったりするが……お前はこれまで頭を使わなかったせいじゃねえか? まあ、今は説教している場合じゃねえな。いいか、クロのステータスは世界でトップクラスだ。不意打ちされない限りは戦いで負ける事はほぼねえ。それを踏まえて、こいつを見て欲しい」


 そう言って、事前に用意されていた石板を二人の前に置いた。そこには同じくステータスが書かれているのだが、その数値にナエとクロは目を見開く。



生命力:89,624

攻撃力:684

守備力:65,852

魔力:95,835

俊敏力:701

知力:126

運命力:?



「おいオッサン……このステータスは……」


「もしかして、ワンワンくんの?」


「ああ、そうだ。運命力に関しては、なぜか見る事ができなかったが、このステータスは間違いなくワンワンのものだ」


 その数値に二人は呆けていたが、ナエはすぐにある事に気付いた。


「でもよ、ワンワンはエンシェントドラゴンから力を貰ったんだから、そんな不思議な事じゃねえだろ?」


「だけど受け継いだ力に攻撃力や俊敏力はなかったはずだよ。それにエンシェントドラゴンから受け継いだにしては低過ぎるよ」


 エンシェントドラゴンから回収したのは、生命力、守備力、魔力、そして魔法ミソロジィ・キュア《ミソロジィ・シールド》《シーカー・アイ》だ。俊敏力は回収していないにも関わらず、俊敏力などが一般の人より高い事に、クロは疑問を呈す。


「それについては【廃品回収者】が原因だと思う。回収対象には挙がっていないが、捨てられた……と言うのはおかしいが、俺達のような誰かの手によって死にかけた訳じゃない。そんな奴のステータスが、勝手に回収されてるんじゃねえか?」


「そんな事が……いや、でもそれならこのステータスも納得できるよ。ただ、攻撃力と俊敏力の伸びが悪いね。回収したにしては低いような……」


「数値をそのまま回収って訳じゃねえんだろ。あと、お前の知力と違って本当に伸びが悪いんだろうな。俺が今日お前らを呼んだのは、その事に関してだ」


「どういう事だよ? 【廃品回収者】の力に関しての事だと思ったが、違うのか?」


「違うとは言わないが、本題はワンワンが最強の盾になり得るという事だ。おそらくどんな攻撃にも耐える事ができる」


 良い事じゃないかとナエは思ったが、クロは浮かない顔をしているのに気付いた。ジェノスが何を言いたいのか察し、それはワンワンにとって何か良くない事があるのだと分かった。


「なあ、何かマズい事でもあるのか?」


 クロの反応が気になり、ナエはジェノスを急かした。

 ジェノスは順番に話していこうとしていたが、ナエの焦りを感じ取り、このままでは落ち着いて話を聞く事ができないだろうと判断する。


「いいか? 色々思う事はあるかもしれねえが、落ち着いて聞けよ。ちゃんと説明するからよ……」


 そう前置きをして、ジェノスは結論から先に述べる。


「……もし、この事が他人に知られれば、ワンワンは戦争に利用されるかもしれねえ」

読んでくださり、ありがとうございます。


ワンワン少なくて、すみません。

たぶん次回も少ないです。

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