プロローグ②
「誰だ!?」
と言いながら魔力を高めつつ、振り向いた俺の目に映ったのは、驚き目を見開いている1人の少女だった。
「あっ……ご、ごめんなさい…」
そう少し怯えたようにして謝る少女に、俺は、自分は思っていた以上に気を張っていたらしいことに気づき、少し自嘲気味に笑った。
それを既に顔をあげていたらしい少女は、ぼうっと俺の顔を見つめて、
「……綺麗…。」
と呟いた。
生まれてこの方、罵倒の声や、畏怖の視線しか投げかけられたことのない俺の黒髪黒目を見て、そう発した少女に、俺は少し固まり、改めて少女に視線を向けた。
嵐の時の雲のような灰色の髪に、月のような金色の目を持つ少女は、色白で、ほの暗い林の木陰の中でも、一際輝くような美しさだった。
「……お前の、髪と目の方が、ずっと、ずっと綺麗だ。」
つい口をついて出た自身も驚く一方、俺の言葉を聞いた少女も、俺と同じように驚いたように少し固まり、そして、ふわりと笑った。
「…………ありがとう。」
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その時、その少女の髪と目の色が孕む意味を知らなかった俺は、その微笑みが少し悲しそうだったことに気づかなかった。
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この日、少年と少女が、互いに生まれて初めて、自分の色が綺麗であると言われたという事実が分かるのは、数年後。
だが、齢11にして、伯爵位を持つ王宮魔導師となった少年の脳裏には、少女の笑顔が焼き付いて、離れなかった。
それは、確かに、少年の初恋であった。
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この後、次投稿まで、間が開きそうです。