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鋼鉄の獰猛、再び〜戦海の絆〜  作者: ソロモンの狐
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救世主は悪魔の手先⁉︎

僕が絶対絶命の大ピンチを迎えていた、その20分ほど前、僕の預かり知らないところで運命の歯車は動き出していた。


〜〜雪風から10海里程離れた洋上〜



大海原を単艦進む軽巡洋艦があった。


「む?」


その艦橋で双眼鏡を片手に、進路とは違う方向を睨む長身痩躯の青年がいた、彼はこの艦の艦長ジェダイ大佐だった。


「アトランタ、11時方向になにか感じないかい?」


チューインガムを膨らましていたアトランタと呼ばれた女性は、端的にいうと面倒くさそうに返事をする。


「ん〜、なにも感じないデスネー・・・ソナーもレーダーも反応は無いですヨ〜」


確かに見渡す限りの大海原で潜望鏡はおろか流木一本も見当たらない。


「いや、邪悪なフォースを感じた。アトランタ、針路350、25ノットに増速」


「ハ〜イ、仕方ないデスネー。艦長は言い出したら聞かないですもんネー、針路350速度25ノット」


嫌々渋々アトランタは復唱して針路を変える。

それから10分後、アトランタは水平線上に停止するマストを発見する。

5分後、マストだけだったものが全体像になった。


「艦長〜、アレは平賀さんトコ預かりになってる雪風ネー、発光信号にも応答ないし不気味ネー」


「感じる、邪悪なフォースを感じるよ。接舷用意だ、アトランタ」


「嫌だよ〜、ghostshipみたいで気味悪いよ〜、帰ろうよ〜」


「ん?第一砲塔になにか吊り下げられていないかい?」


双眼鏡を覗くジェダイ艦長が気付いた。


「ヒィッ、お、脅かさないでヨ〜。イヤァァァ、ひと、人、人間がぶら下がってるぅぅ」


「大丈夫だよ、邪悪なフォースは感じない。アレは生きている人間だよ」


よく見ると、確かにそれは生きていてプラプラと動いていた。


「アレ?アレって平賀さん?なんだ、驚かさないでよね〜〜」


「とにかく、接舷だよ。邪悪なフォースは勢いをましている」


真剣な表情のジェダイ大佐、完全にやる気のないアトランタの二人は接舷した雪風に乗り込んで行った。

そして第一砲塔の砲身に吊るされていた平賀所長を解放する。


「いや〜、参った参った」


腕をコキコキ鳴らしながら解す平賀所長。


「何事ですか?海賊にあったわけでも無さそうですし・・・それに船霊の雪風君が見当たりませんが?」


「そいつは、話せば長くなるんだがな・・・」


掻い摘んで説明する平賀所長・・・


「なるほど、雪風君が暗黒面に囚われてしまっているのですね。痛ましい事です、正しい道へ救ってあげなくては」


「相変わらず何言っとるかは分からんが、まぁ手分けして探そう」



そんなこんなで雪風艦内、雪風ちゃんのお部屋。

艦上でそんなやり取りが行われているなんて露知らず、僕が本格的に絶望しかけたその時だった。


「平賀所長、艦長はいたのか?」


長身痩躯の青年が退出しようとしていた平賀所長の背後から現れた。

真の救世主現る!

ここぞとばかりに、猿轡を咬まされた口から呻き声を上げる。


「むぐぅぅ、ふぁふけへ〜〜 (いや〜、たすけて〜〜)」


「むっ⁉︎この凶悪なフォースは一体⁉︎」


平賀所長を押しのけその青年が雪風ちゃんの部屋に入って来た。


助かった〜



そう思ったのは一瞬だった。



今の自分の格好と置かれた状況を思い出す迄の一瞬だった。


(女装+猿轡)×僕+興奮してる雪風ちゃん

=どっちもヘンタイ

一般的に見るとこの様な公式が成り立ちますね。

やっぱり帰る。

地球(おうち)帰る。

リアスは恐ろしいトコでした。


「幼気な婦女子が襲われている、助けねばっ」


その長身痩躯の青年は部屋へ飛び込むと、一気にベッドまで駆け寄り僕に覆い被さっていた雪風ちゃんを軽々と引っ剥がした。


「何者ですかっ、私と艦長のスイートタイムを邪魔するのは」


クルンと振り返りその青年の顔を睨みつける雪風ちゃん。


「私だ、ジェダイだ。雪風君、君も暗黒面(ダークサイド)に堕ちるのか?」


言ってる意味は分からないけど、とりあえず助かった。


「嘆かわしい、私のフォースで救ってあげよう・・・テイッ」


ゴッという音と共に雪風ちゃんの頭部が揺れた。

え?フォースって頭突きの事なの?


「アタタタタ・・・あぁ、ジェダイさんこんにちは」


言動も行動も妙だけど、とにかく雪風ちゃんを正気に戻してくれたみたい。


「さぁ、悪は去った。大丈夫かい“お嬢さん”」


正気に戻った雪風ちゃんを下ろして、僕の猿轡を取ってくれたジェダイさん。

手を差し伸べてくれたのは嬉しかったんだけど、僕はお嬢さんじゃない。それでも、いつまでもこの格好という訳にもいかずジェダイさんの手を取って起き上がる。


「い、いえ僕は・・・」


「む⁉︎君は噂のボクっ娘というタイプなのか?」


ダメだ、“やっぱり”この人もダメだ。

この船にまともな人はいないの?

でも、よくよく考えたらこの中で一番まともじゃない格好してるのって・・・僕?

いつの間にか僕の隣に移動して来ていた雪風ちゃんが囁く。


「艦長〜、御自分の格好考えてからどうぞ〜」


ホントは正気に戻ってないんじゃない?


「女装してる男の子と、ボクっ娘の女の子、どちらが良いですか?」


くっ、なんという選択肢。

これどっち選んでも駄目なんじゃないか?


「え、えーっと。そうなんです、ボクって男の子みたいでしょ?だからっ」


僕の意気地なし・・・


「ふむ、確かに男の子の様にも見えるな。しかし貴女は立派なレディーだ、これから磨けば光るダイヤの原石だよ」


雪風ちゃんにお願いして、後でこの人個人を狙って機関銃でも撃って貰おうかな?


いっそ潜水艦攻撃用の爆雷だっけ?あれに縛り付けて沈めちゃえば証拠も残らないか・・・


「む?また邪悪なフォースを感じる」


チッ、気付かれた。


「お〜い、艦長〜どっこデスカ〜」


なんかまた騒々しいのが近付いて来た。


「お、いたいた。早く帰りまショー」


黒いキャップをかぶり、白のタンクトップにデニムのホットパンツという今までになくラフな格好、しかもチューインガムを噛んで膨らませてる金髪の女性が入って来た。


「やぁアトランタ、また一人邪悪なフォースから解放したよ!」


背景にキラキラエフェクトがかかりそうな良い笑顔でサムズアップするジェダイ艦長、どうやら彼女が乗艦の船霊『アトランタ』のようだ。


「あ〜、そりゃようございました。じゃ、帰るネー」


けんもほろろといった感じで遇らうアトランタさん、なるほど扱いに慣れてらっしゃる。


「雪風〜、こんなトコで止まってちゃダメですよ〜、それに主砲に平賀さん吊るしてたでショー?海賊にでもやられちゃったとかと心配したヨ〜」


え?海賊なんているの?聞いてませんよ?


「こんな可愛い女の子乗せてるんなら、余計に気をつけなきゃネー」


あ、やっぱり女の子扱いなんだ・・・

アトランタさんはジェダイ艦長を押し退けると、とても自然な動きで雪風ちゃんに抱きついた。


「ホンキで心配したんだからね〜、艦長は相変わらず意味不明な供述を繰り返すし」


抱きつかれた雪風ちゃんが両手を振ってワタワタしてる。

身長差もあって、真正面から抱きつかれると雪風ちゃんの顔面は、薄いタンクトップ生地越しにアトランタさんの巨大な質量を持つ胸部の双丘に埋没している。


「むぐぅ、ふがふが」


僕を良いように弄んでいた雪風ちゃんが手も足も出せず、アトランタさんのされるがままになっている。

因果応報とは正にこのことか?

良いぞ、もっとやれ。

結局、このスキンシップは雪風ちゃんが呼吸困難で両腕をグッタリさせるまで続いた。


そして僕はこの後、因果応報の意味を再確認するはめになる。







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